「会社に行きたくない」はなぜ起こる? 職場にあるさまざまな問題仕事に負けない、頭と心の整理術(2/2 ページ)

» 2013年06月05日 11時00分 公開
[竹内義晴,Business Media 誠]
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先が見えない仕事環境の中で

 連日テレビで、各企業の苦しい経営環境が伝えられています。政権が変わるたびに「経済成長だ」という聞こえのいい言葉は耳にするものの、目の前の仕事では、無理に課せられた目標やさまざまなストレス、プレッシャーのほうがたくさんあるのが実際のところかもしれません。先行きが見えにくく、不安が多い時代ですね。

 以前、ある人事関係の雑誌から原稿を依頼されたときのことです。読者に役立つ情報を知らせたいと思い、読者から聞こえてくる「職場で困っていること」について編集者に尋ねたところ、各職場では「メンタルヘルス対策」「社員のモチベーションアップ」「職場のコミュニケーション円滑化」「ワークライフバランス」といったところに高い関心を持っているとのことでした。編集者のメールには「厳しい経営環境の中で、組織も人も疲弊してしまっているのかと感じることがあります」という言葉が添えられていました。

 実際、私も仕事で悩んでいる人の相談を受けるのですが、「以前と比べてやる気が落ちた」「うつで会社を休職した」という声がたくさん聞こえてきます。あなたにも、このような課題で悩む職場の同僚や友人を1人ぐらいはご存じではないでしょうか。

 ひょっとしたら、あなた自身がそのような環境に置かれているかもしれません。私たちにとって、仕事は人生の中で多くの時間を費やす「日常の営み」です。仕事が楽しかったら毎日が充実し、楽しいことでしょう。逆に、職場の中にさまざまな問題があって、仕事へのやる気、やりがいが薄れてきているとしたら毎日の生活自体がつまらないのでしょう。

 編集者が示したこれらの問題は、それぞれが独立した問題のようにも見えます。メンタルヘルスやモチベーションは個人の資質と捉えられていますし、職場のコミュニケーション円滑化やワークライフバランスは、職場や会社の制度上の問題という見方が一般的です。

 けれども私の目には、すべてコミュニケーションに関する問題のように映っています。「職場のコミュニケーション円滑化」はズバリそのものですが、もし、職場のコミュニケーションがもっと円滑で、仕事の中で抱える悩みを気軽に相談できる環境があったとしたら「メンタルヘルス対策」をしなければならないほど問題にはならないのでしょう。

 「社員のモチベーションアップ」もそうです。楽しく、働きやすい職場なら、やる気を無理に「出そう」としなくても、自然とやる気は「出てくる」はず。

 「ワークライフバランス」もそうです。実は、楽しく働いている人は、どんなに忙しくても、私生活を「犠牲にしている」感覚を持っていることはあまり多くありません。仕事が楽しいと感じていると、毎日が充実していると感じられるので私生活を「犠牲にしている」感覚自体が少ないのです。

 ワークライフバランスが叫ばれるのは、毎日の仕事にストレスやプレッシャーが多く、仕事に楽しさを感じられないからです。私生活を犠牲にし、仕事に何かしらを「奪われている」「搾取されている」という感覚があって、心身共に疲れを感じている人が多いから、「仕事と私生活のバランスを保ちましょう」となるのです。

 もちろん、いくら自分の仕事が楽しいからといって、毎日の睡眠が少なく、慢性的に疲れを感じていたり、家族に負担を強いていたりするのであれば問題です。けれども、「仕事が楽しい」と感じられていればあまり問題ではありません。

 仕事と生活の時間のバランスを取ることよりも、いかに「仕事が楽しい」と感じられるかどうか……。つまり、楽しく働ける職場環境や自分と対話をしながら、体と心のバランスが取れることのほうが大切なのではないでしょうか。このように、職場で起こっているメンタルヘルスやモチベーション、ワークライフバランスなどの問題の背景には、コミュニケーションの問題があります。

 (次回、「アンケート結果にみる、仕事のやる気とメンタルヘルス」

竹内義晴(たけうち ・よしはる)

 1971年生まれ。経営者、教師、コンサルタント、コーチ、カウンセラーなど、リーダー層を支えるビジネスコーチ。人材育成コンサルタント。

 自身がプレッシャーの多い職場で精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。人や組織を育てるには、マネジメントの手法だけでは太刀打ちできないことを痛感。優れたリーダーたちが使う卓越したコミュニケーションスキルを学び、実践。チームの変革に成功する。実践の経験から、難しいコミュニケーションスキルを誰もが現場ですぐに使えるようにした独自の手法「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。実践的なコミュニケーション方法を伝えるコミュニケーショントレーナー。

 米国NLP協会認定NLPトレーナー、NPO法人しごとのみらい理事長。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』(こう書房)、『イラッとしたときのあたまとこころの整理術―仕事に負けない自分の作り方』(ベストブック)がある。


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