バルレーン・メイ・シルキー氏をめぐる一件は、すべてのITマネジャーにとって最低の悪夢だ。最近、信頼できる最高財務責任者でもある友人が、シルキー氏を被告とする訴訟の概要をまとめたKirkpatrick & Lockhart Nicholson Graham法律事務所のアラートニューズレターを転送してくれたのだが、その内容に、私は背筋の凍る思いがした。同氏は「コンピュータの不正使用」で有罪宣告されたことを不服として上訴し、つい数週間前にミシガン州控訴裁が審理検討に入っている。同氏をめぐる一件は、こじれてしまった解雇問題が発端だった。
シルキー氏は「テクニカルアナリスト」として、会社の主要システムへの最高レベルの管理者アクセス権を持っていた。さまざまなスーパーユーザー特権を与えられ、ファイルの追加と削除、ユーザーの権限変更などが可能だった。また、VPNで会社のネットワークにアクセスする権利も与えられていた。同氏の解雇が決まったとき、上司と人事部長は、それを伝えるため同氏のデスクまでやってきた。悪い知らせを聞くと同氏は、自分のコンピュータに向かってキーボードをたたき始め、止めても入力をやめようとしない。人事部長と上司は同氏のコンピュータをネットワークから切り離せる社員を探そうとその場を離れたが、戻ってみると状況はさらに悪化していた。同氏がオフィスに立てこもったのだ。
警察を呼んで、ようやくシルキー氏をオフィスから追い出すことができたが、時すでに遅く、同氏は会社に損害を与えていた。さらに悪いことに、同氏はスーパーユーザーのパスワードを変更してほかの社員が同氏によるネットワークアクセスを止められない状態にし、自宅からVPN経由で悪質な行為を続けた。最終的に会社側の見積もりでは、シルキー氏の行為による被害総額は、売り上げ機会の喪失とシステム復旧費用とでおよそ6万ドルという。
私自身も解雇にまつわるトラブルを経験してきたため、このように厄介な状況に対処しなければならないITマネジャーに対し、幾つか伝えたい戦術的なアドバイスがある。解雇を言い渡されたばかりの従業員の怒りを避けることはなかなかできないが、会社のIT資産を被害から守ることはできる。そのためにITマネジャーは、人事部と強力な関係を保ち、また解雇プロセスの一環としてとして必ず、人事部とともに被解雇者のIT権限削除プランを立ててリハーサルに協力してくれる、しかるべきIT作業要員を確保し連絡しておくことだ。プランを立てるに当たっては、人事部とIT部門は最悪のシナリオを想定し、それを回避するために必要な具体的ステップを描く必要がある。
シルキー氏の場合、主要なシステムにアクセス可能なスーパーユーザーの特権を持つIT部員だった。この状況は、重大な業務遂行上の課題を示唆している。スーパーユーザーの権限を持ち、かつそうした権限を解除できる信頼に足るITスタッフを、複数抱えておかなければならないという点だ。さらに重要なこととして、こうしたスタッフは、権限解除に必要なステップを数分のうちに――可能ならもっと速く――こなせる必要がある。
かつて私にも、シルキー氏のような特権を持った従業員を解雇しなければならないことがあった。神経がすり減ったが、人事との協力と信頼できるITスタッフとのリハーサルが功を奏した。私は解雇する従業員をオフィスに呼ぶ前に、信頼できるITスタッフにすべての主要システムにスーパーユーザーとしてログインしておくよう依頼した。そのスタッフは、解雇される従業員が私のオフィスに向かうのを確認するや否や、あらかじめ組んでおいたスクリプトを走らせてその従業員のログインシェルを削除し、各システムのパスワードを変更し始めた。さらに大事を取って、私は信頼できるスタッフに、パッチパネルの操作でその従業員の部屋をネットワークから外すよう依頼した。結局、解雇された従業員は電話の受話器をデスクにたたきつけて壊したが、それ以上のダメージはなかった。電話など、6万ドルに比べたら安いものだ。
(By Chad Dickerson, InfoWorld US)
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