勝ち残る企業のWebプロモーション

コカ・コーラがTwitterから学んだ「踏み出すことの大切さ」勝ち残る企業のWebプロモーション

企業のTwitter活用が加速しているが、どうすればプロモーションに生かせるかについて各企業は手探り状態だ。日本コカ・コーラもそうした企業の1社だったが、「とにかく使ってみる」ことで製品のプロモーション活動における新たな着想を得ることができた。

» 2009年11月11日 08時00分 公開
[藤村能光,ITmedia]

 企業のTwitter活用が加速している。新製品やキャンペーンなどリアルタイム性のある情報を消費者にツイート(つぶやき)したり、顧客の不満に返信をしたりするといった具合だ。だが、企業のTwitter活用は一筋縄ではいかず、運用において試行錯誤している担当者も少なくない。

 そんな中、日本コカ・コーラは8月下旬にTwitterを駆使したWebプロモーションに踏み切った。狙いは、同社が横展開していたオンラインビンゴゲームの状況をTwitterで実況し、同ゲームの参加者を増やすこと。公式アカウントを運用していく上で、リアルタイム性の高いTwitterをうまく使えば、自動販売機に足を運んで商品を買ってもらえるという新たなプロモーションの可能性も見いだした。この着想は「Twitterをまずは使ってみる」という姿勢から生まれたものだった。

Twitterをうまく使えば、自動販売機に足を運んでもらえる

CocaColaParkのTwitterアカウントの画面 CocaColaParkのTwitterアカウントの画面。コカ・コーラ パークビンゴ大会の第4回目は、参加者総数でギネス記録を目指すという目標を掲げていた。Twitterの活用により「ギネス記録をTwitterユーザーと一緒に盛り上げたい」とする狙いがあった

 同社は過去3回にわたり、Webプロモーションの一環で「コカ・コーラ パークビンゴ大会」と呼ぶオンラインビンゴゲームを展開していた。8月に実施された4回目の大会と同時期に、「CocaColaPark」というTwitterの公式アカウントを開設。オンラインビンゴの出玉やギネス記録達成に関連するツイートをまとめる「ハッシュタグ」の情報を発信した。

 Twitterによるプロモーションの期間は、ビンゴゲームの参加者を募る8月24〜28日の5日間に合わせ、8月23日からの1週間に設定。メールマガジンやブログ記事を通じてその取り組みを紹介し、期間内に約1200人のフォロワー数を獲得した。

 日本コカ・コーラ、マーケティング オペレーション インターラクティブ マーケティングの足立浩俊マネジャーは「世界中に利用者がいるTwitterは、(国内ユーザーが主な)2ちゃんねるモバゲータウン以上に勢いが出てくる可能性もある」と話し、Twitter活用に期待を込める。

 同社はプロモーション活動全般において「コカ・コーラを飲むという“体験”を消費者に共有してもらうこと」を第一の目的として掲げている。Twitterを活用した情報発信は、利用者同士がコカ・コーラを飲んだ感想をリアルタイムに共有できるという点で親和性が高い。今回実際にTwitterを運用することで、「商品だけでなく気温や地域の情報も含んだツイートをして、自動販売機に向かってもらう」(同)といった新たなプロモーションの糸口が見えてきた。

Twitterは難しい、やってみないと分からない

 一方でTwitterの活用は、ビンゴゲームのWebプロモーションにどのような影響を及ぼしたのか。足立氏は「もたらした成果は未知数だ」と振り返る。今回は期間を区切ってTwitterをプロモーションに使うという「試験導入」(同)の位置付けであり、「Twitter上で利用者からどのような反応が得られるかを見極める」ことが狙いだったからだ。

日本コカ・コーラの足立浩俊氏 日本コカ・コーラの足立浩俊氏。期間内にコカ・コーラ パークビンゴ大会に参加した人数は41万1407人に上った。これはオンラインビンゴゲームでは過去最多の人数であり、8月にはギネス世界記録にも認定された。足立氏の右にある盾はギネス記録認定時にもらったものだという

 実際にTwitterを使ってみることで、課題も見えてきた。足立氏は、特にアカウントをフォローしてくれた利用者にどのような内容のツイートを届け、Twitter上でのやり取りを活発させるかという点に苦悩したという。約1週間の運営から、Twitterをプロモーションで生かすには、利用者との長期間のやり取りが必須ということも痛感した。足立氏は「ロイヤリティの高いフォロワーを長期にわたって集めていかないと、あらゆる利用者を巻き込んだWebプロモーションの流れが作りにくい」と振り返る。

 現時点では「Twitterにおけるビジネスチャンスはまだ見いだせていない」(足立氏)。今後同社がTwitterをWebプロモーションに取り入れていくかも未定としている。だが、「Twitterの良さを生かすプロモーション施策を考える」(同)姿勢を崩さない構えだ。

 足立氏は「ブログは記事を書いて写真を掲載するという一種の完成した形があるが、Twitterを活用した情報配信の形は未完成だ」と評する。そんな中、日本コカ・コーラは「まずTwitterを始めてみる」ことで、プロモーション施策の新たなヒントをつかんだ。

 Twitterを活用した企業のプロモーションにおいて成功の方程式はまだ存在しない。だが同社の取り組みは企業がTwitterを使ったプロモーションを展開する場合に、「Twitterを使ってみてその特性を実際に体感する」ことが大切だと教えてくれる。

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