戸村氏は会社としての危機管理で重要な原則を3つ挙げる。
今回の震災に際した救難活動では、未曾有の津波で多くの自治体機能が壊滅してしまったことが混乱に拍車をかけたが、まさに不眠不休の努力で仮庁舎を開設、安否確認を進めるとともに住民へのサービスも再開している。もう4月の話だか、被害がひどかった岩手県の陸前高田市と大槌町、宮城県の南三陸町と女川町の4市町で、住民基本台帳と戸籍のバックアップデータがすべて確認されたことが一部の朝刊で報じられた。総務省によれば、各市町がサーバなどの保守管理を委託している業者に確認したところ、住民基本台帳をバックアップしていたという。また、戸籍法によって管轄する法務局に毎年、戸籍データを送信していたため、こちらも復旧作業を進めているという。
今回の例を待たずとも、企業にとってデータは社員に次いで最も重要な資産のひとつだ。中堅・中小の企業では、情報システムの専門家を置くことができないため、保守管理を委託する業者の役割が大きい。業務の根幹を支えるデータのバックアップに関して、企業の経営陣はいま一度確認しておく必要があるだろう。
今や小さな町工場であってもCADシステムで製品や部品の情報を管理しているところは多い。データはサーバにキャビネットのような感覚で放り込まれているかもしれないし、そのままパソコンに置かれているかもしれない。はたからは不用意に思えるが、つい忙しさにかまけて無防備なままにしてしまう。
言うまでもないが、パソコンは買い替えられるが、データはかけがえのないもの。大企業であれば、デスクトップの仮想化やクラウドの活用、あいるはDRサイトの構築を検討するだろうが、中小規模の会社ではハードルが高い。まずは、すぐにもバックアップを実行しておくべきだ。最近では、ソフトウェアで簡単な設定したハードディスクドライブ(HDD)をパソコンのUSB端子に挿すだけでバックアップをしてくれる製品も販売されている。大容量のHDDであれば1台で複数のパソコンのデータをバックアップできるのでとても便利だ。
バックアップの対象にはシステムもある。パソコンを買い替えてもアプリケーションをインストールしなければならず、これが結構手間取ってしまうが、Windowsやアプリケーションがインストールされたシステムのイメージを定期的にバックアップしておけば、新たに用意したパソコン上に使いなれた環境をすぐに復元できる。
ファイルバックアップ、イメージバックアップどちらも無償のソフトウェアがあるほか、サポート付きで心強い有償版も数千円からある。普段からできる備えとして、ぜひお勧めしたい。
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