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» 2013年05月14日 08時00分 UPDATE

情シスの横顔:経営統合プロジェクトがきっかけでIT部門を志願 JFEスチール・田村さん

JFEスチールのIT改革推進部の中で最年少社員である田村さんは、業務部門に対するコミュニケーション力を強みに、より優れたシステム改革を推し進めていく。

[伏見学,ITmedia]

 かつては“産業の米”と呼ばれるなど、数世紀にわたって世界の経済発展を支えてきた鉄鋼業界。その中にあってJFEスチールは日本を代表する鉄鋼メーカーの1社だ。

 同社は2003年4月、当時国内粗鋼生産量2位の日本鋼管(NKK)と3位の川崎製鉄の統合によって誕生した。現在は、グループ連結で4万2000人を超える社員が働き、国内外に多数の拠点を抱えるという、押しも押されもせぬ巨大企業である。

 田村祐子さんは、同社の情報システム全体を管轄するIT改革推進部 主任部員として、システムの企画や開発、運用などに日夜奮闘している。このIT部門の中では最年少であり、総合職では唯一の女性社員なのだという。

「J-Smile」開発プロジェクトが転機に

 田村さんは1999年に新卒社員としてNKKに入社。福山製鉄所(現・西日本製鉄所 福山地区)の鉄鋼業務部 福山物流管理室という、物流関連の業務部門に配属となった。同社の場合、新入社員はまず製鉄所に配属されるケースが多く、そこで物流管理や人事、経理などの業務を経験する。中にはシステム技術者として入社直後からIT部門に配属される社員もいるそうだが、基本的には業務部門からIT部門に異動するパターンが大多数なのだという。

JFEスチール IT改革推進部 主任部員の田村祐子さん JFEスチール IT改革推進部 主任部員の田村祐子さん

 3年間製鉄所で物流業務に携わった後、田村さんは2002年に薄板営業部に異動した。そこで現在のキャリアを築くこととなった転機が訪れる。JFEスチールの統合システム基盤「J-Smile(JFE Strategic Modernization & Innovation Leading System)」の開発プロジェクトに営業の立場として参画したのである。

 田村さんが薄板営業部に移ってちょうど1年後、上述したようにNKKと川崎製鉄が合併。当初は両社それぞれの情報システムが存在していた。通常の経営統合においては、どちらか1社のシステムに片寄せすることが多いが、JFEスチールでは既存システムを捨てて、顧客満足度の向上、社内業務改革、生産物流効率化などの観点からビジネスモデルを見直し、ゼロから新たなシステム基盤を立ち上げることになったのだ。その基盤がJ-Smileである。

 J-Smile開発プロジェクトの中で、田村さんが担当したのは、商社がJFEスチールに鉄鋼を注文する際に利用する受発注システムに関してである。

 「システム開発そのものはIT部門が主体で行いますが、新しい受発注システムを作る上での営業としての業務要件を取りまとめるのは私の役割でした。また、鉄鋼にもいろいろな品種があり、製品仕様、板の厚み、規格など細かく定められています。新システムになったときに、製品単価などが間違っていると顧客に多大な迷惑をかけてしまうため、それに対する現行保証や確認作業も担当しました」(田村さん)

 双方の企業の業務プロセスを把握した上で、新しい業務プロセスやシステムをゼロから生み出す。営業担当としてもやりがいを感じたプロジェクトだったが、基盤となるシステムにより興味を持った田村さんは、自ら異動を希望してIT部門に移ることになったのである。

日常の業務部門とのやり取りをおろそかにしない

 2007年にIT改革推進部に異動した田村さんがすぐに担当したシステムが、販売/生産計画システム「J-Flessa」である。これまで所属していた薄板営業部で使っていた販売計画システムのリプレイスだったため、システムに対する馴染みはあったものの、要件をまとめる際にほかの営業部門の業務プロセスに対する理解が薄かった点などに苦労したという。また、これまで同社で一般的だったスクラッチ開発ではなく、パッケージ製品を活用してJ-Flessaを作ることになっていたため、ベンダーや情報システム子会社のかじ取りも重要な役割だった。

 なお、田村さんが現在注力しているのも、引き続きJ-FlessaやJ-Smileの維持管理業務が主だという。特に販売/生産計画システムは、環境に合わせてシステムを柔軟に変えていかないとならないため、継続的なメンテナンスが不可欠なのである。

 「業務部門は、業務の効率化には関心を持ってくれますが、プロセスが変わったり、操作のやり方が変わったりすることには懸念を示します。それに対して効果的な提案したり、部署ごとの要望を標準化したりしています」(田村さん)

 こうした業務部門とのコミュニケーションは、IT担当者にとって課題の1つだ。営業出身の田村さんはこの点について、「自分自身の強みとして、積極的に取り組んでいます」と力を込める。例えば、業務部門自らが認識している課題に対しては、一緒に解決するようにサポートするとともに、業務部門が気付いていない潜在的な課題を見つけたり、業務効率化にとどまらない仕掛けを提案したりしていくことも心掛けているそうだ。

 そうした中で大切にしているのが、日常でのちょっとしたやり取りである。システムの問い合わせや相談、日々のサポートには積極的に対応するようにしているほか、社内の飲み会などにも参加して業務部門との交流を図っているのだという。「IT部門の中という閉ざされた場所だけにいると、社内のビジネスの流れに取り残されることもあります。ですので、業務時間外でもできるだけ他部門とコミュニケーションを取るようにしています」と田村さんは話す。

 このようなコミュニケーションの中で、田村さん自身が担当したプロジェクトや業務システムなどに対して、業務部門の人たちが喜んで使っているのを耳にしたときは嬉しく思い、さらなるモチベーションの向上につながるのだという。

経営に貢献するプロジェクトのリーダーに

 「決してスタンダードなキャリアではない」と控え目に語る田村さんだが、今後のキャリアについてはどのような考えを持っているのだろうか。田村さんは、「IT部門では一番若手なので、幸いなことにまだ勉強させてもらえる環境にあります。もっと上司や先輩からプロジェクトの管理手法や進行スキルなどを学びたいし、知識不足と痛感しているテクノロジーについてはIT基盤担当の方々から教えてもらいたいです」と意気込む。

 そうして身に付けたスキルを武器に、最終的には、J-Smileと同じ規模のITプロジェクトを自分自身がプロジェクトリーダーとなり、推進していきたいのだという。それが結果的に経営貢献につながる取り組みになればと考えている。

 田村さんの挑戦はまだ始まったばかりだ。

「業界や業種が異なっていてもIT部門には共通点が多いはずです。そうした部分をもっと共有して、企業の中でIT部門がより活躍できるようになればいいなと思います」 「業界や業種が異なっていてもIT部門には共通点が多いはずです。そうした部分をもっと共有して、企業の中でIT部門がより活躍できるようになればいいなと思います」

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