スピードを追求するF1レーシングチーム、その頂点に立つのが、4年連続でワールドチャンピオンに輝く英国のRed Bull Racingだ。しかし、同社に課せられたのは、単にクルマの速さだけではない。いかに迅速にF1マシンをデザインし、シーズンを通じて改良を繰り返して行けるかだ。
「華やかなF1だが、レース場に行けるのは社員の1割に過ぎない」と笑うのは、Red Bull RacingでCIOを務めるマット・カデュー氏だ。
F1はその年のレギュレーションに合わせてクルマを開発すれば終わりではない。不具合もあれば、レース場ごとに異なるパーツを組み合わせ、最高のパフォーマンスを叩き出せるように改良を繰り返す。
「エンジニアリングの変更は年間3万件に上る。スピードが命だ」とカデュー氏。
週ごとに19の国を転戦するF1では、常にイノベーションが求められ、改良されたパーツをパドックまで確実に届ける必要もある。ビジネスプロセスも柔軟かつリーンでなければならない。
もちろん、Red Bull RacingではITのパワーをフル活用している。マシンのデザインはすべてコンピュータの仮想世界で行い、パーツも3次元CADから直接作られる。ほかのメーカーと同様、PLMやERPも導入するなど、アプリケーションの数は200を超えるという。
中でも特筆すべきは、テストもかなりの部分をコンピュータによるシミュレーションで済ませたり、マシンから発生する膨大なデータを分析し、マシンの改良やセッティングからレースの戦い方に至るまで、その洞察を役立てていることだ。
右の写真は、英国にあるRed Bullのデータアナリティクスセンター。金曜日と土曜日の予選、そして日曜日の本戦と、レース中もリアルタイムでフル稼働し、チームのマシンデータはもちろん、ライバルのデータも加えて分析と格闘する。
「ITのパワーがなければ、もはやレースには勝てない」とカデュー氏は話す。
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