支援サービスは、基盤から担う戦略部分から、高速ストレージといった技術的サービスまで大きく6つに分類してメニューを用意する。
支援サービス | 主な内容 |
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(1)エンタープライズワークショップ | クラウド検討中の企業に対して集中的にナレッジトランスファー(知識や技術を提供)を実施し、さらに上位レベルでの計画立案を支援するサービス |
(2)クラウドロードマップアセスメント | 既存の資産やライセンスなどを洗い出し、クラウド移行の優先順位付けを支援するサービス |
(3)クラウドセキュリティワークショップ | 顧客にAWSのセキュリティ機能を理解してもらい、顧客の要求事項とAWSでできることのマッピングや具体的なフォローアップ(面倒を見る)項目の洗い出しを支援するサービス |
(4)アプリケーションマイグレーションワークショップ | AWS上にシステムを移行するにおいて、伸縮性や拡張性、耐障害性、自動化などアーキテクチャや設計指針に関するレビューや知識を提供する |
(5)ビッグデータワークショップ | ビッグデータ解析の設計方法についての知識を提供し、複数のデータソースをもとにプロトタイプ(原型)を作成できるようにする |
(6)ストレージワークショップ | AWS上で可用性やビジネス要件、マイグレーションの複雑度などを考慮したうえでストレージ移行計画を立てられるよう支援するサービス |
クラウド化の大きな目的の1つにあるコスト削減。「それが本当に可能か」の懸念も導入を妨げる要因になる。(2)のクラウドロードマップアセスメントにより、自社の現環境からどう変えるか。それに適した移行構成を作成し、ROI(投資利益率)を算出。現環境からAWS環境への移行で何年でトータルコストが何割下がるといった具体的な評価軸で提案してくれるため、上層部へ理解や予算化しやすくなることもメリットに挙がる。
携帯キャリア最大手のNTTドコモは、社内でのAWS利用が増えるにともない、ガバナンスの確保やリテラシーの向上、開発や運用の効率化が急務となり、社内ツールの開発と展開を検討していた。このツール開発におけるQ&A対応や資料作成、検証支援においてAWSプロフェッショナルサービスを活用し、短期間で利用ガイドラインやセキュリティガバナンスのための基礎ツールを開発できたという。このAWS活用のノウハウをもとに「ドコモ・クラウドパッケージ」として商品化も果たしている。AWSの活用で新ビジネスも迅速に生みだした好例だ。
(4)のアプリケーションマイグレーションのために実施するプロジェクト支援も需要が多い。今後の拡張性をふまえた設計、運用方式の設計、移行方式の設計や移行手順、性能検証の支援や結果などを週1回ほどの定期的なレビューとガイダンスを行い、プロジェクトをふかんしたレビューを中心とする技術支援メニューがある。ガラス業大手 AGC旭硝子も、AWS基盤で構築する次期基幹システムにおいて、各システムの品質担保、セキュリティ確保、運用コスト削減、ガバナンス強化の実現のため、グループ全体でのAWS基盤活用を念頭に置いた基本方針「旭硝子AWS標準」の作成を急いでいる。これに沿った共通基盤の実装と基幹システム本番環境の構築アドバイザリーとして、2014年10月よりAWSプロフェッショナルサービスを活用し、大きな効果を生んでいるという。
「何をいつ、どれをどういったプロセスで行うか。そこは、AWSの知識と深い理解がなければなかなかフル活用しにくい。AWSプロフェッショナルサービスでは、AWSの技術領域に高度に特化した提案、ベストプラクティスのシェアなどとともに、パートナー各社と連携して双方の強みを生かしながら、顧客のAWS導入の加速、プロジェクトの成功を支援するのが特徴。課金は、よくあるコンサルティングに対し、AWSの各サービスと同じくタイムアンドマテリアル型で毎月稼働時間分を請求する方法。コンサルであっても時間課金型とするクラウドっぽい手段としたことも、より迅速とする顧客目線の意識の表れ。顧客の満足度が高い理由の1つと思う」(アマゾンデータサービスジャパンの片山氏)
クラウド化が自社にどんなメリットをもたらすか、どんなサービスをどう選べばよいのか。現環境と比べてどこにメリットを見いだすか。クラウドサービスは特に進化が著しい分野のため、今日(システム選定時)はできなくても、数カ月後、早ければ数日後に新機能としてリリースされることもある。情シス部門をはじめとする企業のITシステム選定担当者個人ではおろか、パートナーのシステムインテグレータであっても「その最適解」を導くのは難しい。
この意味で、選定が難しいクラウド化においてコンサルサービスを適切に活用することは、「最適解を得る近道になる。失敗のリスクを回避するというより、自社のビジネスを、一緒により成長させていくため」が同社の考えだ。AWSプロフェッショナルサービスは主に大企業やシステムインテグレータ向けと思われているが、スタートアップ企業などクラウドサービスとともにスピードや革新性を求める企業など、企業規模の大小は問わないという。
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