2015年8月、JALは那覇空港で心拍数を取得できる着衣型デバイス「hitoe」を使った実証実験を実施した。屋外で働く作業員の熱中症対策のため、hitoeで取得した心拍数や心拍間隔のデータをクラウドで収集し、分析するシステムを検証した。
トランスミッター(送信機)に内蔵した3軸加速度計により、着用者の姿勢を推定できるため、熱ストレスや疲労度を可視化し、熱中症との関連を調べることができる。実験の結果、作業ごとの身体的ストレスや気候が体に与える影響、心拍数と熱中症の関連性についての知見を得られたという。
この実験は、NTTコミュニケーションズからhitoeの紹介を受け、ディスカッションを重ねる中で生まれたアイデアだという。実証実験を通じて、熱中症対策のソリューションが発展し、社会貢献につながるという目標もあったそうだ。hitoeの例は、まさに人間自身をセンサーにしたIoT活用といえるが、このほかにも、身体情報を活用した実験を行っている。
それが日立と共同で行った「名札型ウェアラブル端末」を使った実証実験だ。ウェアラブル端末とBeaconで従業員の労働状況を可視化し、その特徴パターンから集団の活性度を定量的に表す「組織活性度」を算出。これと従業員の属性、担当業務の特性などのデータを組み合わせ、人工知能を用いて分析を行うというものだ。
ワークスタイル変革施策の実施やストレスチェックの義務化に合わせ、組織と業務、そして抑うつ度の関係を明らかにしようとした実験で、社員の位置情報がつかめるため、部署内の誰がコミュニケーションのハブになっているか、誰がどのように動きや働き方を変えれば、組織の生産性か向上するかといったことも分析できたという。
「日立の人工知能は、従来人力で行っていた仮説設定や検証を自動化できるのが特徴でした。残業が減ると生産性が上がるといったこと以外にも、若手がスキルを発揮できている部署は組織活性度が高い、ベテラン社員がおとなしい日は組織活性度が高くなる――など意外な傾向が分かりました」(小磯さん)
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