文化庁の京都移転実験、東西つなぐ“リアルな”テレビ会議石破大臣も感心

東京から京都へ移転することが決定している文化庁が、テレワークの実証実験を行っている。臨場感の高さがウリのテレビ会議システムで、東京と京都のオフィスを“つなげて”いるのだ。省庁の移転は地方創生につながる可能性もあり、注目が集まる。

» 2016年07月15日 07時00分 公開
[池田憲弘ITmedia]

 文化財の保護や日本文化の振興、国際文化交流といった施策を担う文化庁。この文化庁が数年後に京都府に移転することが決まった。国宝の約5割が関西に集中していることもあり、文化財に近い場所に拠点を置くメリットがあるとの考えだ。

 国会や他省庁がある東京から離れても、各業務に支障がないのか――今、文化庁では7月11日から2週間限定で“お試し”移転を行っている。京都市内にある京都芸術センターに臨時オフィスを作り、都内にある文化庁の執務室と最新のテレビ会議システムでつなぐ実証実験を行っているのだ。期間中、京都の臨時オフィスに職員が交代で常駐するという。

 7月13日、文化庁は本実証実験を報道関係者向けに公開。京都視察中の馳浩 文部科学大臣と石破茂 地方創生担当大臣が会議を行った。文化庁の執務室内に100インチ(横2.2メートル×縦1.25メートル)のディスプレイを2枚用意し、京都にある臨時オフィスの映像を投影した。

photo テレビ会議システムで会議をする馳浩 文部科学大臣と石破茂 地方創生担当大臣

 約20分の会議後、取材に応じた石破大臣は「リアルタイムかつ画像が鮮明で、対面にかなり近い状態で会議ができた。文化庁の移転について、技術的な問題はクリアされつつある」と会議システムについて評価。文化庁移転の助けになることを期待した。

 使用したシステムはNECネッツエスアイの「SmoothSpace」。90度の角度をつけた2面に、プロジェクションマッピングの技術で空間を投影する。奥行きを感じるとともに、相手が等身大の大きさで投影されるため、臨場感が味わえるのが特徴だ。今回はディスプレイを用意したが、「壁一面に投影するケースもある」(NECネッツエスアイ)とのこと。

photo ディスプレイのそばにある2台のカメラで撮影した映像を、写真右端にあるマシンで合成する。サーバや2画面構成用のソフトウェアが入っているという
photo 席に着いた人間からの視点では、相手の空間が等身大で表示され、奥行きも感じられるので臨場感が高まるという

 「省庁は国民のためのサービス機関。大切なのは、移転によってサービスの質が落ちないこと。移転によってサービスの質が高まると分かれば、他の省庁の移転も進むのではないか」と石破大臣。省庁の地方移転を契機に、地方創生につなげたい狙いがあるようだ。今後、臨時国会が開かれる秋にも同様の実証実験を行う予定という。

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