「妥当な家賃」を自動で算出 レオパレス21がディープラーニングを導入した理由(3/3 ページ)

» 2018年11月19日 08時00分 公開
[柴佑佳ITmedia]
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賃料予測の精度向上により、業務負荷が軽減

 システムを導入して半年以上がたった今でも、精度向上はもちろん、価格変動や需要予測を加味した賃料査定を目指し、ディープラーニングを継続しているという。

 学習の継続を含め、賃料査定システムの開発にかかった費用は、外部のデータを購入する場合と「あまり変わらない」とのことだが、社員の業務効率化という面で、確実に成果は上がっていると大塚さんは話す。

 「賃料を設定するために費やしていた時間は短くなりましたし、本部と現場の価格見直し作業も大幅に削減されました。具体的な削減時間は計算できていませんが、事務処理の負担は大きく減っているのは間違いありません」(大塚さん)

 賃料の査定は一部屋ごとに行われ、その価格は具体的な1つの数字ではなく、ある程度の範囲で出力される。そのため、最終的な価格は現場のスタッフが決定する形だ。とはいえ、「日本全国である程度統一された基準で、価格を算出できるようになるだけでも大きな価値はある」と同社は考えているそうだ。

 現在のところ、同システムは本部の担当セクションのスタッフのみが使っているとのことだが、将来的に現場のスタッフがこのシステムを使えるようになれば、物件の貸主や借主に対して、価格の根拠をより透明性の高い形で説明できるようになるという。

 「ディープラーニングは計算のいきさつが見えづらい面もありますが、算出された値に対して、どの項目がどれだけ寄与しているかという数値は、ある程度分かるようになっています。ただ、これをそのまま現場のスタッフに伝えても、お客さまに説明するといった使い方をするのは難しい。今後、その数値の見せ方なども工夫していくことで、賃料の提示に、透明性と説得力を持たせられると考えています」(田所さん)

 AIを導入したところで、家賃相場に“正解”がないことには変わりない。しかし、その計算結果に意味を持たせ、人間の業務量を削減したり、利益の最大化を追求したりするという点では、ディープラーニングはぴったりのソリューションといえる。AIによる査定の精度が高まれば、いずれは家賃の交渉といったコミュニケーションすらなくしてしまうのかもしれない。

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