「そんなむちゃな!」に対応できる柔軟な発想力とは問題発見能力を高める(9)(3/3 ページ)

» 2005年05月27日 12時00分 公開
[秋池 治,@IT]
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課題解決型思考

 課題解決型思考は、現状に満足せずさらなる高見を目指して課題を設定するような思考方法です。使い捨てコンタクトレンズなどは、課題解決型の発想といえるかもしれません。

 メンテナンスの必要がないコンタクトレンズはできないのか?

 コンタクトレンズでシェア1位のメーカーにも、自社以上の規模があるライバルが存在しています。そう、コンタクトレンズの最大のライバルはメガネです。他メーカーのシェアを奪うより、はるかに大きな潜在需要を取り込めないのか。コンタクトレンズメーカーにとっての真の問題は、ライバル会社ではなく、メガネを使うユーザーでした。ユーザーがコンタクトレンズ使用に踏み切れない要因が、毎日の洗浄や消毒などメンテナンスの手間とそれに伴う目のトラブルでした。

 “メンテナンスの必要がなく、毎日衛生的で快適なコンタクトレンズ”として使い捨てタイプのコンタクトレンズが生まれました。ユーザーのメリットとともにメーカー側にとってのメリットとして、コンタクトレンズが消耗品としてより多くの消費を見込めることにつながりました。

 「え、メンテナンスの要らないコンタクトレンズは、現状否定型の発想ではなの?」と思った方もいるでしょう。はい、それも正解です。結果的に使い捨てコンタクトレンズという結論に至るのに、必ずしも1つの経路しかないわけではありません。人によって発想のパターンは違っていてもよいのです。ある場所へ行くための経路は1つではないのと同じことですね。

 また、コンタクトレンズの例では、その過程で「メガネユーザーは、なぜコンタクトレンズを使わないのか」「なぜ、メンテナンスがそれほど気になるのか」と源流追求型の思考も組み合わせて使っています。経路は1つでなく、さらにいくつかを組み合わせて利用することも多くあります。

柔軟な発想力トレーニング方法

 柔軟な発想に必要な1+3の思考方法を強化するには、次のステップを実践するとよいでしょう。

STEP 1. 身の回りから探す

 先ほどの音の出ない楽器や使い捨てコンタクトレンズなど、丹念に探してみると私たちの身の回りには、柔軟な発想による商品やサービスが多くあります。

 それを探し出すことから始めます。まずはお手本を探す感性を強化しましょう。初めは「これは不便だなぁ」とか「あ、結構便利じゃん」と感じたことを対象にすると良いでしょう。

 先ほどの音の出ない楽器や使い捨てコンタクトレンズなど、丹念に探してみると私たちの身の回りには、柔軟な発想による商品やサービスが多くあります。

 それを探し出すことから始めます。まずはお手本を探す感性を強化しましょう。初めは「これは不便だなぁ」とか「あ、結構便利じゃん」と感じたことを対象にすると良いでしょう。

STEP 2. 自分で発想してみる

 次は自分の身の回りから課題を決め、自ら発想をしてみます。このときには、1+3の思考パターンに縛られず、思い付くままに自由に発想してみます。

 初めから1+3のパターンを気にすると、なかなか発想ができないことが多く、まずは型を気にせずに、というところからのスタートです。これも「これは不便だなぁ」に対して、「私ならこうする」。また「あ、結構便利じゃん」に対しては、「どこの部分が便利に感じたのだろう」と考えてみます。

STEP 3. どの思考方法を使ったか考えてみる

 自分で発想した発想は、1+3のどの思考パターンを使ったのか、さかのぼって考えてみます。ポイントは発想を先にしておいて、後から思考パターンを当てはめることです。

STEP 4. 思考方法別に発想してみる

 さて、いよいよ仕上げの段階です。STEP 2の題材を今度は自由発想せずに、1+3のそれぞれの思考パターンから発想します。

 STEP 2と3が、まずは発想してみることから始めるのに対して、思考パターンを決めてから発想するところがポイントです。ここまでくると、いろいろな対象に対していろいろなパターンから柔軟な発想をすることができるようになっているでしょう。

 各STEP共通のポイントとして、1人でトレーニングするよりも2?5人程度のグループで行うと、お互いにより刺激されて発想が出やすくなります。リアルナレッジでは、その日誰かが気付いた題材を、ランチの時間に皆でワイワイとゲームのように楽しんでいます。あまりトレーニングと気構えずに行った方が効果が高まります。また、探した題材は忘れないうちに、通称“ネタ帳”と呼ばれるExcelシートに追加していきます。もちろん各題材は、どの思考パターンを使っているかも書き込みます。また、このネタ帳をグループ間で交換するなどしてトレーニングするのも有効な方法です。

「問題発見力を高める」を振り返って

 問題を抱えている社内外の顧客にソリューション(問題の解決)を提供する人材である情報エキスパートが持つべき視点や考え方を、問題発見力の強化を中心に全9回にわたり解説してきました。

 9回、1年3カ月の長きにわたり読んでいただき、ありがとうございました。この連載が情報エキスパートである皆さんの問題発見力および問題解決力の強化に役立てていただければ幸いです。

著者紹介

▼著者名 秋池 治(あきいけ おさむ)

株式会社リアルナレッジ 代表取締役

横浜国立大学卒。メーカー系情報システム会社にてシステム企画とシステム開発に従事。その後、ユーザー系企業でデジタルビジネスの企画および社内改革に取り組む。2003年に数名の仲間と共に株式会社リアルナレッジを設立、業務プロセスの可視化やプロセスの最適化により、経験や勘に依存せず業務を遂行するためのパフォーマンスサポートを提供している。

著書に「情報エキスパート」(アプライドナレッジ刊)がある。

e-mail:akiike@realknowledge.co.jp


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