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“可聴域の情報量”に着目、JVCがハイレゾ対応のウッドコーンオーディオシステム2製品を発表

» 2014年01月28日 21時55分 公開
[ITmedia]

 JVCケンウッドは1月28日、ウッドコーンオーディオシステムの新製品として、ハイレゾ音源再生に対応する「EX-N70」「EX-N50」の2機種を発表した。また同時に、イヤフォンの「ウッドシリーズ」3機種もリリースしている(→別記事を参照)。

木にこだわったオーディオ機器群を一挙に発表した。また発表会場には春に発売予定のポータブルヘッドフォンアンプも参考展示された(左)。JVCケンウッドの業務執行役員オーディオ事業部長の宮本昌俊氏(右)

 発表会であいさつに立ったJVCケンウッドの業務執行役員オーディオ事業部長の宮本昌俊氏は、昨年末に発売した「Kseries」に加え、高付加価値製品の展開をさらに拡大していく方針を示した。また、同社のハイレゾ対応製品には「Hi-Resolution Audio」マークを付け、店頭で分かりやすくするという。「ハイレゾ音源は、作り手や音楽愛好家の思いを伝えるもの。それを十分に堪能できる製品を分かるようにする」(同氏)。

可聴帯域内の情報量を重視

フルレンジスピーカーをセットにした「EX-N50」(左)と、2Wayスピーカーが同梱される「EX-N70」(右)

 新製品のウッドコーンオーディオは、フルレンジスピーカーをセットにした「EX-N50」と、2Wayスピーカーの「EX-N70」の2機種。DLNA1.5準拠のネットワークプレーヤー機能やアンプなどを一体化したレシーバー部はほぼ共通で、NASやPCに保存されている最大192kHz/24bitまでのPCM音源(WAV、FLAC)やDSD(2.8MHzまで)をネットワーク経由で再生できる。またフロントUSB端子はiPod/iPhoneのデジタル接続に対応した。

フロントUSB端子はUSBメモリーなどからの楽曲再生に加え、iPodデジタル接続をサポート(左)。背面端子(右)

 JVCでは、ネットワーク再生時のコントローラーとして、iOS/Androd向けのアプリ「JVC Audio Control WR2」を提供する(無料ダウンロード)。手元のスマートフォンからネットワーク上の楽曲選択や端末内の楽曲再生が可能になるほか、K2テクノロジーのオン/オフや音質調整にも対応した。

 開発を担当したJVCオーディオ事業部の今村智氏によると、今回のハイレゾ対応にあたっては、音楽の制作現場であり、従来機から共同開発を進めているビクタースタジオのエンジニアと共同で“音の目標”を設定したという。「ハイレゾというと人間の可聴帯域を超えた高い周波数が含まれていることに注目が集まりがち。しかし、より高音質化につながっているのは可聴帯域内の情報量が増加したこと」と指摘。実際の開発でも可聴帯域内の解像度改善に重点を置いたという。「中高域の情報量増加に見合う表現力の充実と倍音の増強を目指した。音楽再生時の空間表現や空気感、低重心の低音再生につながる」(今村氏)。

 まず、独自のデジタルアンプ「DEUS」は、ハイレゾ音源のきめ細かい情報を的確に表現するためにリニューアル。もともとDEUSは、スピーカーに入力されるアナログ信号の精度を高めるため、デジタルフィードバックとアナログフィードバックをそれぞれ行う仕組みを持っているが、今回はループゲインを拡張。従来は80kHzまでだったが、今回は100kHzまでカバーして広帯域化を実現した。あわせて人間の可聴帯域とされる20kHz内のノイズレベルを低減し、S/N比は100dB、ひずみ率も0.007まで改善している。

 独自の「K2テクノロジー」も進化した。今回は、圧縮音源のみならず、ハイレゾ音源や非圧縮音源に対してもビット拡張と帯域拡張、波形補正の処理が可能になったほか、音楽フォーマットに応じて係数(パラメータ)を自動設定し、処理を最適化する仕組みを備えた。

「DEUS」と「K2テクノロジー」の概要

 筐体(きょうたい)の制振対策も徹底している。例えばインシュレーターは樹脂と真ちゅうを組み合わせたハイブリッド型を採用した3点支持構造とした。「通常の4点支持よりもガタツキが置きにくい」ためだ。さらに筐体を構成する各パネルの固定には銅メッキネジを使い、異種金属ワッシャーで固有振動による共振を防ぐ。例えばモールドパネルとシャーシの固定部左側には真ちゅうニッケルメッキワッシャーを使用するが、入力端子を固定する場所にはアルミワッシャー、スピーカー端子の固定にはアルミワッシャーと銅ワッシャーを2枚重ねにするなど、素材も使い方も場所によって異なる。これらはすべて「1つ1つ実際に試聴しながら選んだ」。

 このほか、上位機のEX-N70には、レシーバーの底面に厚さ9ミリのMDF材で作られた「アークベース」を取り付けられた。これもシャーシ剛性の向上と振動の吸収を狙ったもの。EX-N50/N70のレシーバー部で仕様が異なる部分は、アークベースの有無だけだ。

「EX-N70」のボトムシャーシを裏返しにしたところ。黒い部分が「アークベース」だ(左)。樹脂と真ちゅうを組み合わせたハイブリッド型インシュレーター(右)

フルレンジ1発でもハイレゾ対応?

 セットのスピーカーは、シリーズ名にもなっている「ウッドコーン」だ。伝搬速度が高く、適度な内部損失を持つ優れた音響素材である“木”を振動板に使うため、同社が5年以上をかけて開発したものだ。

 上位モデルの「EX-N70」は、110ミリ径ウーファーと20ミリ径ツィーターの2Way構成。ウーファーの振動板背面に薄いチェリー材を十字に貼り付けた“異方性振動板”など従来機の技術を継承しつつ、エッジ材料(ブチルゴム)の素材配合比率を変更したり、ウッドブロックを大きくするなどのチューニングが行われた。またスピーカーターミナル部にダブルナット構造を採用して内部配線との接触抵抗を小さくするなど、細かい改善も施している。

「EX-N70」のスピーカーカットモデル(左)。使用されているユニット。ウッドコーンは、木目の繊維方向によって伝搬速度が異なるという、自然の素材ならではの難点があったため、振動板の上下左右に“羽根”を取り付け、上下の羽根を少し細くする“異方性振動板”が開発された。水平方向の指向特性を改善し、音場空間を広げる効果もある(右)

 一方のEX-N50は、85ミリのウッドコーン(振動板)を採用したフルレンジスピーカーが付属する。70ミリ径の大型マグネットを採用して低域の再生力をアップしたほか、磁気回路の後部にウッドブロックを装着して不要な振動を吸収するといった変更が加えられている。ただし、フルレンジ1発ということもあり、再生周波数帯域の上限は2万Hzと人間の可聴域とほぼ同等。つまりスペックだけを見ると“ハイレゾ非対応”だが、前述の通り可聴帯域内の情報量が増えたことで、晴れてハイレゾ対応モデルに分類されることになった。

 「EX-N70/N50」の発売は2月上旬の予定。価格はいずれもオープンプライスとなっているが、店頭ではEX-N70が12万円前後、EX-N50は10万円前後になる見込みだ(いずれも税抜き)。

 なおJVCでは、新製品の発売を記念して、「EX-N70」を入札による特別価格で購入できるモニターキャンペーンを実施する。募集人数は100人で、商品モニターとして後日アンケートへの協力が条件となる。応募期間は1月28日(11時)から2月7日(10時)まで。詳細は同社サイトの告知ページを確認してほしい。

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