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訴求すべきは“4K”より倍速とHDR――IFA GPCリポート(1)本田雅一のTV Style(2/2 ページ)

» 2015年04月30日 15時21分 公開
[本田雅一ITmedia]
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 欧州は衛星テレビ局のSKYが、今年中にも前倒しで4K放送を次々に始める計画のようだ。元々、ドイツでは4Kの本格放送を始める予定だったが、フランス、イタリア、UKなどでもSKYが4Kサービスを提供する方向で動いているとのこと。地域的には欧州の大部分をカバーできる。ロシアでの4K放送も聞こえてきており、さらには東南アジアでの4K試験放送開始などもある。

フランスのカンヌで開催された国際的な番組トレードショー「miptv」の会場

 こうなれば、4K番組にもニーズが生まれてくるわけで、テレビコンテンツの商取引を行うmiptvで4Kコンテンツを集めた「4K Theater」が人気を集めたのも当然というところだろうか。このシアターはmiptvの公式プログラムとして組み込まれているものだが、各セッションとも、立ち見や通路へ座り込んで熱心に見る人が登場するほどの人気を呼んでいた。

 実はmiptvで4Kコンテンツの紹介イベントが行われたのは昨年春が最初だったが、そのときにはあまり大きな話題にはなっていない。実際に放送が始まるとなれば、放送枠を埋めるために番組調達が必要となり、調達ニーズがあればクリエイターもより良い4Kコンテンツ制作に投資するという流れだ。

 取引されるコンテンツも、バレエやオペラ、コンサート、紀行ものといったものが多いのは変わらないが、そこに料理バラエティなど”普通の”、しかし高画質が活かせる番組が出始めていた。

「miptv」の様子

 まだ過渡期であることは確かだが、モノが動けばお金が動き、お金が動けば市場が生まれるのは道理で、すでに商業放送が始まっている日本の4K放送チャンネルも、この流れの中で充実が進むものと期待される。

4K対応Blu-ray Discプレイヤー、年内に出せるのはパナソニックのみ

 さて、話をGPCに戻したいところだが、このセッションの質問では4K対応Blu-ray Disc(ULTRA HD BLU-RAY)に関するやり取りもあった。が、こちらも別情報の方がより現実に近いだろう。

 4K対応Blu-ray Discの基礎的な技術要件は、2014年の半ばには決まっていた。2層66Gバイト、3層100Gバイトで、HEVCを用いた4K映像をサポートする。10ビット色深度でHDRにも対応する。規格の正式発表が何時になるかは、いまだに読めない部分もあるが、技術的には年末に商品が出てくる可能性もある。

1月の「2015 International CES」でパナソニックはULTRA HD BLU-RAYプレイヤーのデモ機を展示した

 ただし、1月の「2015 International CES」でデモ機を展示したパナソニックこそ、自社開発のLSIで4K対応Blu-ray Discプレイヤーを開発可能な状況にあるものの、他のBlu-ray Discプレイヤー向けLSIは対応にまだ時間がかかる見込みで、パナソニック以外は来年になるだろう。

 このあたりが不確定な部分で、あるいは規格そのものの発表が遅れる原因になっているのかもしれない。HDRのサポートに関しても、やることは決まっているものの、詳細に関してはまだ議論が続いている部分がある。

 この話は、さらに4Kのインターネットストリーミングとも連動している。ご存知の通り、4KストリーミングはNetflixが積極的に展開しており、さらに年内にはHDRにも対応するとしている。こうしたストリーミング動画配信サービスは、4K対応Blu-ray Discのような業界標準を確立しなくとも、サービス設計次第で簡単にサービスインできる。ソニーなどは、どちらかといえば4K推進派メーカーの中でもストリーミング側に軸足を置いている。そうした部分も、やや足並みがそろっていない原因と思われる。

 さて、話をGPCに戻そう。

 GPCを主催するメッセベルリンで、IFAの責任者であるイエンズ・ハイテッカー氏は、「テレビがインターネットにつながり、スマートテレビに生まれ変わっている。スマートテレビの比率は年々伸び、これが新しいテレビの使い方、テレビ向けサービスといったビジネスを呼んでいる」と話し、テレビという商材が家電業界の主役へと「復権する」と話した。

 もっとも、これは”予想”ではなく”予告”ともいえよう。というのも、彼らは9月にベルリンで開催されるIFAの出展内容について、日本の大手を含むメーカーと調整を続けている。そうした中、50インチ以上の大型テレビの比率がグローバルで2013年の12%から16%の伸び、それが今年は19%になるという予測や、スマートテレビ比率が41%に達する(2013年は28%)ことでインターネットストリーミングによる視聴が定着するという観測(いずれも数字はGfk)から、テレビ市場は伸びる(復権する)という結論を導き出しているようだ。

 ただし、どれもグローバル視点での動向であり、またスマートデバイスのムーブメントが落ちているというわけではない。スマートフォンはデジタル家電市場の大きな割合を占めている。

 リポート後半では、視点をスマートフォンを中心とした製品に移してみることにしよう。また、近年市場が伸びているオーディオ市場についての数字にも触れていきたい。

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