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次世代の4K/8K衛星放送“左旋”を見るには?

» 2017年04月06日 22時12分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 2018年12月にスタートするBS/110度CSによる4K/8K実用放送では、新たに左旋円偏波(以下、左旋)が採用されることになった。4月1日には、4K/8Kを推進するA-PAB(一般社団法人 放送サービス高度化推進協会)が東経110度CSを利用した左旋円偏波の4K試験放送を開始するなど関連する動きも活発になっている。しかし、左旋による4K/8K放送は、4Kテレビがあれば視聴できるというわけではない。交換する必要のある機材や設備について、A-PABの説明を元にまとめた。

BS/110度CS右旋左旋用共用アンテナ。これを使えば将来も安心だが、あくまでもアンテナだけの話。実はそのほかの部分にも課題がある

はじめての左旋には魅力的なコンテンツがある

 現在、日本の衛星放送では“右旋”円偏波(以下、右旋)を採用している。右旋は、衛星から見て時計回りの円を描く偏波方式のことで、逆に左旋は半時計回りだ。あえて左旋を加える理由は、BS/110度CSが使用している12GHz帯が既に一杯で、新しいチャンネルを設ける余裕がないため。反対側の偏波面を使う左旋であれば、同じ周波数帯に共存させることが可能だ。つまり左旋の追加はチャンネル数を倍に増やし、12GHz帯を効率的に利用することにつながる。このため左旋は、総務省の示したロードマップにおいて、将来の4K/8K放送の「基本的な伝送路」と位置付けられている。

右旋と左旋の概要

 2018年の4K/8K実用放送では、従来と同じBS右旋で4K放送が6チャンネル、新しいBS/110度CS左旋で4K放送が12チャンネル、8K放送が1チャンネル追加される予定だ。このうちBS右旋はNHKと民放キー局が提供する4K放送という位置付けで、符号化方式などが異なるため新しいチューナーを導入する必要はあるものの、パラボラアンテナやブースター、分配機などは従来のもので対応できるため比較的ハードルは低い。ただし、既存の4Kテレビを活用する場合は、著作権保護技術のHDCP 2.2と4K/60p入力に対応したHDMI入力端子が必須だ。

 一方の左旋はWOWOWやスカパー!、東北新社といった有料チャンネルが提供する4K放送、そしてNHKのスーパーハイビジョン(8K)というラインアップ。つまり4Kの映画や8K番組といったプレミアムなコンテンツに興味がある人は左旋に注目せざるを得ない。しかし、左旋の放送を見るには、パラボラアンテナの交換に加え、分配機、増幅器(ブースター)、テレビ端子、場合によっては同軸ケーブルまで交換する必要が出てくるという。

 理由は、宅内を伝送する際に使用する周波数帯の違いだ。右旋と左旋は同じ周波数帯で衛星から降ってくるが、アンテナで受信した後はほかの放送波と同じように同軸ケーブルで伝送しなかればならない。左旋の放送波は、右旋と混信しないようにコンバーターを使って異なる周波数帯(右旋の上側)に配置換えされる仕組みになっており、従来より幅広い周波数に対応した機器を使わないと伝送できない。

1本の同軸ケーブルで右旋・左旋を同時に伝送できるように周波数の配置換えする

 現在使われている分配機や増幅器には2600MHzまで対応しているものと2150MHzまでのものの2種類がある。このうち2150MHzの場合、左旋放送はほぼ全滅。2600MHzまで対応している機器でも一部のチャンネルしか視聴できない。もちろん右左旋共用のアンテナと対応チューナーを直結するといった方法ならほかの設備を改修する必要はないが、一般家庭ではなかなか難しい選択となる。

まとめ

設備の品質も大事

 受信設備の品質にも注意したい。例えば増幅器や分岐・分配機、直列ユニットなどの同軸ケーブルが露出した接続箇所、いわゆる“直付け箇所”から電波が漏洩する可能性が指摘されている。すると宅内の無線LANなどを妨害し、速度低下などの障害が発生する可能性がある。

 逆にこの“直付け箇所”から放送波のほうが妨害を受けることも。例えばキッチンで電子レンジを動かした途端、衛星放送の受信に障害が生じるといったことが考えられるという。

既にメーカーからはBS/110度CS右旋左旋用共用アンテナや増幅器、分配器などが販売されている

 現在はDXアンテナなどの関連機器メーカーからBS/110度CS右旋左旋用共用アンテナや増幅器、分配器などが販売されているため、リフォームや新築を検討しているなら将来に備えて対応製品を選んでおくのが得策だ。また右旋左旋共用受信機器のうち、一定以上の性能を満たしたアンテナなどにはJEITAの「SHマーク」が入っているため、参考にしてほしい。

右旋左旋共用受信機器のうち、一定以上の性能を満たしたアンテナなどにはJEITAの「SHマーク」が入っている

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