年末のこの時期、改めて問いたい。FMCとは何だろうか?
もちろんそれが“Fixed Mobile Convergence”の略であり、「固定と携帯の融合」であることは業界関係者なら多くが知っている。ただ、これは具体的に何を意味しており、どんなメリットをもたらすのだろうか。
NTTドコモ プロダクト&サービス本部のマルチメディアサービス部長、夏野剛氏は10月のセミナー講演で、FMCというワードは有名になったが“それで何がいいの”という部分が不透明だと指摘した(10月12日の記事参照)。その答えになりそうな「候補」をまとめた。
固定と携帯の融合を考えたとき、まず浮かぶのがNTTグループで「固定と移動体の接近」が始まっていること。NTT東西とNTTドコモは、次世代の通信サービスを見据えて互いに協調的な姿勢を見せている。
ここで両社がまず検討したのが、請求書の一元化だった(8月19日の記事参照)。固定電話と携帯電話をワンビリングで支払えるようにすれば、単純に考えてユーザーも便利だし、通信事業者も顧客の囲い込みにつながる。これがFMCのメリットなのか。
もちろん、これがFMCのすべてを表すとは考えにくい。FMCうんぬんを待つまでもなく、KDDIは既に移動体と固定の請求書一元化を始めている(10月12日の記事参照)。請求をどうするというのは単純に事務手続きの問題だし、何より“未来のサービス”の正体が請求書をどうこうするだけで終わり……では、寂しすぎる。
“ワンナンバー”がFMCのカギであるとする意見がある。総務省が開催する「IP時代における電気通信番号の在り方に関する研究会」では、固定電話と移動電話がワンナンバーで着信できるようにするアイデアが議論されている。「060番号」などを用意して、ここに電話をかければ適切に着信できる基盤を作ろうではないか、というものだ。
これがFMCのメリットなのか? しかし、異論もある。KDDIの小野寺正社長は定例記者会見の場で、ワンナンバー化に疑念も呈した。
「家にかかってくる電話というのは、大概がセールスだったり……。プライベートな番号である携帯の番号とは、別扱いにするほうがいいこともある」。もちろん、携帯電話にかかってきた着信を、その場で出られないからと固定電話に転送するようなニーズはあるとコメント。ある程度の連携は重要だが、一概にワンナンバー化してよいものかという議論を展開した。もっともな主張といえる。
通信基盤をオールIP化し、固定と移動体の通信基盤を統合することがFMCのポイントであるとする見方がある。
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