小川社長が語るインデックスの成功と虚脱感――そして第2の成長期へ

» 2006年03月20日 22時41分 公開
[杉浦正武,ITmedia]

 いまやIT企業の雄となったインデックス。民放キー局と提携して「通信と放送の融合」に取り組むほか(2005年5月30日の記事参照)、出版事業やSTBを介した映像配信を手がける総合マルチメディア企業だ。しかしもともとは、携帯コンテンツを手がける小さな企業だった。

 3月16日に「ケータイ国際フォーラム」に出席した同社の小川善美社長は、同氏がどのようにIT業界と関わり、またどのように会社を成長させていったか話した。

Photo インデックスの小川社長

「世界を駆け回るビジネスウーマン」になりたかった女子大生

 小川氏は学生の頃、「世界をアタッシュケースを持って駆け回るビジネスウーマンになりたかった」と話す。折りしも、大企業が採用の門を一気に広げていた頃で、「男女雇用機会均等法の影響もあって6大商社の1つに入社することができた」(小川氏)

 ただし、入社してみるとそれほど男女に与えられる“機会”は均等ではなかった……とも振り返る。意に沿わない仕事を押し付けられ、「若干会社でくすぶっていた」小川氏に、やがて子会社への出向の話が出る。周囲からは「どちらかといえば出世のラインから外れたのではないか、左遷ではないかと『可哀想に』という目で見られた」というが、本人は案外“これ幸い”という思いだった。ここでパソコン通信などと出会い、社会でネットワークビジネスが重要な意味を持つようになると考える。やがて小川氏は商社を辞め、インデックスに入社することとなる。

 1997年当時のインデックスの事業内容は、ポケベル向けのコンテンツ配信。ポケベルは女子中学生などには圧倒的な人気を誇るコミュニケーションツールだったが、ポケベルはその後衰退する運命にあった。変わって流行のきざしがあった携帯電話と「iモード」に、事業をシフトしていくことになる。

 「運良く、99年にiモードサービスがスタートすると同時に『占いコンテンツ』を始めることができた。確か最初の66社のコンテンツ・プロバイダのうちの一社になったと思う」。iモードは、あれよあれよという間に社会的なブームになっていった。インデックスも、この流行に乗った企業の1つとなる。

 ここで小川氏は、次なる成長の計画を練った。その頃インデックスの資本金は2000万円、社員約20人。携帯のプラットフォームは絶え間なく進化し続けている。何もない会社では、進化しないでいるといつか乗り遅れるだろう――。

 ここでインデックスが目をつけたのがいわゆる「通信と放送の融合」だった。マス向け媒体であるテレビと、パーソナルな媒体である携帯が融合すればシナジー(相乗効果)があるのではないか? そう考えた小川氏は、フジテレビなどの民放キー局にサービスの必要性を訴える。結果、2000年8月に三菱商事、フジテレビ、テレビ朝日など13社を割当先とする総額11億円の第3者割当増資を実施。さらに2001年にはJASDAQに上場と、とんとん拍子の成長を続けることとなる。

満足感と、襲い来る「虚脱感」

 この頃の小川氏にはある種の満足感、達成感があったと話す。当時は社員数も増え、80人から100人弱の規模になっていた。インデックスという無名の会社に入り、昼夜問わずに働いた。「次の目標を、見失った時期があった。虚脱感があった」

 ただ、そんな中で小川氏は再び“次”に向かって動き出す。

 「昔のインデックスは、今とは異なり青山の雑居ビルにいた。正直汚いビルだった。そこに世界中のキャリアや端末メーカーが『日本の携帯向けにコンテンツを提供している会社を見たい』と尋ねてくる」。小川氏は、インデックスにはさらなる可能性があると考え始める。

 携帯はさらに進化していく。インデックスは上場によって、少しではあるが株式市場から資金を調達する権利を得た。「それなら、事業を広げようと。携帯とブロードバンドが融合していく中で、コンテンツホルダーになったり、あるいは“技術ホルダー”になったりしながら、大きなドメイン(事業領域)の中でビジネスを広げようじゃないか」

 そこからインデックスの社史には、M&Aの文字が目立つようになる。2004年には、NECインターチャネルを買収(2004年3月29日の記事参照)。同年8月には、欧州最大級のモバイルコンテンツプロバイダーである123 Multimediaを子会社化した。こうした流れの中で、インデックスは海外進出も積極的に推し進めていく。

 2005年には、タカラの筆頭株主になった上でタカラとトミーの合併を演出するなど(2005年5月13日の記事参照)、エンタテインメント分野での存在感を増していく。ブロードバンドの事業にも取り組んでおり、2005年にはゲオとの合弁会社である「ゲオ・ビービー」が、STB(セット・トップ・ボックス)を利用した映像配信サービスを開始している(2005年6月1日の記事参照)

 小川氏は、インデックスの本社が三軒茶屋にあることを紹介しつつ、こう話す。「最近新聞紙面をにぎわせているような、ITベンチャーが集まる六本木ヒルズではなく、住宅街の中に本社がある。ITベンチャーの中では『地味な印象を受ける』と言われるのは、そうした理由もあるのかもしれない」(笑)。ただし同社の2005年8月期の連結決算は、売上高が約736億円。営業利益も、約67億7200万円という規模になった。小川氏は「今期の売上は、連結で1000億円を超えようと頑張っている」と意気込んだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2025年12月07日 更新
  1. ヨドバシ通販は「高還元率で偽物リスク低い」──コレが“脱Amazon”した人の本音か (2025年12月06日)
  2. 「健康保険証で良いじゃないですか」──政治家ポストにマイナ保険証派が“猛反論”した理由 (2025年12月06日)
  3. NHK受信料の“督促強化”に不満や疑問の声 「訪問時のマナーは担当者に指導」と広報 (2025年12月05日)
  4. ドコモも一本化する認証方式「パスキー」 証券口座乗っ取りで普及加速も、混乱するユーザー体験を統一できるか (2025年12月06日)
  5. 飲食店でのスマホ注文に物議、LINEの連携必須に批判も 「客のリソースにただ乗りしないでほしい」 (2025年12月04日)
  6. 楽天の2年間データ使い放題「バラマキ端末」を入手――楽天モバイル、年内1000万契約達成は確実か (2025年11月30日)
  7. 楽天モバイルが“2025年内1000万契約”に向けて繰り出した方策とは? (2025年12月06日)
  8. 楽天ペイと楽天ポイントのキャンペーンまとめ【12月3日最新版】 1万〜3万ポイント還元のお得な施策あり (2025年12月03日)
  9. ドコモが「dアカウント」のパスワードレス認証を「パスキー」に統一 2026年5月めどに (2025年12月05日)
  10. Amazonでガジェットを注文したら、日本で使えない“技適なし製品”が届いた 泣き寝入りしかない? (2025年07月11日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー