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» 2008年04月07日 13時25分 UPDATE

神尾寿のMobile+Views:iPhoneからPNDまで──「NAVITIME」の拡大戦略 (1/2)

今や携帯電話の重要な機能の1つとなったGPS。そのGPSを活用するナビサービスを、古くから手がけてきたのがナビタイムジャパンだ。競合サービスも登場し、競争環境が厳しくなった2008年、同社はどのような成長戦略を描くのか。ナビタイムジャパン大西社長に聞いた。

[神尾寿,ITmedia]

 携帯ナビ市場の草分けにして、この分野をリードするナビタイムジャパン(以降、ナビタイム)。同社の「NAVITIME」は地図・経路探索サービスの中で随一のブランド力を誇り、多くのユーザーが利用している。また、ナビタイムはKDDIと共同で、auの主力サービスである「EZナビウォーク」の開発・提供も行っている。

 携帯電話のGPS機能が一般的になり、“携帯ナビ”市場の競争が激しくなる中で、ナビタイムはどのような成長戦略を描いているのか。ナビタイムジャパン代表取締役社長の大西啓介氏に話を聞いた。

Photo ナビタイムジャパン代表取締役社長の大西啓介氏

利用者数が急増、携帯ナビの“追い風”が強まる

 携帯電話のGPS機能は、2001年にKDDI(au)がWIN端末に本格導入して以降、急速に拡大してきた。auがGPSの標準搭載化で先行し、それを追う形で2006年にドコモも「903iシリーズ」から標準対応を果たした。今ではauのWIN端末すべてとドコモの905iシリーズ(企画端末をのぞく)、705iシリーズの一部、ソフトバンクモバイルの一部端末でGPSが標準機能とされているほか、新規参入キャリアであるイー・モバイルも「H11T」と「EMONSTER」がGPSを搭載している。この1年で、GPSは“ケータイに欠かすことのできない機能”にまで広がった。

 このようなGPSの広がりと歩調を合わせる形で、NAVITIMEのサービスも急成長をしているという。

 「(NAVITIMEの)会員数で見ますと、加速度的に増加しています。『パケット料金の定額制』『GPS機能の標準搭載』『第3世代携帯電話の普及』が携帯GPSナビの普及における3要素なのですが、これが着実に進展してきていますので、(携帯電話市場全体で)ナビゲーションが使いやすい環境が整ってきています。これに伴って我々のサービスの普及も進んでいます」(大西氏)

 本誌では2007年5月に大西氏にインタビューをしているが、その時点でのNAVITIME有料会員数は約46万人。それから約1年で会員数は倍近くに増えて、現在は約75万人になっているという。

 「NAVITIMEは2001年からサービスを行っていますが、それから考えますと、2007年の成長は著しいものがありました。(KDDIと共同提供する)au向けのEZナビウォークについては我々から数字を公表できませんが、こちらも順調に会員数が増えています」(大西氏)

 ユーザーの属性としては、都市部を中心とした20代〜30代のビジネスパーソンが多いことは従来どおり。しかし、最近の傾向として「女性層への浸透に手応えを感じ始めています」(大西氏)。NAVITIMEの女性比率が高まっており、特に利用料の安いプランの登録が増えているという。

 一方で、2007年秋冬モデルとして発売されたドコモの905iシリーズは、ゼンリンデータコムと共同開発した独自のナビアプリ「地図アプリ」をプリインストールするなど、NAVITIMEのライバルサービスも増えてきている。競合他社の増加による影響はないのだろうか。

 「競合サービス増加による影響はまったくないんですよね。むしろ、NAVITIMEの会員は順調に増えています。例えば、(地図アプリをプリインストールした)iモードで見ても、今年の春商戦の会員数は過去最大の純増になっています。

 (ドコモを筆頭に)すべてのキャリアがGPSナビに適した新端末を積極的に投入するようになったことで、市場全体が活性化しています。これがNAVITIMEへの好影響になっているのだと思います」(大西氏)

携帯ナビのキラーサービスは「リアルタイム情報配信」

 NAVITIMEでは“トータルナビ”の基本である「目的地検索」と「経路誘導」のほかに、交通情報や駐車場の満車・空車情報をはじめ、さまざまなリアルタイム情報の提供に注力している。特に昨年は「鉄道運行情報」など公共交通の運行情報提供に力を入れた。

 「リアルタイム情報の配信は(通信を使う)携帯電話の特性が生かせますし、ユーザーの需要がとても大きいんです。例えば、2007年の7月に投入した『鉄道運行情報メール』は予想以上の登録をいただき、(2007年に)最もヒットした新機能になりました」(大西氏)

 鉄道運行情報メールは、あらかじめ登録してある駅で遅延や事故が起こると、自動的にケータイにメールで知らせてくれるサービスだ。最近は首都圏を中心に電車の遅延や事故が増加していることもあり、「ユーザーの認知度が上がり、登録数が急増している」(大西氏)状況である。

 このサービスは筆者も利用しているが、自宅や会社の最寄り駅を登録しておくと、電車が大幅に遅れた時にはメールで知らせてくれるのでとても重宝する。

 「ほかにはバスのリアルタイム運行情報も好評です。1分更新でバスの運行状況が確認できますから、『あとどのくらい待てばバスが来るか』が把握できます。これはユーザーの利便性が向上するのはもちろん、(時間把握ができることで)バスの利用促進にもつながるので、バス会社様からも高く評価していただいています」(大西氏)

 バスのリアルタイム運行情報は、VICS渋滞情報のように集約的にデータを集めている事業者はなく、GPSバスロケーションシステムを導入しているバス会社からナビタイムが直接データ提供を受ける仕組みになっている。そのため現時点でリアルタイム運行状況の確認ができる路線は限られているが、「サービスの認知度もあがり、バス会社から積極的にデータ提供をしていただける状況になっている」(大西氏)という。

 また、NAVITIMEのインタラクティブ性は「リアルタイム情報」の提供だけでなく、「予約サービス」の面でも追求されている。こちらは2007年の段階で、NAVITIMEのルート検索結果と連動して全日本空輸(ANA)と日本航空(JAL)のチケット購入が可能になっていたが、今後は予約ができる公共交通機関を増やしていく方針だ。

 「今後は高速バス、JR・私鉄の特急も予約できるようにしていきたいと考えています。理想でいえば、新幹線のチケットまで(NAVITIMEのルート検索結果から)予約できるようにしたいと考えているのですが、こちらはちょっと壁が厚いですね(苦笑)」(大西氏)

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