インタビュー
» 2012年08月01日 11時00分 UPDATE

開発陣に聞く「らくらくスマートフォン F-12D」:集大成であり新しいスタート地点 “らくらく”13年目の超進化(前編) (1/2)

ドコモの「らくらくスマートフォン F-12D」は、13年続く「らくらくホン」シリーズで培った使いやすさと、スマートフォンならではの大画面や便利さを兼ね備えたシニア向けAndroid端末。新機軸のシニア向けスマホは、どのように作られたのだろうか。

[房野麻子,ITmedia]

 NTTドコモが8月1日に発売する「らくらくスマートフォン F-12D」(以下、F-12D)は、らくらくホンシリーズで培った使いやすさと、スマートフォンならではの大画面や便利さを兼ね備えたシニア向けの富士通製Android端末だ。

photophoto 「らくらくスマートフォン F-12D」

 タッチ操作が初めてというユーザー向けに、キーを押した感覚をしっかり伝え、誤操作を防ぐ「らくらくタッチパネル」を搭載した。その一方で、標準的なAndroidスマートフォンでは欠かせないGoogleアカウントを使わず、Google Playが利用できないという特徴もある。

 シニアに使いやすいスマートフォンにするために、どのようなコンセプトで機能を選び、あるいは省いたのか。開発陣であるNTTドコモ プロダクト部第二商品企画担当課長の今田剛氏と同プロダクト部第一商品企画担当の大堀敬広氏に、F-12Dの使いやすさへのこだわりを聞いた。また専用のパケット定額サービス「らくらくパケ・ホーダイ」について、同社マーケティング部 料金サービス担当主査 細井良則氏にその狙いを聞いた。

photo 左からドコモの細井氏、今田氏、大堀氏

分かりやすいメニューとシニアが使いやすいタッチパネル

photo NTTドコモの今田氏

――(聞き手:房野麻子) 2012年夏モデルの発表会では、山田前社長が「シニアの方も写真を指で拡大縮小して見たいという要望がある」とか「ドコモショップでシニアもスマートフォンの展示コーナーに行く」という例を挙げ、スマートフォンに興味を持っているシニアが多いと話されていました。

 今回のらくらくスマートフォン F-12Dの開発は、そういうシニアの要望に応えるという形で始まったのでしょうか。

今田氏 そうですね。ドコモのお客様には若い方からシニアの方まで多くいらっしゃいますが、市場がスマートフォンにシフトしている中で、シニアの方の「自分たちもスマートフォンを使ってみたい」という潜在的なニーズはすごく多く上がってきていました。

 ただ、「難しそう」とか「自分で使えるのかどうか分からない」という不安の声も同時に聞こえていました。ですから、らくらくホンシリーズでスマートフォンを作ることでニーズに応えられるのではと思い、端末を企画しました。

―― スマートフォンは指でタッチして操作するということは、シニアの方にも認知されていると思うのですが、やはり難しいと思われているのですね。

今田氏 語弊があるかもしれませんが、「何をしているかよく分からないけれど楽しそう」という感じだと思います。ショップでの様子を観察していると、触るのに少しビクビクされている方がいらっしゃいます。スマートフォンは画面をポンと触るとアプリがバーンと立ち上がって、触れただけなのにいきなり画面が変わる。そういった部分に不安を感じられるシニアが多いと思われます。

 スマートフォンも慣れてくるとそんなに難しくなさそうだ、という感覚になると思うのですが、シニアの方は従来のらくらくホンでも最初、操作に戸惑う方が多かったですし、現状でも多いです。そういう状況から考えると、スマートフォンに対する不安感はまだ根深くあると思います。

―― では、どういったところに気を遣って簡単に使えるようにしたのかを、改めて紹介していただけますか。

photo ドコモの大堀氏

大堀氏 使いやすさを重視したのはメニュー画面です。大きい画面で、ボタンの数は一般的なスマートフォンより減らし、どこを押せばいいのかがすぐ分かるようにしました。また、画面は縦スクロールだけにしています。一般的なスマホはウィジェットがあり、アプリ一覧が横スクロールだったり縦スクロールだったりと複雑です。縦横両方のスクロールがあると分かりづらいので、F-12Dのメニュー画面は縦スクロールだけにし、機能を探しやすくしているのが特徴です。

 また、「ボタンのような押し感」と紹介させていただいていますが、タッチパネルは押すと反応がくるようになっています。初めてタッチパネルを使う方は、画面をスクロールしているつもりなのにアプリが起動してしまったり、本体を持っている時に画面に触れているつもりはないのに勝手に反応してしまったり、ということがあるので、そういったことで戸惑わないように、あえてぐっと押すと反応する「らくらくタッチパネル」にしています。

―― 誤操作を防ぐために、しっかり押さないと反応しないようにしているわけですね。

今田氏 確実に押した、触ったことを実感していただくことが大切だと思っています。シニアの方でもスマホ以外のタッチパネル、例えば駅にある切符の券売機や銀行のATMなどには接する機会が多いと思います。

photo 「らくらくタッチパネル」はタッチ操作の初心者を想定し、しっかり押すことで反応するようにした

 でも実際に銀行のATMを見てみると、あの大きな画面サイズで実際に押すボタンはかなり少なく、視認性を強く意識して作られている。ましてや画面は動かず、1画面の中にすべての情報が開示されている中で操作します。もちろん、フリック操作なども必要ありません。それに比べるとスマートフォンのタッチパネルは自由度が高い。

 また、確実に操作しているという実感を持っていただくことで、自分が操作した通りに画面が動いているということを理解し、自分が操作しているという感覚を持っていただくことが大事だと思っていましたので、そこを今回のタッチパネルで実現するのが大きなコンセプトでした。

―― メニューは1つの長い画面で完結しているんですね。

今田氏 最低限、上下の動きをしていただければ、自分の探したいものが見つけられるようにしています。細かいところですが、トップ画面は基本的には最初の1画面に収まるようにしているのですが、下にもメニューがまだありますよ、と気づかせるため、あえて一番下のボタンは切れるように配置しています。

 これを1画面に収めるか議論したのですが、きれいに納めてしまうと下に続いているのが分からないんじゃないかと考えたのです。「なんかアイコンが切れているけど、これってヘンじゃない?」と思ってもらえる方がいいと判断して、このようにしました。

photo 画面に表示するアイコンが途切れることで、次の画面があることを意識させている

―― さらさらとスクロールできて、画面の動きはいいですね。押した感の強いこのタッチパネルは、どういう構造になっているのですか。

大堀氏 1つだけの部品ではなく、色々なものを組み合わせてらくらくタッチパネルになっています。触れてすぐ反応しないように制御したり、押し込みを検知できたりするようになっています。また、押した時に振動するような部品を組み込んでいます。

―― タッチパネルの種類としては静電容量式なんですか。

大堀氏 そうです、感圧式ではありません。指が触れた位置や押し込み量を検知して、しっかり押しているかどうかを調べています。

―― 静電容量式ですと、感圧式ではできないフリック操作ができますね。タッチ操作の幅を広げる一方で、フリックはスマートフォン初心者の壁になっていると思うんですが、そういった操作はF-12Dではできるのでしょうか。

大堀氏 スクロール操作でのフリックは可能です。ただ、文字入力時のフリック入力は、想定ユーザーには難しいと思いましたので、対応していません。もちろん、タッチパネルの仕組み上は可能です。

今田氏 F-12Dで想定しているユーザーは、今、らくらくホンを使っているお客様です。F-12Dは、そういった方々がスマートフォンに移ってこられるときのデビュー端末のような位置付けで、今までのらくらくホンの操作に慣れているという前提です。文字入力は、フリックよりも携帯電話と同じ方が操作しやすいだろうということで、アイウエオ順に連打する入力方法に固定しています。

 また、基本的にはしっかり押すようになっていますが、カメラのシャッターボタンだけは強く押すとブレてしまうので、軽くタッチするだけで撮影できるようにしました。カメラはシニアの方がよく使う機能なので配慮しています。

―― 撮影後の写真保存操作ではしっかり押す必要がありますね。ひと通り触ってみましたが、スマートフォンに慣れている人間が使うとちょっと戸惑いますね……。

今田氏 スマホに慣れていればいるほど、使いにくいと思います(笑)。F-12Dは、片方の手でボディを持って、反対の手でタッチパネルを押す――という使い方が向いています。片手で持って親指で操作したり、机に置いて押したりすると、反応はあまりよくありません。想定しているユーザー層のモニターテストでは、両手で操作する方が多いという結果が出ています。フィーチャーフォンの「らくらくホン」でも、片手ではなく両手操作の方が多かったので、スマホになった今回も、それを前提で設計しています。

―― 確かに両手で操作するとしっかりと押せるのでラクです。この押し加減はユーザーが好みに調整したりはできないんですか。

今田氏 現状はできません。ただ、これを通常のタッチパネルにすることはできます。タッチパネルに慣れていたら、普通のタッチパネルとして触れるだけで操作するように設定を変えることができます。理想としては、日々使っていく中で押す強さを学習してくれて、自動的に調整するぐらいのことができればいいんですが、そこまでの技術はまだできていないので(笑)。今回はオン/オフのみ搭載しました。

 まずはらくらくタッチパネルに慣れていただき、これだと使いにくいとか違和感を覚えるということであれば、普通のタッチパネルに切り替えて使っていただけます。

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