マルウェアだけではない、モバイルデバイスのリスク――マカフィー 田中氏に聞く(2/2 ページ)
スマートフォンはオープンなプラットフォームであるが故に、ケータイではあまり意識されてこなかったさまざまなセキュリティ上のリスクがある。今注目を集めるスマートフォンのセキュリティについて、マカフィーのCSB事業本部 取締役 常務執行役員 事業本部長、田中辰夫氏に聞いた。
多岐にわたる、サービスの提供方式
―― Android向けのアプリケーションという点では、ソフトバンクモバイルが月額315円で、そしてNTTドコモが無料で自社のユーザーにMcAfee VirusScan Mobile for Androidを提供しています。今後もこういう提供方式は増えていくのでしょうか。
田中氏 PCの世界では、PCメーカーにウイルス対策ソフトをプリインストールして出荷していただくという形がありました。今やウイルス対策ソフトが入っていないPCというのはかなり珍しいくらいになっています。またインターネットサービスプロバイダー(ISP)さんが、回線を契約したユーザーさんに向けて月額課金などでウイルス対策サービスを提供しているというケースもあります。そしてもちろんパッケージで単体販売するものもありました。スマートデバイスの世界でも、こうしたビジネスのやりかたが大きく変わることはないと思っています。我々にとっては、カテゴリーが1つ増えたくらいの認識です。
結局のところ、3GだろうとWi-Fiだろうと有線だろうと、インターネットにつながればその瞬間から感染するリスクがあるという点は同じです。PCメーカーが端末メーカーに、ISPがキャリアになり、媒体は若干変わることもありますが、提供方法やソリューションはまったく同じです。
―― KDDIさんにも導入していただけるとうれしいですよね。
田中氏 そうですね(笑) マカフィーとしては、最終的にお客様がいちいち自分でウイルス対策サービスやソフトを購入しなくても安心して使えるような世界になるのが理想です。本来であれば、セキュリティソフトは目立ってはいけないものです。NTTドコモさんのFOMA端末にもセキュリティスキャンという名称でマカフィーのサービスを提供してきましたが、一生懸命探さないと設定がどこにあるのか分からないような感じで入っていました。これが理想的なんです。
ただ、サービスを提供するためには、サポートも必要になります。そのリソースの対価をどこで得るか、という問題はありますので、最終的にはサービスの利用者さんには見えない形で料金をお支払いいただくことになるかもしれません。ただ、ユーザーさんがなんの心配もなく使える必要は絶対にあると思います。
―― やはりキャリアがセキュリティソリューションを導入してくれるのが一番効果的なのでしょうか?
田中氏 セキュリティをキャリアが担保しないといけないのか、ユーザーが担保しないといけないのか、というのは一概には言えませんが、ユーザーがセキュアな環境を自分で作ってく、と言うところも感じながら、自己負担で対応していく部分は必要だと思います。キャリアさんでなくても、端末メーカーさんから供給するという方法もありますし、サービスの形はさまざまです。現在はキャリア、メーカー、民間でさまざまな取り組みを行っています。ただ、個人が少なくともスマートフォンは危ないんですよ、ということは認識しておく必要があります。
究極的には、キャリアと個人、そして会社(企業)の三位一体でのセキュリティ対策が必要だと考えています。ネットワークの上流でしっかり安心を確保しつつ、エンドユーザーさんの方でもアプリのインストールやフィッシング詐欺などにたいしての備えをしていただく。そしてやはりスマートデバイスには仕事の資料や連絡先なども入ってくることが多いので、会社側にも万が一の時にデータを保護したり、あるいは消したり、紛失した端末を見つけたりするためのソリューションがあるのが理想です。
マカフィーならではの強みとは
―― マカフィーのほかにも多くのセキュリティソフトベンダーがスマートフォン向けのソリューションを出していますが、マカフィーならではの強みというのはどこにあるのでしょうか。
田中氏 一番の違いは今までの実績だと思います。ワールドワイドでおよそ1億5000万台の端末に向けてサービスを提供しています。こうした経験の中で、モバイルに特化したマルウェアの研究をしています。
マカフィーにはGTIというラボがあり、約400人弱の研究員が1億台のサーバのデータギャザリングをして研究しています。GTIを使ったウイルス検出はモバイル版には搭載されていませんが、モバイルでもこうした研究をさらに進めていきます。
Androidでいうと、現在70くらいのウイルスが検出されています。この4月5月でかなりその数は増えています。Androidにはマルウェアのスキャンをするアプリが何種類もありますが、全部のウイルスを検知駆除できるかというとそうではありません。マカフィーはそれをやってきています。
モバイル環境でのウイルス対策ソフトには、PC向けのエンジンやDATファイル(ウイルス定義ファイル)をそのまま移植できるわけではありません。容量も小さくしないといけませんし、消費電力も抑えなくてはいけないからです。この点はNTTドコモさんと7年前から共同でケータイ向けに技術開発を行ってきており、スマートフォン向けにも展開しています。軽くて消費電力が少ない、さらにはウイルス感染した場合もすぐに検知駆除できる技術を盛り込んでいるという点は、多くのセキュリティベンダーの中で差別化できている部分だと思います。
日本特有の優位点という意味では、サポートや技術陣が日本に常駐し、日本人がやっている点が挙げられると思います。パートナー企業さんにたいしての手厚いサポートもしています。
―― モバイル向けに培ってきた経験と高い技術、そしてマルウェアから端末の紛失まで、あらゆるリスクに対してさまざまな形でサポートする体制がマカフィーの強みということですね。
田中氏 そうですね。やはりマルウェアのリスクと端末の紛失というのは大きな2つのリスク要因です。端末の紛失は、ある程度自己管理で何とかできる部分もありますが、ウイルスに関しては知らないうちに感染してしまう恐れがあります。インターネットに常時つながっているというスマートデバイスの特性上、PC以上に知らないうちに感染する可能性が高い。こうなると、「インターネットの先には必ず不正プログラムは存在している」という認識を持って使っていく必要があると思います。
重要なのは、「このアプリは本当に大丈夫かな?」「このサービスは本当に使って平気なのか?」と一瞬でも考えることだと思います。じゃあどうしたら大丈夫なのか、といわれると、マカフィーの製品を使ってください、となりますが(笑)、そうでなくてもやはりアプリのダウンロード時にアクセスする情報などはしっかり確認することが大事でしょう。端末内に入っている個人情報などが流出してしまってからでは遅いからです。
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