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ミニノートがノートPC市場を破壊する――危機を食い止める策は?(2/2 ページ)

» 2009年04月17日 16時18分 公開
[Joe Wilcox,eWEEK]
eWEEK
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 ノートPC市場の利益率の低下を減速させるために、MicrosoftとPCメーカーがすぐに取れる対策は2つある。広告と、ノートPC市場からNetbookを分離することだ。

 Microsoftは既に、「Laptop Hunters」という積極的なマーケティングキャンペーンを展開し、驚くほどうまくいっている。Macファン、PCファンのブログやTwitterで価格をめぐって激しい議論が起きているが、このCMは価値に焦点を当てている。3本のCMのうち2本では、ノートPC購入の予算が1500ドルに設定されている。平均的なノートPCの価格よりも1000ドル近く高い。NPDは1000ドル以上のPCを「プレミアム」というカテゴリーに入れている。米小売市場では、ASPが高いAppleがプレミアムカテゴリーで約80%のシェアを獲得している。

 「Laptop Hunters」CMは景気が後退している中でも予算を多く使える購入者をターゲットとしている。MicrosoftはAppleのコアセグメント――新しいコンピュータに1000ドル以上出す消費者層――で同社に対抗している。もっと多くのPCメーカー、特にNetbookにより価格も利益率も下がっているメーカーがこのセグメントに向かう必要がある。

 Netbook危機のもう1つの解決策はもっと複雑だ。PCメーカーはNetbookをノートPC市場全体に混ぜて、Netbookというカテゴリーを消してしまうか、あるいは――こちらの方がいいやり方だが――NetbookをノートPCとは別のカテゴリーにしてしまわなければならない。後者は、単に世界のNetbook市場が何となくやってきたことを拡大するだけだ。

 ミニノートPCの売り上げは初め欧州で急増した。欧州では多くのNetbookがキャリアの販売奨励金付きで売られている。だが米国では、ほとんどが奨励金なしで販売されている。MicrosoftはPCメーカーや携帯キャリアと協力して、一般的な小売りチャネルで奨励金なしで販売されているモデルよりも安価でハイスペックな奨励金付きのNetbookを提供するべきだ。

 優れた製品は安くはない。奨励金付きならもっと良いものが手ごろな価格になるかもしれない。数週間前にAT&Tが、奨励金なしのiPhoneを599ドル(8Gバイト版)と699ドル(16Gバイト版)で売り始めた。奨励金付きならば199ドルと299ドルだ。AT&Tは間もなく、Nokia E71xをリベート付きで99ドルで販売する。奨励金なしだと359ドルだ。販売奨励金は購入者にとって大きな違いになる。キャリアは販売奨励金を出して、それをデータ通信料で回収することに慣れている。データ通信料は通常、携帯電話よりもコンピュータの方が高い。

 Netbookを完全に奨励金モデルに移行することで、キャリアは顧客を高額なデータ通信プランに囲い込むことができる。MicrosoftとWindows PCメーカーはNetbookの売り上げが減っても利益率が高くなるというメリットがある。顧客は99ドルまたは199ドルで奨励金付きNetbookを購入し、奨励金なしのより高額なモデルよりもスペックの高いマシンを手に入れられる。ノートPC全体のASPはおそらくもっと下がるが、利益率は上がる。

 また、奨励金モデルへと市場をシフトさせることで、MicrosoftとPCメーカーは必然的にNetbookセグメントをノートPCから分離することになる。顧客はキャリアの月額データプランを契約しなければならないからだ。

 Netbookは麻酔薬のようなものだ。安くてよく売れるが利益率は低い。ミニノートPCは不況時にはよく売れる。だから購入者とPCメーカーに好まれる。だがPCメーカーには、「過剰摂取」すれば、ノートPCの利益率を崩壊させる危険性がある。MicrosoftとWindows PCメーカーは心を決めなければならない。その場しのぎを続けるか、事業基盤を改善するために正しいことをするか。選択の余地などない。答えは1つしかない。

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