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» 2010年05月27日 21時14分 UPDATE

「電子書籍のオープンプラットフォーム構築へ」 ソニー、KDDI、凸版、朝日新聞が新会社 iPad、Kindle対応の可能性も

ソニー、KDDI、凸版、朝日新聞が設立する電子書籍新会社は「オープン」が売りだ。参加企業や端末を限定せず、AppleやAmazonの“1社独占プラットフォーム”に対抗。国内各社が安心してコンテンツ提供できる環境を構築する。

[岡田有花,ITmedia]
画像 左から朝日新聞社デジタルビジネス担当の和気靖氏、凸版印刷の前田幸夫経営企画本部長、米Sony Electronicsの野口不二夫上級副社長、KDDIの高橋誠グループ戦略統括本部長

 「電子書籍のオープンプラットフォームを構築したい」――iPad発売を翌日に控えた5月27日、ソニー、KDDI、凸版印刷、朝日新聞社の4社が、電子書籍新会社を7月に設立すると発表した。年内の端末発売・サービス開始を目指す。

 参加企業や端末を限定せずオープンに展開し、米AppleやAmazonの“1社独占プラットフォーム”に対抗する方針。日本国内に拠点を置き、新聞社や出版社と相談しながら進めることで、国内各社が安心してコンテンツ提供できる環境を構築していく。

 新会社は、事業企画会社として7月1日に設立。資本金は1500万円(資本準備金1500万円)で、4社が均等出資する。社長には、携帯電話向け音楽配信を手掛けるレコチョク社長の今野敏博氏が就任。小学館、集英社など出版社や、出版31社から成る日本電子書籍出版社協会(代表理事:講談社の野間省伸副社長)も設立に賛同している(「紙と共存共栄を」――大手出版31社が「電子出版社協会」発足)。

 早期に事業会社に移行し、出版・新聞コンテンツの収集と電子化、管理、販売、配信、プロモーション、必要なシステムの開発などを手掛ける予定。第1弾の配信サービスや端末は、それぞれ年内にリリースしたい考えだ。

 ソニーは欧米で販売している電子書籍端末「Reader」の次期モデルを新サービスに対応させ、年内に発売する計画。“読書ケータイ”「biblio」を発売するなど電子書籍に積極的に取り組んできたKDDIは、新プラットフォームに対応した電子書籍専用端末の発売を検討しているほか、スマートフォンを電子書籍に対応させる方針。コンテンツサービスの構築や、通信インフラ提供も検討する。

「オープン」が売り iPad、Kindle対応の可能性も

 新会社の売りは「オープン」だ。事業企画会社は4社出資で立ち上げるが、参加企業をさらに募った上で、事業会社に移行する。ソニー以外の電機メーカーや朝日以外の新聞社など、4社の競合の参入も歓迎。具体的に話を進めている企業もあるという。出版など関連業界にも広く参加を呼び掛けていく。

 対応フォーマットや端末、電子書籍ストアなども「1つに絞らない」(米Sony Electronicsの野口不二夫上級副社長)という。複数のフォーマット、さまざまなメーカーのハード、多様な電子書籍ストアを使えるようにし、「いつでもどこでも、読みたい電子出版物を手軽に楽しめる機会を提供したい」としている。iPadやKindleに対応する可能性もあるという。

 新聞社や出版社などコンテンツホルダーと話し合いながら、日本に合った電子書籍の姿を探っていく。「特定の1社が独占するプラットフォームは、会社の方針変更に伴い突然ルールが変わることがある。新会社のプラットフォームはそういったことがないよう、コンテンツホルダーと相談しながら“日本らしい”やり方で展開していく」(野口上級副社長)

 「出版社の著作権をしっかり守る」ことも強調。出版社が安心して参加できるプラットフォーム作りに注力し、魅力的なコンテンツを多数そろえたい考えだ。プラットフォームやコンテンツの海外展開も検討する。

「機が熟した」 LIBRIe発売当時との違いは

 「今年は日本の電子書籍ビジネス元年になる」――米Sony Electronicsで北米、欧州の電子書籍事業を統括してきた野口上級副社長は期待する。

画像 LIBRIe

 ソニーは1990年、「データディスクマン」で電子書籍市場を開拓。2004年に電子書籍端末「LIBRIe」(リブリエ)を発売し、出版社などと合弁で設立したパブリッシングリンクで配信サイト「Timebook Town」を展開したが、LIBRIeからは07年に撤退し、Timebook Townも09年に終了している。

 LIBRIe発売当時と今との一番の違いは、「電子書籍の注目度」(野口上級副社長)という。「コンテンツや配信の仕組み、端末の進化、一般の認知向上などで、機が熟した。最初に参入した1990年から約20年かかって電子書籍が本格的な大きなビジネスになりつつある」。北米や欧州で展開してきた「Reader」のノウハウを、日本向けにアレンジして展開していく。

 ただ新会社の具体的な事業内容は見えず、プラットフォームも端末もまだ準備段階。一方で28日に発売されるiPadには多くの出版社が参入を表明、日本の書籍や雑誌を含む多様なコンテンツが流通する見通しだ。「出遅れたのでは」という指摘もあるが、野口上級副社長は「今年は日本で市場が一気に立ち上がる時期。世界の動きに比べて日本の動きは遅い。決して出遅れているとは思っていない」と述べた。

紙とデジタルの相乗効果を

 「4社は異業種だが、日本の文化を担うコンテンツを維持発展させたいという志は同じ」(朝日新聞社デジタルビジネス担当の和気靖氏)――新会社は電子書籍市場の拡大とともに、紙の新聞や雑誌が担ってきた文化の維持・発展や市場拡大も目指す。

 「紙とデジタルを対抗軸ととらえるのではなく、プラスサムにできると思っているし、そうした取り組みにしないといけない」と和気氏は意気込みを述べ、凸版印刷の前田幸夫経営企画本部長も、「リアルな出版物の活性化と電子書籍市場両面で出版社をサポートし、業界を活性化したい」と話す。

 ソニー、KDDIも同じ思いを共有。野口上級副社長は「新聞や出版は文化と結びついている。単にビジネスだけでなく文化的な価値を意識しながら大きな流れを作りたい」と話し、KDDIグループの高橋誠戦略統括本部長も「出版社や新聞社が送り出す価値のあるコンテンツを価値を持ってユーザーに伝えることが大事」と配慮を見せている。

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