アテネのスポーツイベントもすべての競技が終了し、真夏の壮大なお祭り騒ぎも一段落。さて、「全部録る!」を実践した皆さんのHDDの中には、膨大な映像データが蓄積されたことだろう。HDDが一杯になって、どのファイルから消してしまおうかとか考えている人もいるかもしれない。
だが、感動的な映像をあっさり捨ててしまうのはもったいない。あとからDVDで手に入るようなものならまだしも、スポーツ映像やドキュメンタリー映像など、後から入手できないコンテンツは、とても高い価値を秘めているのだ。
とはいえ、そんな大事な映像コレクションといえども、HDDの容量不足という、歴史的視野から見ると些末な問題でPCから追い出さなければならないわけだが、そのまま永遠に消滅させてしまうのではなく、DVDに保存してからHDDから消去すれば、今年の感動は永遠に残しておける。そもそもHDDだっていつ故障するか分からない。やっぱり、大事な映像は信頼できるDVDメディアに保存しておくことにしよう。
映像をDVDに保存するなら、データは、できるだけ余計なものがない状態にしておきたい。「競泳女子800メートル自由形決勝のライブ映像は、きっとそのうち価値が上がるっ!」などなど、保存する映像に対する「その人の入れ込みの度合い」にもよるのだが、まずは、CM部分をすべてカットしたい人は少なくないはず。
とくに、番組が始まる前や終わった後のCMは、カットしておいたほうがあとから再生するときを考えると便利である。スポーツの実況でない場合でも、連続もののドラマやアニメなどでは、オープニングやエンディングをカット編集する場合も多い。
だが、MPEG形式の動画データは、CMカットなどの編集はあまり得意ではない。時間軸方向に圧縮されていて前後のフレームとの依存関係があるため、フレーム単位の編集が難しいのである。それでも「GOP」という数フレームのグループ単位で編集は簡単にできるので、キャプチャーカードにGOP単位の編集ソフトが付属することもある。
だが、本編とCMの境目でGOPの区切りが一致するとは限らない。そのため、CMの一部が微妙に残ってしまったり、本編の一部が切れてしまったりと、DVDに残すにはあまり喜ばしくないカット編集になってしまうのだ。
さらに、ソフトによっては、カット編集を行ったあとに、ファイル全体の再エンコードを行うものもある。その場合、処理にとても長い時間がかかってしまうことになる。わずかのカット編集に長い時間を要することはユーザーにとって心理的な障害になりかねない。
もし、皆さんがきれいな編集映像を手軽に作りたいと思うのなら、MPEGのカット編集に特化したソフトをぜひ使っていただきたい。今回取り上げるカノープスの「MpegCraft2 DVD」もそのようなMPEGファイルのカット編集に特化した仕様になっている。
このシリーズは、 もともとMPEG編集ソフトとして広く支持されてきたMpegCraftがバージョンアップしたもので、機能が従来より強化されたにもかかわらず価格は下がっている。おなじようなソフトは、このほかにもTMPGEncで有名なペガシスから、編集専用ソフトTMPGEnc MPEG Editorが発売されている。どちらも、5000〜6000円程度であるが、気軽、かつ、きれいにMPEGファイルのカット編集ができることを考えると、これから動画編集を始めようと思っている人なら決して高い買い物ではないはずだ。
これらソフトのメイン機能は、フレーム単位のカットや、複数のMPEGファイルの連結など。フレーム単位でカットされた映像は、GOP構造が壊れてしまうため、「必要な部分だけ」が再エンコードされる。従来のファイル全体にたいして再エンコードする場合と比べ、処理に要する時間が大幅に短くなり、2時間の映像から10カ所程度のCMをカットした場合でも、15分弱で編集済みの映像ファイルを出力できてしまう(ただし、Pentium 4/3.6GHz搭載PCを作業に使用した場合)。もし、全体を再エンコードしようとしたら、(PCのスペックにもよるが)実際の録画時間に数割分加えた時間がかかるはずだ。
MpegCraft2 DVDには、簡単なDVDオーサリング機能も搭載されている。そのため、このソフトひとつで、動画編集からDVDの作成まで連続して行えるわけだが、とりもなおさず、これは初心者にも使いやすいことを意味する。ただし、上級者がエフェクトを駆使して本格的なオーサリングをする場合には、MpegCraft2 DVDは動画素材を作るだけにして、別なオーサリング専用ソフトを使うのがお勧めだ。
修正箇所だけの再エンコード機能がMpegCraftの持ち味であるが、一方でファイル全体の再エンコードが必要になるが、DVDの容量に合わせてビットレートを自動で調整し、出力されるデータサイズをDVDに収まるようにする機能サポートしている。ビットレートを落としてでもDVD1枚に収録したい場合には便利である。
修正後の再エンコードに時間がかからないMpegCraft2 DVDは、気軽にCMカットなどの編集を行えるが、そのほかにも、初心者や短時間で労力をかけずに短時間で行いたい編集したいユーザーに便利な「カットすべき場所を探し出すのが容易にできる機能」をもっている。
これは、ファイルを読み込んで、シークバーでカットしたい場所の付近まで大まかに移動したのちに、CTRL+PageUp/PageDownキーの組み合わせでシーンの変わりめを自動で検索する機能だ。この機能を使えば、フレーム単位でCMと本編との境界に移動してくれる。あとはマークを打っていくだけで準備は完了。全編の作業が終了したら、MPEGファイル出力、もしくはDVDへの書き込みを、目的に応じて選べばいい。
ファイルを出力するときの設定では、音声フォーマットを変更したり、音声レベルの調整も可能である。キャプチャーカードの録音レベルが小さすぎる場合、ここで音量を調整すれば修復できる。
カノープスのハードウェアキャプチャーカードを使っているなら、再エンコード処理にカード上のハードウェアエンコーダを利用できる。CPUパワーがあまり高くないPCを使っている場合、その効果は絶大だ。
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