今回は、「早くなったFSB」が焦点であるので、それがどの程度性能に影響しているのかを調べてみた。ただし、3.46GHzと同クロックの800MHz版Pentium 4 XEは存在しないので、クロックを3.2GHzにあわせて調べてみることにした。これは、今回入手した製品がいずれもエンジニアリングサンプル(ES)品でクロック倍率を変更できたおかげで可能になったテストである。実際の製品では、倍率ロックがかかっているためクロック周波数を変更することはできない。
1066MHz FSBの場合は、266.6MHz×12=3199.2≒3.2GHzという設定にし、800MHz FSBの場合は200MHz×16=3200MHz=3.2GHzという設定にした。また、メモリの影響を見るために、いずれもDDR2-533(4-4-4)とDDR2-400(3-3-3)という2つのメモリ設定を試すことにした。従って、
という組み合わせを試した。
結果を見ても分かるように、差が出ないテスト項目と差が出るものがあるテスト項目に分かれる。差が出たのは、SYSmark2004のOffice ProductivityとPCMark04のメモリ系のテストで、逆に差が出なかったのはSYSmark2004のInternet Contents Creationと3DMark05のCPU Score。
とくに8Mバイトデータのメモリへの読み書きテストでは、FSB 1066MHz+DDR2-533のメリットがでていることが分かる。つまり、より大量のデータを読み書きするようになれば、高速なFSBと高速なメモリの効果が出てくるのが分かる。
HTテクノロジやその延長線上にあるデュアルコアプロセッサなどでは、より大容量のデータをメモリに読み書きに行くようになると考えられている。というのも、これまでよりもスレッドの量が増え、メモリへのアクセスが増えるからだ。そうなったときには、おそらくFSB 1066MHz+DDR2の効果はコストに見合ったものになってくるだろう。
ただ、現在のアプリケーションやOSはあまりマルチスレッド環境に最適化されているとは言えない状況であり、そうしたものをベースとしているSYSmarkなどではあまり効果が出てこないと考えるだろうか。
以上のような結果から、Pentium 4 XE/3.46GHzは、下位グレードと位置づけられるはずのPentium 4 560(3.6GHz)に多くのベンチマークの結果で下回るという結果となってしまった。また、ライバルとなるAthlon 64 FX-55と比較してかなり分が悪いのも事実。いくら「クロックで負けている」という事情があるにせよ、この製品が「Extreme」であるかと言われれば、「う〜ん、ちょっとな〜」というのが正直な感想だ。
この原稿を書いている時点では正式な価格は分からないが、現行製品のことを考えればおそらく10万円近くになるだろうし、マザーボードもIntel 925XEベースのものに買い換えになることを考えると、「よっぽどお金が余っていて、六本木ヒルズに住んでいて、野球チームを買うぐらいの気合い?がなければ、ちょっと買えないなぁ」と思う。これだったら、Pentium 4 560を買ったほうが幸せになれるのではというのが、筆者の結論だがどうだろうか。
この製品の意味は、FSB 1066MHzという技術的なチャレンジにあるのだと思う。AMDのHyper Transportのようなクロックを上げやすいシリアルなバスに移行するのではなく、パラレルバスのままデータレートで1GHzを実現するというのは、本来であればかなり難しいはずであり、たいしたものだと思う。
今後、よりスレッドレベルでの実効性を上げていくというのであれば、メモリへのアクセスが増えていくことになるので、システムバスの高速化は避けられない。それに対する一つの答えとしては意味があると言えるのではないだろうか。
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