FlexScan M190(以下、M190)は、EIZOブランドのMultiEdgeシリーズに属する、最大解像度がSXGA(1280×1024ピクセル)の19インチ液晶モニターだ。ホワイトモデルとブラックモデルが用意されており、さらにEIZOダイレクトのみでの販売となるモデルとしてシルバーモデルも用意されている。17インチの「FlexScan M170」もあるが、画面サイズを除いた部分はM190とまったく同じだ。
M190/M170の最大の特徴は、動画再生能力の向上と、内蔵スピーカーの音質アップを図っていること。詳細は後述するが、映像鑑賞やゲームを快適に楽しむために開発された製品なのだ。TVチューナーを備えた現在の標準的なPCなら、テレビ、DVD、多彩な動画ファイル、ゲームなど、映像を映し出すモニターはM190/M170だけでこと足りる。マイルームや書斎、一人暮らしの部屋などに、まさにベストマッチの液晶モニターだ。では細部までじっくりとチェックしていこう。
インタフェースはミニD-Sub15ピンのアナログRGB入力とDVI-Dのデジタル入力の2系統で、それぞれにミニジャックのステレオ音声入力端子を持つ。両端がミニD-Sub15ピンのモニターケーブルと、両端がDVI-Dのモニターケーブル、音声ケーブル×2本が付属するのも嬉しいところだ。
USBハブも2ポートを備える。周辺機器などを接続するダウンストリームポートの位置は、正面に向かって左側だ(PCと接続するアップストリームポートは背面)。画面に隠れてはいるが、背面にあるよりもはるかにUSBケーブルをつなぎやすい。
スタンド部分は、FlexScan S190/S170で好評の「ArcSwing 2」だ。ArcSwing 2は、チルトと高さ調節を備えたスタンドで、高さ調節に独特の機構を採用している。背面にあるチルトの軸を支点として、パネル全体が「弧」を描くように昇降するのだ。チルトとの合わせ技で、思い通りの高さと角度に調整できる。台座とネックが画面で隠れる位置まで下げられ(机の直上)、ノートPCの液晶と同じ感覚で向き合えるのがポイントだ。
画面を見下ろす位置にセッティングすることで、見上げる位置や真正面に設置した場合と比べて、目、首、肩、腕が疲れにくくなる。筆者はFlexScan S170も長時間試用したが、ArcSwing 2は本当に便利で快適なスタンドだ。
動画再生能力の向上では、中間階調の応答速度を高める「オーバードライブ回路(ADCC=Advanced Dynamic Capacitance Compensation)回路」を搭載した。オーバードライブ回路は、多くの液晶テレビで採用されている。輝度変化の立ち上がり時(暗→明)には高い電圧をかけ、立ち下がり時(明→暗)の電圧を低くすることで、中間階調の応答速度を改善する。
M190/M170のオーバードライブ回路は、過去に表示した3フレームの画像をもとに、次のフレームデータを予測して、オーバードライブの強度を最適化している。
一般的に、PC向け液晶モニターのスペックで示される応答速度は、「黒→白」と「白→黒」の輝度変化に要する時間を足したものだ。応答速度が高いと動画やゲームなどで残像感が少なくなるため、最近では16msや12msといった高速応答の製品が人気を博している。
しかし、中間階調から中間階調への応答速度はスペック上の数字よりも遅く、場合によっては数十msまで落ちてしまう。実際の画面表示では、黒や白よりも中間階調のほうが圧倒的に多いので、スペック上の応答速度だけでは判断できないのだ。この点は業界でも問題視しており、中間階調の応答速度を示す統一表記の策定が進んでいる(時期は未定だが、そう遠くない将来に規格化される見込み)。
話を戻すと、M190/M170は「黒→白→黒」の応答速度が16msと速いだけでなく、中間階調(グレーからグレー)でも12msの応答速度を実現している。現時点のPC向け液晶モニターでは、中間階調域の応答速度12msは、最速レベルだろう。オーバードライブの搭載は、「これを待っていた!」という人もきっと多いはず。応答速度と画質の検証は後半で述べたい。
※中間階調域の応答速度12msとは、31、63、95、127、159、191、223階調レベル間の各応答速度の平均値のことを指している(同社)
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