ITmedia キーノートスピーチで2004年はシーゲートにとって大きな1年だったとお聞きしましたが、小林さんの印象はいかがだったでしょうか。
小林氏 2004年度は6月に発表した十数もの新しい商品が随時ユーザーにお届けできるようになり、現在は、大変忙しいというか、活況を呈している状態です。一方で、組織的には社内にシステムインテグレーションエンジニアリング「SIラボ」を開設して、ユーザーの多岐にわたる技術的なリクエストに対応できる体制を準備しました。
ITmedia 台湾ではすでにラボが開設されていて、日本はこれからと聞いていますが?
小林氏 (日本でも)すでに人員は確保されており、場所ももちろん用意してありますが、社内の教育やそのほかの準備事項があるため、正式な(日本ラボの)稼動は1月末から2月頭にかけてと考えています。
ITmedia 従来シーゲイトというとハイエンドに強い、というイメージがありました。しかし、今回はCE用途に限らず、すべてのジャンルにわたってラインアップを拡大しているように思います。この変化にはどのような背景があるのでしょうか?
小林氏 2.5インチHDDでいうと、実はハイエンド製品も業界に先駆けて発表しています。ハイエンドのエンタープライズ向けクラスサーバに使われているファイバーチャネルとかSCSIに関して、シーゲイトは5割程度のシェアを持っています。
しかし、PC向けの製品についても最大シェアを持つまでに至っております。エンタープライズのように半分の市場を征するまではいたっていませんが、それでも3割程度のシェアを確保しています。
それらに加えて2.5インチのノートPC向けHDD、あるいは今まで持っていなかった1インチ製品がすでに数社で採用されることが決定しています。採用していただいていることをまだ正式に発表できないメーカーも相当あるほどで、コンシューマー向けHDDも活気を呈している状況です。
HDDが関連する市場全体のなかで、シーゲイトが対応できるクライアントが今まで75%程度だったのが、2004年に発表したラインアップによって95%以上に、正確には96〜97%までに拡大できました。
ITmedia 顧客のニーズに応えられるものがHDD関連市場の95%までに広がった、と?
小林氏 いわゆるHDDハードウェアのマーケットを100とした場合、理論的にシーゲイトが対応できる製品が今まで75%だったということです。市場でニーズがあるにも関わらずシーゲイトが商品を持っていない、たとえば1インチ、2.5インチのHDDがなかったのです。それが2004年に発表した製品のおかげで95%以上に対応できるようになったのです。
ITmedia この20%増やしたのがCEの市場と考えてよろしいのでしょうか?
小林氏 いや、必ずしもそうではありません。新しい商品を発表する以前は、ノートPC向けHDDのラインアップも持っていませんでした。
ITmedia ノートPC向けHDDはシーゲイトでも過去に扱っていたと思いますが?
小林氏 そのときはプラッタが一枚の製品だったので、大容量HDDの需要に応えられなかったのです。
ITmedia 今回開設されるSIラボのメインターゲットはCE市場ですか?
小林氏 CEとノートPC市場をにらんでおりますが、最大のターゲットはCE市場向けになると思います。
ITmedia それはCE市場の顧客がHDDに慣れていないため?
小林氏 それもあります。ただ、いわゆるエンタープライズ向け製品やコンシューマーのデスクトップ向け製品においても、シーゲイトはさまざまなコンサルテーションを行っていましたが、日本にはその機能がありませんでした。そういった事情とともに、日本における特殊な市場性ということも加味して、日本にSIラボを開設した、というわけです。
ITmedia 「幅広いニーズに応える」という意思決定はどのようになされたのですか。
小林氏 HDD業界においてこれからもリーダーの地位を確立していくため、つまり『HDDならシーゲイトに任せればよい』という状況を作るためですね。
ITmedia 幅広い製品を作り出しているベースとなっているのが、シーゲイトの開発研究能力にあると思います。現在、市場が存在しながらもシーゲイトが製品を投入していない0.85インチや1.8インチHDDもニーズしだいで参入が可能でしょうか?
小林氏 シーゲイトでは、研究開発の投資として売り上げのほぼ10%を費やしています。これは、いくつかのHDDメーカーにおける研究開発の投資よりも多い額になります。このように潤沢な予算を投じて研究開発を行っており、当然0.85インチ、1.8インチHDDに関しても検討はしています。ただ、開発できるということと、市場へ製品を投入するというのは別の話です。マーケティングとか将来性など、ビジネスとしての要因を考えなければなりません。
ITmedia 日本と世界ではHDDにたいする要求においてどのような違いがありますか?
小林氏 具体的な比率に関しては答えられないのですが、容量への要求で地域差があります。DVRに限った話ではありませんが、日本では大容量のものを好む傾向があります。
ITmedia 2004年からシーゲイトはすべての内蔵用HDDの保障期間を5年に延長しましたが、その背景は?
小林氏 シーゲイトのHDDは日増しに信頼性を向上させており、自信を持って5年保証にできると確信できたということです。もちろん5年保証を打ち出すことによって、ユーザーの安心感が高まるということもありますし、それが競合他社との差別化になるといったような副次的効果も出てきます。
ITmedia 5年保証に伴って日本でのサービス体制が変わったと聞きましたが?
小林氏 私どもとしてはテクニカルサポートのダイレクトラインというものを用意して、エンドユーザーへのサポートを行っております。ここでは返品だけでなく、HDDを使うためのサポートも行っています。
製品の信頼性が増していれば、保障期間を長くしても壊れなければ返品に対応しなくてすみます。逆によく故障して返品されるような信頼性の低い製品ではメーカーとして5年保証は打ち出せません。いかにシーゲイトが自社製品の信頼性に自信を持っているか、5年保証を実現させたことからも考えてみてください。
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