中国の大地で輝くFlash文化山谷剛史の「アジアン・アイティー」(1/2 ページ)

» 2005年06月07日 12時03分 公開
[山谷剛史,ITmedia]

フリーズするカラオケマシン

 いきなり私的な話で恐縮だが、先日、中国のカラオケ屋で中国人の知人がパーティを行った。1部屋4時間で日本円にして1000円強といったところ。

 小部屋に入ると、日本でよく見る「曲のタイトル本」が見当たらない。その部屋には、歌詞ムービーが映るテレビとは別に小さいモニターがあり、グラフィカルなインタフェースが表示されている。そのモニターに向かってリモコンを操作して歌いたい曲を探し、その曲入力装置に連動して大型のテレビに歌詞の映像が流れ始める。

中国のカラオケ!左は歌詞ムービー用ディスプレイ。右はリクエスト受付ディスプレイ

リクエスト受付ディスプレイはこんなインタフェースになっている。裏ではWindowsが動いているのだ

 時間が経つにつれパーティは盛り上がり、カラオケの常として、曲入力合戦が白熱する。っと、そのとき、入力装置が突然固まってシステムが落ちた、と思った次の瞬間、見覚えのある「BIOS画面」が現れたのだ。このとき、筆者はこの「曲入力装置」が実は「PC」だったことに初めて気がついたのである。、

 店員と客一同が不正シャットダウン後の起動時に行われるスキャンディスクをひたすら待つ「無音&お寒い空気」の中、カラオケショップにもWindowsがタダ同然で入ってしまう社会ゆえ、このシステムが存在するのか、と思いを巡らせてしまった。

 しかし、それで驚いたのはそれだけではなかった。パーティに参加した中国人が皆熱唱した「東北人」の歌詞画面は明らかにFlashで作られたもので、かつ、それがアマチュアの「フラッシュ職人」が作った歌と歌詞画面だったのだ(これは、日本でいうところの“掲示板に投稿されたFlashアニメ作品”がカラオケで歌われている状態に等しい)。

 ちなみに、パーティの参加者にヘビーPCユーザーはいない。それにも関わらず、一個人が私的に作成したFlashアニメがカラオケで歌われ、一般的な中国の若者に認知されるまで浸透している。こんなめちゃくちゃ一般世間に浸透している「中国のFlash事情」から、今回は、中国におけるデジタルコンテンツの需要と供給を考察してみたい。

海賊版蔓延が招いた新たなカルチャー

 さて、Webの世界に目を向けると、中国製Flashアニメが最近一層世界に浸透しているように感じる。各ポータルサイトで「これでもか」とFlash広告を使うことはもとより、中国の最も有名なサイトのひとつ「Tom」をはじめとして、多くのポータルサイトでFlash専用ページを設けている。

 また、最新のFlash動画を紹介するサイトも数多くある。中国のネット媒体や紙媒体のPC誌でFlash作品コンクールを募ることもよく見かける。最近中国全土で起こった大規模な反日デモは記憶に新しいが、反日をテーマにしたFlashアニメも数多く存在する。

 ともかく、その莫大なFlashを取り扱うWebページを見たかったり、海の先にある国の人々のFlash作品のレベルはいかほどかと思ったりしたらまず、中国の検索エンジンの百度か、Googleの簡体字中国語ページ検索でFlashと入力してみるといい。

 Flashが使われる場面はWebだけでもなければ、前述のカラオケ屋だけでもない。街の中心にある巨大スクリーンや、路線バスの中にある乗客向けテレビモニター広告を見れば、少なからずFlashで作られた広告を少なからず見る。Flashは街中の巨大スクリーンまでジャックしたのだ。

 Flash普及の勢いはとどまらず、中国のメーカーは自国向けにFlashファイル再生プレーヤーまで作ってしまった。「愛国者」というメーカーの「波波Flash Player MP-P800」がそれだ。Flashで作成した動画やゲームを楽しめるのがウリというコンセプトが、いかにFlashが中国で認知され一般に浸透しているかを物語っている。

 Web上のものにしろ街中で見る作品にしろ、作者ごとに画風の違いこそあれ、日本製Flashアニメが「あぁ、これは日本の漫画だね」と思えるように、中国でも「なるほど、これは中国らしい」というアニメの画風がすでに中国で見るFlash作品にも認められる。

 かくして、マクロメディアのソフトは、いずれも中国で人気をはくしているが、その中でもFlashは突出している。書店のコンピュータコーナーにはFlashムービーのハウツー本がどっさりおいてあるし、PC雑誌には初心者向けの記事としてFlash作成方法が頻繁に掲載されている。

 ところが、解説書籍が氾濫する一方で筆者はソフト屋の店頭でFlashの正規版パッケージを見たことがない。店頭で見る限り、WindowsやMicrosoft Office、アンチウイルスソフトの正規版が(たまに)あっても、マクロメディア製(そして同じくユーザーが多いアドビ製品)の正規版はまず見ることはないだろう。

 正規版販売量に対する解説本の量たるや、不釣合いも甚だしい。結局のところ、その解説本人気を裏付けるかのように街中どこでも見かけるソフト屋でAdobe製品の海賊版CDがいかにも人目につきそうな一等地におかれている。

手軽に作れるMP3プレーヤーが爆発的に普及

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