日本メーカーが先導するノートPCのワイド化――さらに大型へ

» 2005年10月25日 14時59分 公開
[John G. Spooner,eWEEK]
eWEEK

 ノートPC用液晶パネルの大型化とワイド化が進むなか、ノートPCとテレビが融合する日もすぐそこまで近づいているようだ。

 ワイドアスペクト比を採用した15.4型などの液晶画面は既に数年前から、一般ユーザー、企業ユーザー向けの各種ノートPCラインに採用されている。だが調査会社IDCの新たなリポートによれば、最近はさらにワイドな液晶パネルが数の面でもサイズの面でも増加しており、2006年半ばには、ワイド画面のノートPCがスタンダード画面のノートPCの出荷台数を上回り始める見通しという。

 ワイド画面のノートPCは16:9のアスペクト比により、文書やウィンドウを隣り同士に並べることでより多くのデータを画面に表示したり、DVD映画を上下の黒い帯なしで表示したりできる。そうしたワイド画面のノートPCの大半は、14型、15.4型、17型など、慣れ親しんだサイズで提供されることになるもよう。ただp、一部のモデルはさらに大型の画面で提供され、ノートPCの特徴である「携帯性」の限界を押し広げることになりそうだ。

 このリポートを作成したIDCのアナリスト、リチャード・シム氏はZiff Davis Internet Newsの取材に応え、次のように語っている。「すべてがワイド画面に向かっている。なぜなら、それがパネルメーカーの望みであり、ノートPCメーカーの望みでもあるだからだ。パネルメーカーはワイド画面により、基になるマザーガラス(工場で個々のパネルをカットする際の基になる大きな平板)をフルに活用でき、ノートPCメーカーはワイド画面にすれば割高で販売できる」

 IDCは、低価格モデルの15型ディスプレイも含め、最初はある程度の抵抗が予想されるものの、2009年までにはノートPCの80%以上がワイド画面ディスプレイを搭載することになると予測している。また、それまでノートPCの出荷台数も増加を続け、今年の6250万台から2009年には1億1460万台に拡大する見通しという。

 この移行においては、消費者や企業ユーザーの購買傾向も一翼を担うことになる。多くの一般ユーザーは、エンターテインメントの観点からワイド画面モデルを選択している。企業ユーザーによる採用は遅れるかもしれないが、企業ではシステムをある時期に一斉に標準化する傾向があるため、いずれは採用が急増することが予想される。価格の割増分は比較的小さく、企業ユーザーには、複数の文書を横に並べて見やすくできるなど、幾つか追加のメリットもある。

 大半の企業ユーザーには14型か15.4型のワイド画面モデルを支給され、エンジニアや会計係など、グラフィック機能や表計算のためのスペースを必要とする従業員には17型のワイド画面モデルが支給されることになりそうだ。出張の多い従業員には、12型ワイド画面の小さめのモデルが提供されることになるだろう。

 メーカーは既に企業ユーザーや一般ユーザー向けに、14型、15.4型、17型のワイド画面ノートPCを提供している。Dell、Hewlett-Packard(HP)、Gateway、Lenovo Groupなどの大手各社が各種のノートPCラインでワイド画面を提供し、Apple Computerも最新のPowerBookラインで15.2型と17型のワイド画面を提供している。

 そして各社は、企業ユーザーも含め、顧客がよりワイドな画面に飛びついていることを認識している。

 Gatewayの製品マーケティング担当副社長ウィリアム・ディール氏は先ごろ、Ziff Davis Internet Newsの取材に応え、次のように語っている。「最近の製品刷新の後、当社のプロフェッショナルユーザーの80%がほとんどすぐにワイド画面に移行した。当社は既に、ワイド画面をメインに出荷している。ユーザーもワイド画面を使いたがっている」

 だが近い将来、さらに大型のパネルが登場し、ノートPCをベースとしながらも、テレビのような要素を備えた新世代の可搬型PCが生まれることになるかもしれない。

 Samsung ElectronicsやLG.Philipsなどの液晶パネルメーカーは生産効率の向上に向けて、それぞれ19型と20型のノートPC用画面を準備している。これにより、可搬型PCの新しい波が押し寄せることになるかもしれない、とシム氏。

 こうした可搬型PCは2006年の半ばから後半にかけて登場すると見られているが、ブリーフケースやバックパックに入れて持ち歩くには重過ぎて具合が悪いことになりそうだ。そのため、こうした可搬型PCはTVチューナーやデジタルビデオレコーダー機能などを搭載し、マルチメディア機能満載のデスクトップの代替選択肢として販売されることになりそうだ。

 シム氏によれば、ソニーや東芝など、コンシューマーをターゲットにしたメーカーがまず最初にこうした可搬型PCを提供することになる見通し。ただし、最初は小規模な展開となる見込みという。

 ソニーは既に、たとえばVAIO Wで大型液晶画面を折り畳み式キーボードと融合させたり、VAIO type VのデスクトップでテレビのようなPCというコンセプトを実験している。

 「このような画面サイズは理にかなわないと考えるかもしれないが、実際、こうした分野はノートPCにとって格好のセグメントだ。日本や米国の大都市など、居住スペースが限られている地域では重宝がられるだろう」とシム氏。

 現行の大型画面のノートPCは、米国の小売市場などでは、比較的少数の顧客を確保するに留まっている。だが、こうした製品は価格が高めな分、PCメーカーにとっては重要な製品だ。

 北米市場の小売販売動向を追跡しているNPD Groupによれば、今年9月、17型画面のノートPCは出荷台数ではノートPC全体の約6%を占めたが、売上高では全体の9.3%を占めている。同社のデータによれば、17型ノートPCの平均価格は1723ドルと、ノートPCの平均販売価格の1116ドルを大幅に上回っている。

 だが20型画面のノートPCを単に大型画面のノートPCとして販売するのでは消費者の共感は得られないだろう、とNPDのアナリスト、スティーブ・ベイカー氏は指摘している。

 「それよりも、家中のいろいろな場所でコンテンツを表示できる機能を強調する方が、一般ユーザーにとって、ある程度は効果的だろう」と同氏。

 「ポータブルというコンセプトは、小さいフォームファクターのデスクトップに対する強みとなる。家の各所でコンテンツを表示できるということであれば、寝室に置く19型テレビがノートPCをベースにしてはいけない理由などないはずだ。この件については、家の中にもう1つテレビ画面が増えると考えるのが一番だ」とベイカー氏は語っている。

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