調査当日の金曜日は、台風から変化した熱帯低気圧の影響を受けて、一日中ひどい荒天となった。平日ということもあり、普通なら人通りが極端に少なくなるが、同日にMSIのグラフィックスカード「NX7900GTO-T2D512E」が各ショップで発売されたため、朝からアキバに詰めかける熱心なユーザーが街を賑わせていた。
NX7900GTO-T2D512Eは、NVIDIAの未発表GPU「GeForce 7900 GTO」を搭載するPCI-Express x16接続のグラフィックスカードだ。MSIの創立20周年を記念した特別モデルで、噂によると国内にわずか200枚しか出回らないという。
GeForce 7900 GTOはコアクロックが650MHzで、メモリクロックが1.32GHz。DDR2メモリを512Mバイト搭載しており、メモリクロック以外のスペックはGeForce 7900 GTXと同等になっている。リファレンスカードとして見ても、Dual-Link対応のDVI-I端子を2基備えている点も同じだ。
ところが、価格には大きな差がある。GeForce 7900 GTX搭載カードが7万円前後で出回っているのに対し、NX7900GTO-T2D512Eは半額の3万5000円前後。ハイミドルの価格でハイエンドクラスのGPUが手に入るとあって、熱心なユーザーがごく少数の在庫を探して大雨のアキバを駆け回っていたというわけだ。パソコンショップ・アークではやや多めの在庫を確認したが、約10分の取材中にすべて売り切れてしまった。その後も詰めかけるユーザーがいたが、売り切れと分かるとスグに雨の路上に消えていった。
GPUメーカーから未発表GPU搭載カードが登場すること自体は、それほどめずらしくない。グラフィックスカードベンダーは、次世代GPUを搭載するカードが製造される前後に旧世代のチップを出荷しきるため、正規の仕様にはわずかに性能が足りないGPUに新たな名称を付けて利用する手段をしばしば用いる。GeForce 7900 GTOに関しても、その理由で登場したと考えるショップもあったが、多勢の意見は違っていた。
パソコンショップ・アークは「非常にレアなケースですが、MSIが創立20周年を記念して話題性重視、つまりは採算度外視で製造したようです。まだ7900シリーズが全盛の時期に堂々とリリースしたことから、NVIDIAにも話を付けていると考えられます」と話す。また、某ショップからは「MSIが大手PCメーカーにOEM供給している特別仕様のカードを、数量限定で自社ブランドとして流通させたようですね。メモリクロックもBIOSレベルで抑えているので、ハードウェアはGeForce 7900 GTX搭載カードとまったく同じはずです」という話も聞いた。
ユーザーにとってはまたとないチャンスといえるが、ショップはあまり良い顔をしない。「話題性だけ高くても、販売できるモノが少なすぎます。ショップにとっての旨みがないばかりか、通常のグラフィックスカードが煽りを受けるのです。正直、早く売り切れて消えてくれと思いますね」(某ショップ)との愚痴もこぼれる。
ほとんどのショップが金曜日の時点で売り切っていたが、T-ZONE.PC DIY SHOPは1日の販売本数を決めて、土曜日から月曜日の3日間に販売する。まだまだチャンスはあるというわけだ。
製品: | MSI「NX7900GTO-T2D512E」 |
入荷ショップ: | |
T-ZONE.PC DIY SHOP | 3万5500円 |
TSUKUMO eX. | 3万4780円(売り切れ) |
パソコンショップ・アーク | 3万4800円(売り切れ) |
高速電脳 | 3万5480円(売り切れ) |
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.