事件が起きた後――アキバ電気街の「リアル」

» 2008年06月24日 12時00分 公開
[古田雄介,ITmedia]
事件があった交差点の様子。6月20日撮影

 6月8日に秋葉原で連続殺傷事件が起きた。事件現場の交差点付近には、すぐに献花台が設置され、6月13日の時点で3000束以上が手向けられた。事件から約2週間が経った6月20日には、献花台の場所は旧日通ビル脇に移されていたが、今もなお訪問者は途絶えていない。

 警察による警戒態勢は現在も継続しており、事件現場付近を中心に、末広町駅付近に及ぶまで多数の警察官が巡回している。6月13日に比べて、20日に見かけた警察官の人数は半分程度に減った印象だ。それでも1回の取材で1〜2回見かける程度だった事件前からすると、確実に増員していることが分かる。

 テレビカメラを抱えた報道陣の姿も、献花台周辺で複数見られた。ただしこちらも、(歩行者天国があった)日曜日を除き、日が経つにつれて徐々に少なくなっている。

 PCパーツショップで働く男性は「(店舗のユニホームである)エプロンには梱包を解くためにハサミを入れているんですが、今はそのまま外に出るのは御法度になっています。事件直後より警察官が少なくなっているといっても、定期的に巡回して職務質問していますから」と語っており、警戒態勢の影響を否定しない。

 ただし、客の入りは普段と変わらず、店舗スタッフが路上に出て大声で呼び込みを行う姿は中央通りでも見られた。また、平日ながら混雑する往来では、外国人観光客が巡回中の警察官に道をたずねる光景もあった。防犯グッズなどを扱う店舗の店長は「(商品の取り扱いについて)何か注意や指示は受けていません。売れ行きも売れる商品のジャンルも普段と変わらないですね」と話す。

事件があった交差点付近。6月13日撮影(写真=左)。6月13日。中央通りの様子(写真=中央)。6月13日。PCパーツショップ密集地の様子(写真=右)

 なお、日曜日と祝日に行われていた中央通りの歩行者天国は、東京都公安委員会の決定により、6月15日以降、当面の間は中止となっている。このため、路上パフォーマーでにぎわう中央通りの光景はしばらく見られない状況になっているが、悲嘆する声は電気街の中でも多勢ではない様子だ。

 PCパーツショップの紙袋を提げて中央通りを歩いていた男性は「(大学の)講義が終わったので、ちょっと立ち寄りました。日曜日に来ることもありますが、路上パフォーマーやメイドには興味がないので、(歩行者天国の中止は)関係ないですね」と語る。同じ質問を複数の回遊者に聞いたところ、歩行者天国の復活を期待する声も一部ではあったものの、上記の男性と同様の意見が大半だった。

 このような状況から、あるPCパーツショップのベテラン店員氏はこう漏らした。「ウチの店舗は別に普段と何も変わらないですけどね。なんというか、どんな視点からにせよ、アキバが世間から注目を集めるたびに、偏見が強くなっている気がします。事件は本当に悲惨で、ぼくなんかがコメントしていい立場ではありません。でも、アキバという街が世間の興味から早く外れてほしいという気持ちは、正直あります」

歩行者天国の当面禁止を知らせる立て看。JR秋葉原駅電気街口付近に立てられている(写真=左)。事件現場付近に設置された献花台。6月20日撮影(写真=中央)。6月20日の中央通りの様子(写真=右)

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