MSIのオーバークロック世界大会で“水没PC”とスリリングなゲームに酔う(1/3 ページ)

» 2009年08月31日 17時00分 公開
[長浜和也,ITmedia]

米国欧州アジアは当然、遠くは南アフリカからも

 2009年8月29日、北京でMSIが主催するオーバークロック世界大会「Master Overclocking Arena 2009」(MOA 2009)が開かれた。この大会は世界規模のオーバークロック大会で、北京の決戦には、それぞれの国内予選で上位にランキングされて、北米、南米、アジア、ヨーロッパ、アフリカなどの地域予選を勝ち抜いた20チームが参戦した。

 MOA 2009の戦いは、早くも選手宿舎(なんと、北京オリンピックで選手村として使われた施設が、MOA 2009の選手宿舎として使われていたのだ)で大会会場に向かうバスに乗り込む前から始まっていた。ホテルロビーに集まったチームは、国ごとにたくさん用意された紙筒を引く。その紙筒開くとそこには番号が記されていた。この番号の意味するところは何か?

MOA2009の大会コーディネーターを務めるノルウェーの有名オーバークロッカーが国ごとにチーム代表者を呼び出して(写真=左)、呼ばれた代表者は数字が隠された紙筒を取る。「13」を引いて盛り上がるしかないっ、といった感じのギリシャのHwbox.gr(写真=右)

 全チームに番号が割り当てられたところで参加者はMOA 2009会場となる「Shangri-la Hotel Beijing」に移動する。そこで待っているのが、番号が振られたPCパーツセットだ。MOA 2009では、オーバークロックバトルで使うパーツにMSIが用意した個体を使用する。MSIから配られるのはCPUとマザーボード、メモリ、グラフィックスカード、HDD、電源ユニット。このうち、ベンチマークテストの結果に大きく影響するCPU、マザーボード、グラフィックスカード、メモリに関しては、番号で決めれたセットが各チームに割り当てられる。

 今回、MSIが用意したのは、以下の製品だ。

パーツ構成
CPU Core i7-975 Extreme
マザーボード Eclipse SLI
グラフィックスカード N275GTX Lightning
メモリ OCZ Blade DDR3-2133 Triple Channel Memory Kit
電源ユニット Antec CP-1000
HDD WD RE3(750Gバイト、Serial ATA)

番号で引き当てたキットをピックアップする各国チーム(写真=左)。CPUやGPUの個体差がどのように分布しているか、それはやってみないと分からない。だから、1番くじを当てたから有利かというとそういうことでもない

 MOA 2009では、前半戦と後半戦に分かれており、それぞれの結果にウェイト配分した総合スコアでランキングを競うことになる。前半戦ではベンチマークテスト「wPrime 1024M」を使ってシステム構築も含めてた2時間をかけて測定し、後半戦では3時間の制限時間に3DMark VantageのProfessional Scoreでたたき出した最も高いスコアが登録される。MOA 2009では、それぞれの結果にwPrime 1024M=35%、3DMark Vantage=65%のウェイトをかけて加算した値を総合スコアとして認定する。

 MOA 2009のレギュレーションでは、オーバークロックに使うTweakツールも規定されている。オーバークロック設定に使えるユーティリティも各チーム共通で「Set FSB 2.2.125.92」「CPU-Z 1.52」「GPU-Z 0.3.4」「Riva Tuner beta version」「MemSet4.0」「MSI Lightning Afterburner」「MSI Overclocking Center」が用意され、OSとして指定されたWindows VistaとドライバGeForce Driver 190.3BとともにHDDに導入されていた。

オーバークロックは「工作技術」の戦いだ

 8時30分にパーツを受け取り、いよいよオーバークロック大会が始まった……、とはいえ、実際に観客を入れて正式に開幕するのは午後からだ。普通、オーバークロック大会というと、ギュンギュンにクロック設定を引き上げたシステムに液体窒素をドバドバと注入し、立ち上る白い煙の中でベンチマークテストを走らせるという光景をイメージするが、MOA 2009では、まず、「システムのくみ上げ」からバトルが始まる。オーバークロッカーたちは、自分で「開発」したクーラーユニットをシステムに装着し、液体窒素で発生する結露からパーツを守るための「養生」を施さなげればならない。MOA 2009のレギュレーションでソフトウェアの条件がほぼ共通なため、ある意味、このようなハードウェアの「工作」部分がMOA 2009の真のバトルといってもいいだろう。

 というわけで、各国チームはマザーボードやグラフィックスカードに取り付けられたクーラーユニットを取り外しにかかる。エタノールをふりかけ、チップにこびりついているグリスを“ドライバーの先端”でガリガリと削り落としたら、基板に結露防止の養生を施す。基板の養生でよく使われるのは、扱いが容易な厚手のキッチンペーパーやティッシュペーパーをCPUソケットやメモリスロット、電源供給回路の周辺にぎっしりとしきつめることだが、MOA 2009では、多くのチームで“粘土”で基板を覆う手法を使っていた。

受け取ったパーツを開いてシステム構築を始める各国チーム(写真=左)。まずは、オリジナルのクーラーユニットを取り外し、こびりついたグリスをカリカリと除去するところからオーバークロックの戦いは始まった(写真=右)

チップを結露から守る養生で目立っていたのが“粘土”だ(写真=左)。基板全面に粘土を盛り付けるチームもいた(写真=右)

 一方、CPUソケットにメモリスロット、拡張スロット、電源コネクタ、ヘッダピンにマスキングテープで目張りし、基板全面にプラスチックラッカーを吹き付けて、チップそのものをコーティングしてしまうチームも多く見られたが、その“究極”として注目されたのが、米国から勝ち上がってきた「Team OI/IE」の“水没PC”だ。水を入れた桶の中にコーティングしたPCシステムを“ザブン”と入れてしまう荒業に、MOA 2009に参戦した世界トップクラスのオーバークロッカーたちも「こりゃ、グレートだね」と感嘆の声を上げていた。

ソケットやスロットなどをマスキングして……(写真=左)、シリコンコーティングスプレーで基板全体をカバーしてしまう(写真=右)

基板全体をコーティングした極端な例が、米国のTeam IOOEの「水没PC」だ

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