BookLiveがWiMAX内蔵電子書籍端末「BookLive!Reader Lideo」発表――その狙い

» 2012年11月07日 17時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]
Lideoの読みは「リディオ」

 凸版グループで電子書店「BookLive!」を運営するBookLiveは11月7日、都内で会見を行い、通信料不要のWiMAXを搭載した6インチの電子書籍リーダー端末「BookLive!Reader Lideo」(以下Lideo)を正式発表した。価格は8480円で、予約受付は三省堂書店で11月8日から、BookLive!で11月19日から。発売は12月10日。

 Lideoは、7月に開催された国際電子出版EXPOで参考展示されていたもの。電子ペーパーベースの6インチ端末で、サイズは110×165×9.4ミリ、重さは170グラム、画面解像度は600×800ドット。内蔵メモリは4Gバイトで、内蔵辞書にはスーパー大辞林3.0、ウィズダム英和辞典第2版を用意した。赤外線センサー方式のタッチパネルを採用するが、主要な機能(本棚、書店、メニュー、戻る、文字)はハードウェアボタンでも用意している。端末はNEC製。BookLiveは3月に、三井物産、日本政策投資銀行、東芝、NECとの資本提携を発表しており、NECが端末の製造にかかわると早くからみられていた。

 スペック上の最大の特徴は、WiMAX通信機能を搭載する点(IEEE802.11b/g/n準拠の無線LANも搭載)。WiMAXはUQコミュニケーションズが提供しており、事前登録や月額料金、通信料の負担などなしに下り最大40Mbpsの高速環境を利用できる(通信料はBookLiveが負担)。WiMAX通信はBookLive!のサーバとのみ通信することが想定されており、インターネットブラウザなどで汎用的に利用することはできない(端末にはブラウザの機能は存在しなかった)。あくまで、電子書籍の購入やダウンロードを快適に行うためのものだ。

 Wi-Fi以外の通信機能を備える電子書籍専用リーダー端末としては、例えばAmazonの「Kindle Paperwhite 3G」、ソニーの「PRS-G1」などがあるが、これらはいずれも3G通信。WiMAXを搭載した電子書籍リーダーはLideoが初となる。BookLiveの設立にはインテルが出資していたことを考えれば、WiMAXがLideoに搭載された背景もうかがえるが、LTEなどの登場によりWiMAXが新たな適用領域を模索している様子も見て取れる。

 内蔵メモリは4Gバイトで、microSDHCスロットなどの拡張スロットは搭載されない。競合端末が内蔵メモリを2Gバイト程度にそろえている中、端末にも十分なメモリを確保しつう、クラウド上に保存されている購入書籍を必要に応じてWiMAXで高速にダウンロードできることを考えれば、一般的な利用用途でこの点がネックになることはないだろう。なお、BookLive!のコンテンツラインアップは現在約10万冊と国内最大級。

実際にはほとんど意識することはないが、内部的にはマルチビューワとなっており、XMDF、.book、EPUBといった各種フォーマットに対応し、操作系も統一されている

 BookLive代表取締役社長の淡野正氏は、「“本”として売りたいので量販店などでは(Lideoを)販売しない」と説明。そのメインターゲットは40〜60代のいわゆるシニア層だ。

 同社調査では、現在の国内の電子書籍サービスは、10〜30代はスマートフォン、20〜50代はタブレットでの利用が多いが、多読であるといわれるシニア層は、電子機器の利用を苦手とし、故に電子書籍の利用率も低いことから、「箱から取り出してすぐに使える」ことを念頭に置いて開発された端末を提供することで、そうした層に電子書籍の利用も訴求したいという。実際、Lideoでは端末の電源を入れ、誕生日、性別の入力とパスワードのみ設定すれば利用可能になるという(電子書籍の購入にはクレジットカード情報の入力も必要)。ハードウェアボタンをあえて採用しているのも、こうした理由によるものだ。

 「スペックではなく誰もが簡単に読書を楽しめることを考えて端末を開発した。何でもできる汎用端末ではなく専用端末で読書したいというのが自分の生活から考えても適していると思う」(NECの國尾武光常務)

 「“本”として売りたい」という言葉から分かるように、Lideoは三省堂書店の店頭でも販売される。BookLiveと三省堂書店は2011年12月に事業提携を発表、その後、BookLive!が取り扱う電子書籍コンテンツを三省堂書店の店頭で購入できるようにするなどしている。

 三省堂書店の亀井忠雄社長は、「電子書籍という新たな読書スタイルが登場しても長年紙に親しんだ方が一気に電子書籍に移行するとは考えにくく、それは徐々に起こるのだと考えている。ただ、書店も今までと同じでは生き残れないと考えている」と話し、書店という業態の次の姿を積極的に志向していく考えを示した。

 現在市場にはさまざまな電子書籍リーダーやタブレットが発表され、際限なき値下げ競争に陥りつつある。実際、この日もAmazonが発売前にもかかわらずKindle Paperwhiteを7980円に値下げするなどしている。

 「Amazonを意識していないといえば嘘になるが、真に意識すべきは“読者”」と淡野氏。続けて、Amazonのようにグローバルに展開しているプレイヤーが日本の読者に合わせてサービスや端末を作り込むだろうかとし、日本のユーザーに合った快適性能を粛々と追求していくことが最終的に読者に支持される道であるという方針を示した。

 そうした競争の中で、ターゲットをしっかりと定めて、そこに訴求していくというアプローチは有効だ。凸版印刷専務取締役の大湊満氏は、「読書の楽しみをいつまでも味わいたい」と、自らの年代が読書に感じている思いを吐露。BookLiveが三省堂書店とともに、紙か電子かというミクロな議論ではなく、読書の意義を伝えていこうとする取り組みは、長期的にみて支持を得るだろう。

左から凸版印刷の大湊 満専務取締役、三省堂書店の亀井忠雄代表取締役社長、BookLiveの淡野 正代表取締役社長、UQコミュニケーションズの片岡浩一取締役執行役員副社長、日本電気の國尾武光執行役員常務

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