WQHD液晶ディスプレイの定番になるか――iiyama「ProLite XB2776QS」2560×1440ドットが手の届く価格へ

» 2013年03月30日 00時00分 公開
[後藤治(撮影:矢野渉),ITmedia]

iiyamaから27型WQHD液晶ディスプレイ「ProLite XB2776QS」が登場

iiyamaブランドの27型WQHD液晶ディスプレイ「ProLite XB2776QS」

 液晶ディスプレイの高画素密度化が進み、今や7万円前後のエントリー向けノートPCでもフルHD表示に対応したモデルは珍しくなくなった。スマートフォンやタブレットは200ppiを軽く超える高精細な表示が当たり前になり、写真や動画などのデジタルコンテンツも今後ますます高解像度になっていくだろう。

 デスクトップ向けの液晶ディスプレイも、21.5〜24型ワイドでフルHD表示が可能な製品は1万円台から購入できる状況だが、ノートPCやタブレットの表示に目が慣れてしまった昨今の環境では、WUXGA(1920×1200ドット)程度の解像度だと、「たいして変わらないなぁ」という印象さえ受けてしまう。

 「せっかく大画面ディスプレイを使うのなら、より高解像度のパネルを利用したい」と思うのは当然だ。そこで今回、マウスコンピューターがiiyamaブランドで投入した27型ワイド液晶ディスプレイ「ProLite XB2776QS」(以下、XB2776QS)を紹介する。

高解像度、広視野角のAH-IPSパネルを採用

 XB2776QSは、2560×1440ドット表示に対応した27型ワイド液晶ディスプレイだ。フルHDを大幅に上回るデスクトップ領域は、オフィス業務の生産性を引き上げてくれるのはもちろん、マウスコンピューターはクリエイター向けにも訴求しており、色再現性に優れたAH-IPS液晶パネルの採用によって色域がNTSC比82%、sRGBカバー率は116%をうたう。フルHDもしくはWUXGAパネルからの代替としてワンランク上のディスプレイを目指すなら悪くない選択肢だろう。

 パネルはノングレアタイプで、外光の映り込みは気にならない。パネルに目を近づけて見ても、表面のぎらつきが抑えられており、目が疲れにくいと感じる。淡い単色を全画面表示すると、画面4隅にやや輝度の落ち込みは見えるものの、通常用途で輝度ムラが気になることはまずないだろう。

 そのほかのスペックは、標準輝度350カンデラ/平方メートル、視野角は水平/垂直ともに178度、コントラスト比1000:1(ACR ON時で500万:1)、応答速度が5ms(中間階調域)。ただし、この応答速度はオーバードライブ設定を+2にした値であり、実際に+2まで上げると、動きの速い映像は輪郭の偽色(オーバーシュート)が目立ちやすい。

2560×1440ドット表示に対応。広いデスクトップ領域は作業効率の向上につながる。回転機構を備えるため、高解像度なデジタル写真を縦位置で表示する際に見栄えがいい

視野角は水平/垂直ともに178度と広く、色が反転づらい

 ボディは黒(マーベルブラック)で塗装されたシンプルなデザインで、本体サイズは644(幅)×249.5(奥行き)×455〜565(高さ)ミリ。円形の台座は奥行きがあり、それなりに設置スペースを必要とする。一方、同社が“パーフェクトスタンド”呼ぶスタンドは、非常に可動範囲が広く、上24度/下4度のチルト、左右各170度のスイベル、昇降範囲は110ミリと、画面位置の調整を容易に行えるのがうれしい。さらに、画面全体を反時計回りに回転して縦位置表示にするピボット機構まで備える。

 映像入力インタフェースは、アナログRGB、DVI-D、HDMI、DisplayPortの4系統を装備。また、出力1.5ワット+1.5ワットのステレオスピーカーも内蔵している。

黒を基調としたシンプルなデザインのボディ。上24度/下4度のチルト、110ミリの昇降が可能だ。ただし、画面の高さは写真で掲載した位置が最も低い状態で、設置面ぎりぎりまでは下げられない

本体背面の左側にヘッドフォンとライン入力、右側にアナログRGB、DVI-D、HDMI、DisplayPortを備える

 OSDメニューは、ディスプレイ右下に並ぶ4つのボタンで操作する。MENUボタンを押すとOSD画面が表示され、音量調節ボタンとMENUボタンで調整したい項目の数値を設定していく。上の階層に戻る、あるいはOSDを終了するときはINPUT/EXITボタンを使う。

 調整メニューは、輝度やコントラスト、色温度などの項目が並ぶ「ピクチャー」、プリセットモード(標準/テキスト/映画/ゲーム/風景)のiStyle-Colorやエコモード、Adv.コントラスト、シャープネス、オーバードライブ、ガンマ(1.8〜2.4)を設定する「画面設定」、OSDの表示位置を設定する「OSD」、OSDの使用言語などを設定する「その他の設定」、「オーディオ設定」が並ぶ。

 色温度はsRGB、6500K、7500K、9300Kから設定可能なほか、「マトリックス」を選択すると、ユーザー設定の赤/緑/青に、シアン/マゼンタ/イエローを加えた6色のカラーマトリックス調整にも対応する。プリセットモードも一通りそろえているので、実際に6色調整を使うかはともかく、かなり細かい調整項目が用意されている。なお、sRGBモードではなぜか画面輝度の調整が行えず、自動的に290カンデラ/平方メートル前後に設定されてしまうようだ。

OSDメニューでは、輝度やコントラストのほか、ガンマ(1.8〜2.4)や赤/緑/青/シアン/マゼンタ/イエローの6色調整も可能。ちなみにsRGBモードは輝度調節ができず、プリセットモードのiStyle-Colorとも分離されている

測色器で色再現性をチェック

 それでは、最後に表示性能を見ていこう。ここではおなじみのエックスライトの「i1Pro」を用いて、ガンマの精度と色再現性を確かめていく。なお、評価にあたっては、OSDメニューで6500Kモードに設定し、手動で輝度を120カンデラ/平方メートルに調整した(sRGBモードでは輝度設定を行えなかったため)。

 評価した個体のガンマ補正の結果は、中間から明部にかけて、青がやや上方向に補正がかかっていた。6500Kの設定で実際の色温度は6226Kと全体的にややアンバーがかった傾向だが、緑と赤の入力と出力はほぼ1:1の直線を描いており、モノクロのグラデーションパターンを表示した目視の印象でも、(暗部はややつぶれぎみだが)階調性はまずまず保たれていると感じた。

RGBのうち青が中間から明部にかけて上に補正がかかっている(画面=左)。6500Kに設定してモノクログラデーションを表示した結果。全体的にセピアっぽい色味になる。写真では分かりづらいが、階調性は悪くない

 次にi1Proで作成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示し、sRGBおよびAdobe RGBの色域と比較してみた。sRGBとの比較では、グレーで重ねて表示した部分がXB2776QSで再現できる色の範囲だ。これを見ると、寒色の一部を除くsRGBのほぼ全域をすっぽりとカバーしているのが分かる。sRGBカバー率116%をうたう通り、sRGB環境での画像編集やWebデザインなどでは業務用途での利用にも対応できそうだ。

 一方、Adobe RGBとの比較(カラーで表示した部分がXB2776QSで再現できる色の範囲)では、特に緑から青にかけての領域で色域の狭さが目立つ結果となった。カラーマネジメントに特化したプロフェッショナル向けディスプレイではないので仕方のないところだが、RAWデータをAdobe RGBで現像するといった用途は厳しいだろう。

XB2776QSで作成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示したグラフ。sRGB(色のついたの部分)を大きくカバーしている

XB2776QSで作成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示したグラフ。Adobe RGB(グレーの部分)と比較するとやはり狭い

 ProLite XB2776QSは、フルHDを大きく上回るWQHD(2560×1440ドット)の高解像度と、AH-IPS液晶パネルの採用による広色域、広視野角が魅力だ。ホビーから仕事まで幅広い用途で活躍してくれるのは間違いない。価格も実売で6万5000円前後と、比較的手が届きやすい価格帯に収まっている。今使っているWUXGA(1920×1200ドット)程度の解像度では物足りないと感じたら、ProLite XB2776QSを検討してみてはいかがだろうか。

マウスコンピューター/G-Tune

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