想定外に「安っぽく見える」製品ができてしまった……どうやって売る?牧ノブユキの「ワークアラウンド」(1/2 ページ)

» 2014年08月19日 11時00分 公開
[牧ノブユキ,ITmedia]

予想とまるで違う製品が生まれてしまう悲劇

 自社で企画開発した新製品が、できあがってみると予想とはまるで違っていた……ということは珍しいことではない。

 量産した部品を使って組み上げてみたら、想定していたパフォーマンスにはるか及ばず、発売を遅らせて部品選定からやり直したり、最悪の場合は仕様を訂正するリリースを出したり、ついには発売を中止したりと、こうしたエピソードは表に出ていないものも含めて枚挙にいとまがない。

 もっとも、これらとは別に、また違った意味でどうしようもない「予想外」に遭遇することがある。中でも困りモノなのが「想定していたよりも見た目がチープ」という事例だ。どこからどう見ても1000円そこらで入手できそうな品質なのに、製造原価から逆算した販売価格は数千円で、差が何倍にも及ぶといったケースである。

 ボディをどれだけ入念に試作していても、塗装1つ、仕上げの加工1つでガラリと変わってしまうことはよくあるため、製品が量産の段階に至って初めて、こうした問題が発生することは実はかなり多い。

 今回は主にPC周辺機器やアクセサリについて、こうした想定外の事態にメーカーがどのような対策を取り、拡販につなげようとするかを見ていこう。

「見た目がチープか否か」の基準は仕様書に記述しにくい

 「見た目が思ったよりもチープ」というのは、前述のパフォーマンスの問題とはまた違った意味で致命的だ。パフォーマンスの問題の場合、内部の部材を取っ替え引っ替えしたりチューニングをやり直すことによって、改善が可能なのか、それともまったく不可能なのか、線引きがしやすい。

 というのも「製品仕様」という明確な基準があり、それが実現可能か否かで判断すればよいからだ。可能ならば発売を遅らせ、不可能ならば発売を中止すればよい。もちろん社内で責任を取らなくてはいけない人は出てくるだろうが、その場合も誰の責任なのかが明白なだけに紛糾しにくい。

 しかし、見た目がチープという問題は、解決するのが実は意外と困難だ。外見がチープか否かは感覚的な話であり、仕様書に記述されるレベルの事案ではないため、責任の所在がはっきりしない。

 例えば製造工程にある「コート加工」が実行されていないのであれば、それは製造元の責任であるのは明白だが、コート加工そのものは行われているが、試作段階とは光沢の具合が違うとか、想定よりも剥がれやすいといったケースは、責任の押し付け合いになりがちだ。

 開発担当者も性能にまつわる部分はチェックしているが、これら外見のチェックはかなり低いプライオリティで対応している場合も多く、「そこまではチェックしていない」という、ありがちな言い訳に発展しやすい。

 これに加えて、外見のチープさが発覚するのは往々にして量産が始まって完成品が納入されてからなので、もしそれをロットアウトさせてしまうと、出荷できない大量の在庫が発生してしまう。

 かといって初回ロットはそのままスルーしてセカンドロットから見た目を変えるというのも、購入者および販売店からのクレームに発展しやすいので、そう簡単に踏み切れるものではない。また組み立ては終わっていないが、部材レベルではすでに次回以降のロットまでできあがっていたりする場合、事態はさらに複雑になる。

 「じゃあ、外見相応に価格を下げればいいじゃないか」と考える人は、おそらくマーケティングにまつわる意思決定のプロセスに携わったことがないだろう。

 メーカーは自社のこれまでの製品や競合他社の製品の価格帯を念入りにウォッチしつつ、十分に競争力がある価格を設定し、それが可能だと判断されることで初めて開発にGoサインを出す。それゆえ、「見た目がチープなので価格を半分にします」といった大胆な変更は、まず不可能と考えたほうがよい。

 もちろん、当初は予定価格で販売し、売れ行きが鈍るか、もしくは売れないことがはっきりと分かった段階で、値下げするという方法はある。

 しかしながら、製品にはどれも必ず製造原価なるものがあり、半額近くにまで売価を下げて利益が出るケースはごくごく珍しい。アクセサリ類ならまだしも、売価に対して原価が異様に高いハードウェアではまず起こり得ない。たとえ赤字にならなくても、その製品が当初の価格で会社にもたらすはずだった利益に遠く及ばなければ、製品として継続する意味が薄いからだ。

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