マウスコンピューターが「CP+2016」で先行発表した「DAIV」は、ハイアマチュアからプロフェッショナルまで、さまざまな分野で活躍するクリエイターに向けたPCブランドだ。
DAIVは、DYNAMIC APPROACH IMAGERY OF VISUALの頭文字。同社代表取締役社長の小松永門氏は、先日行われたメディア説明会で「モノ作りの世界に没頭してもらえるパソコンを作り出していく」と語っている。なぜこの時期に新ブランドを立ち上げたのか。その背景や狙いを改めて小松氏に聞いた。
―― マウスコンピューターの製品は、「mouse」ブランドのほかに、PCゲームに特化した「G-Tune」、法人向けの「MousePro」がありますが、ここにクリエイター向けの「DAIV」を加えた意図を教えてください。
小松氏 理由は大きく分けて2つ。まず、コンシューマー市場でパソコンならではの高いパフォーマンスが求められる分野を考えたとき、1つはPCゲーム、もう1つはクリエイティブな用途があります。
現在、タブレットや2in1デバイス、スマートフォンと、PC以外のさまざまなデバイスが日常的に使用され、日々の情報収集やメールでの連絡などはわざわざパソコンを使わなくても済むようになりました。しかしその一方で、いつでもどこでも使えるモバイル端末によってコンテンツの消費速度は格段に上がっています。
どこでもコンテンツを見られる、つまり見る需要が増えれば作る需要も増えるのは当然です。プロのクリエイターだけでなく、アマチュアの方々も、RAW現像であったり、映像編集であったりと、誰もがクリエイティブな作業環境を手軽に整えられるので、こうしたクリエイター市場はさらに伸びていくと考えています。
もう1つの理由は、2015年に写真家向けの「MDV for Photo」シリーズを展開し、CP+に出展した際、本格的に写真撮影を楽しんでいるハイアマチュアの方々から大きな反響を頂いたことです。そこで2015年の4月からほぼ1年かけて、どういった製品が適しているのか検討を重ね、ようやくクリエイター向けブラントとして独立した製品を発表することができました。それがDAIVです。
―― クリエイターといっても幅は広いです。主にどんな層をターゲットにしていますか?
小松氏 今回DAIVで発表しているものは、主に写真編集を中心とした製品です。デスクトップPCでは、UHS-II規格に対応したSDメモリーカードスロットを持つマルチカードリーダーを内蔵したり、ストレージの拡張を容易にしています。フロントにリムーバブルベイを装着できるので、大容量のデータを扱う映像編集マシンにも適しています。
ノートPCではsRGB比95%と、色再現性の高い液晶ディスプレイを搭載しているのが特徴です。実はsRGB比100%のパネルを採用しているのですが、個体差の問題でsRGB比の平均が97%、下限で95%だったため、スペックには下限値を記載することにしました。製品出荷時に1台1台、液晶のsRGB比測定結果を添付するようにしています。
このほか、3DCG開発向けには、GeForceシリーズだけでなく、Quadroも選択できるようにしていますし、今後大きく市場が伸びると予想されているVR分野に対しても、8KのVRコンテンツを視聴、編集できる高性能なマシンを用意しています。
―― イメージング用途が中心とのことですが、写真や映像を扱う分野では、ソースの入力、編集から、最終的な出力まで、カラーマッチングなどのトータルソリューションが求められます。パソコン本体だけでは実現できない部分ですが。
小松氏 実はこの部分については、先行するMDV for Photoシリーズの目玉として、ディスプレイメーカーやプリンタメーカーと協業して取り組んできました。
具体的には、EIZO様のカラーマネジメント対応ディスプレイや、キヤノン様のハイアマ向けA3ノビ対応プリンタなどをセットにしたトータルソリューションとして展開しています。また、今回はAdobe Creative Cloud推奨PCもラインアップに加えています。
―― 製品開発で特に重視したポイントはなんですか?
小松氏 DAIVブランドは企画から1年ほどかけて開発しましたが、デザインコンセプトからスペック構成まで、実際にプロクリエイターの方々の意見を取り入れているのが最大の特徴です。
デスクトップPCでは、拡張性の高いミニタワー型を採用し、先に触れたように最大3基のリムーバブルベイを組み込めるようにしています。また、撮影スタジオはホコリがたまりがちとのことでしたので、本体前面から吸気部分のフィルタを簡単に掃除できるようにしました。上部にハンドルを設け、オプションのローラーで手軽に移動できるようにしたのも、意外とマシンを動かす機会が多いという現場の声を取り入れたものです。
デザイン面ではダイヤル式の電源スイッチがユニークだと思います。作業を始める前に、制作に没頭するために意識を切り替えるような、クリエイティブな世界に入っていくためのイグニッション(点火)スイッチをイメージしています。締まったブラックのカラーリングもデザイン事務所やスタジオにあうと好評です。
―― PCゲーム業界では今や大きな存在感を持つG-Tuneですが、立ち上げから5年が過ぎ、事業のもう1つの柱となっている法人のMouseProに続き、クリエイター市場の開拓を目指したDAIVが登場しました。どの程度の成長を見込んでいますか?
小松氏 新しいブランドの製品が一気に広がるとは考えていません。実はG-Tuneでさえ、前身の「Tune」シリーズから数えると、今のブランドに成長するまでには10年くらいかかっています。
もちろん、そこまで時間がかかるとは思っていませんが、今後、静止画にしても映像にしても、高解像度化がさらに進むのは確実ですし、VRといった新分野の兆しもあり、これらのクリエイティブな用途は、どれだけスマホやタブレットが進化しても、パソコンでしかできない部分だと考えています。これからのコンテンツを作り出していくクリエイターたちを長くしっかりとサポートしていく、そういう決意も込めて、独立したブランドとしてDAIVを立ち上げました。
先ほども言いましたが、現在は誰でもクリエイションの世界に入る環境がすぐそばにあり、さまざまな人がコンテンツを作る時代になっています。その際に「どんな“道具”を選べばいいのか分からない」という方たちのハードルを下げ、これさえ買っておけば大丈夫、とDAIVが適切な製品を提案していくことで、クリエイター市場全体を活性化していきたいと考えています。
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