コラム
» 2017年10月06日 06時00分 公開

Windows Mixed Realityは何がすごいの? Windows 10の「Fall Creators Update」に合わせて知っておきたい基礎知識 (1/2)

10月17日の「Fall Creators Update」に向けて、WMRを分かりやすく解説。

[広田稔,ITmedia]

 米国時間の10月3日、米Microsoftは10月17日に公開を予定しているWindows 10の最新アップデート「Fall Creators Update」と、サムスン電子の新型「HMD Odyssey」をはじめとする「Windows Mixed Reality」対応のヘッドマウントディスプレイ(MR HMD)を披露した。世間的にはまだ「MR」(複合現実感)という言葉自体があまり聞きなれないはずなので、要点をまとめていこう。


ARとVRを含むMR

 「なんとかR」というと、Virtual Reality(VR、人工現実感)やAugmented Reality(AR、拡張現実感)が有名だ。前者は、ほぼ現実と同じ感覚を人間に体験させるというもので、視覚であれば視界をHMDで覆い、視界いっぱいにCGを表示することでまるで別世界に行ったかのような錯覚を起こさせる。一方、後者は現実世界にコンピューターで何かを足すことで、現実以上の体験を実現するものになる。

 それでは「MR」(Mixed Reality)が何かと言えば、Microsoftが自社サイトでも紹介しているように、これらのVRやARを含む広い範囲を指している。

 よく同社が解説に使うのは、左側に完全なリアルの世界が、もう一方の右側に完全にバーチャルの世界があるという横棒だ。現実に人工の要素を足すというのはゼロイチの話ではなく、少しだけCGが加わっていたり、逆に大半がCGだったりと段階がある。Microsoftは、このうち完全にリアルなもの以外の部分をMRとして扱うとしている。

Microsoftが示すMRの範囲。現実世界に近いポケモンGOのようなAR(スマホのカメラを通した風景にデジタル情報を付加)から、完全に視界を覆い仮想世界に没入するVRまですべてMRに含まれる

 例えば、インターネット上にバーチャルルームを作成し、そこにHMDをかぶってみんなで集まって会議をする、といったサービスにおいて、VRでは現実がどうあろうと完全に別世界に没入して対話することになる。ARでは現実世界にCGのアバターがいて、対面してしゃべっている感覚を想起させてくれるだろう。MRは、そのVRの人もARの人も混在した状態だ。

 とにかく「完全に現実」以外の部分が対象になりますよというのが、Microsoftの目指すところになる。

ARよりのHoloLens、VRよりのMR HMD

 実際、Micrsoftが提供しているHMDも、先ほどのページにもあるように「Holographic Devices」と「Immersive Devices」という2種類に分けられる。

 前者はARよりで、2016年に開発者向けにリリースした「HoloLens」が代表的だ。このHMDはすごくざっくり言えば、PC本体とディスプレイが一体になった“頭に乗せるWindows 10マシン”である。

Microsoft HoloLens

 一見、ウェアラブルPCのようにも聞こえるが、HoloLensがスゴいのは、左右のカメラを使ってユーザーの視界をスキャンして、リアルタイムで環境マップ(3Dスキャンデータ)を作っていける点だ。ある程度部屋の中を歩き回って環境マップを用意すれば、家具や雑貨を置くのと同じ感覚で、机の上に時計や書類を広げたり、EdgeブラウザのYouTubeウィンドウやカレンダーアプリを壁に張り付けたりといったAR的なことを実現できる。

HoloLensを通して現実の空間から3Dマップを作り出し、視界にAR情報を重ねることが可能。新しくオープンするショップの内装を何もない倉庫で事前にデザインするといった使い方が期待できる

 同様のことを以前のスマホのARアプリでやろうとすると、例えば、CGは一方向からしか見えないし、手前に何かものがあっても隠すというのが難しい。それがHoloLensなら、回り込んできちんと裏側を見られたり、手前にあるもので遮へいされたりといった、より現実に近い見え方が可能だ。

 一方、今回のFall Creators Updateで使えるようになるMR HMDはVR寄りといえる。PC用のVR HMDは、すでに2016年より「Oculus Rift」や「HTC VIVE」といった先行製品がリリースされているものの、これらに比べるとまず外部機器を使わずに位置トラッキングを実現している点がメリットだ。

COMPUTEX TAIPEI 2017のMicrosoft Forumで披露されたサードパーティ製HMD

PCメーカー各社が続々とWindows Mixed Reality対応HMDを発表している

 位置トラッキングとは、現実世界でユーザーがどれくらい動いたかを検出してバーチャル世界などに反映する仕組みで、興味のあるものに歩いて近づいたり、ハンドコントローラーのトリガーを引いて持ったりといったことを実現してくれる。この位置トラッキングのために、Oculus Riftでは赤外線センサー、HTC VIVEでは赤外線を出すベースステーションがそれぞれ必須になる。

 それがMR HMDでは、HMDの前面にあるステレオカメラを使って視界の範囲をスキャンし、ユーザーの位置を検出してくれる。よく誤解されがちなのだが、現状、このカメラ映像をHMD内で見る(ビデオシースルー)ことはできない。さらにハンドコントローラーも、(恐らく)埋め込まれた光の形から場所を検出できる。もちろん、絶対位置が定まっている外部センサーを使ったほうがよりトラッキングの精度は高まりそうだが、必要な機材が少なくなるということは面倒さが減るメリットにつながる。OSレベルでサポートしているので、HMDから伸びるHDMIとUSBケーブルをPCにさせば使えるようになるという点も手間が少なくていい。

MR HMDに内蔵されるカメラで環境マップを作成するため、3DOculus RiftやHTC VIVEのような位置トラッキングに外部センサーを必要するVR HMDに比べてセットアップが簡単なのも特徴の1つ

 ほかにも、クオリティは落ちるものの、CPU内蔵グラフィックスで動作する点も、使えるPCが増えるという点でメリットだろう。3Dグラフィックをバリバリ使うようなゲームではなく、2Dの普通のWindowsアプリもVR空間に出せるので、ディスプレイという物理的な表示の制約から解放されて、好きなだけウィンドウやオブジェクトを置いて作業できるわけだ。

 同じWindows Mixed Realityプラットフォームなので勘違いされがちだが、Holographic DevicesとImmersive Devicesは現状できることが異なると覚えておこう。

 ちなみにWindows Mixed Realityは、HMDだけではなく、Windows 10タブレットでの応用も視野に入れており、この辺もFall Creators Updateで利用可能になる。iOSの「ARKit」、Androidの「ARCore」と似たような感じだが、HoloLensやMR HMDで見ているARやVRをタブレットで「のぞき見」できるようになるわけだ。

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