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» 2018年04月05日 13時00分 公開

特集・音声言語インタフェース最前線:争いは「スピーカー」を超えていく 急成長するスマートスピーカー市場の今後は? (1/2)

2017年秋から立ち上がり始めた日本のスマートスピーカー市場は、海外とは違った様相を呈している。2018年に現れる新しい技術が与える影響も、海外と日本では異なる可能性が高い。

[西田宗千佳,ITmedia]

 2017年秋以降、日本でも「スマートスピーカー」の市場が立ち上がり始めている。アメリカを中心とした海外市場に対し、1年遅れで立ち上がったものではあるが、それだけに、海外とは違った様相を呈している。また、2018年に現れる新しい技術が与える影響も、海外と日本では異なる可能性が高い。

 日本のスマートスピーカー市場がどう立ち上がろうとしているのかを分析したい。

世界で急成長するスマートスピーカー

 スマートスピーカーは、音声アシスタントを提供するプラットフォーマーによるシェア争いの場である。2014年11月、米Amazon.comが「音楽のためのデバイス」として発表した「Echo」は、同社Primeサービス会員に向けた限定的な販売からスタートし、2015年夏から一般販売へと拡大した。そして、2016年秋には米Googleの「Google Home」が登場。Amazonも小型・低価格版の「Echo Dot」を発売したことから、アメリカで市場が一気に拡大した。

Smart Speaker 代表的なスマートスピーカーであるAmazonの「Echo」(左)とGoogleの「Google Home」(右)

 2016年前半まで、アメリカでもスマートスピーカー市場はさほど大きなものではなく、注目度も低かった、というのが筆者の認識だ。だが、2016年秋以降、50ドル以下で入手できたEcho Dotの存在が引き金になり、一気に増えた。結果、2016年末までにアメリカで900万台程度の市場規模となり、現在に至る急速な成長の基盤が出来上がった。

Echo Dot 普及の起爆剤となったAmazonの「Echo Dot」

 スマートスピーカーの中核であるIT企業は、自社が出荷したスマートスピーカーの正確な台数や、出荷予定の数値目標などをほとんど示していない。そのため、スマートスピーカーの市場規模は、市場調査会社などの情報から分析するしかないのが実情である。そのため、本稿に出てくる数字の多くは、市場調査会社などのレポートに基づくものだ。

 毎年1月に開催されるテクノロジーイベント「CES」の主催者であり、アメリカの技術関連企業の業界団体でもある全米民生技術協会(CTA)が1月に発表した調査によると、2016年には全米で720万台だった市場が、2018年になると、約4360万台に拡大、約38億ドルの売り上げが見込めるという。

 マーケット調査会社のAritzonが2017年夏に公開したレポートでは、2022年の全世界でのスマートマーケット市場規模が、約48億ドルになる、と予測している。CTAは2018年の成長率を93%(売り上げベース)と見積もっており、この市場が急速な勢いで成長していることが分かる。

 CTAのレポートはかなり楽観的な数字であると思うが、それでも、アメリカを中心とした市場では「年間数千万台売れる」規模の、中核となる家電の1つと認識されているのは間違いない。

CTA Report CTAが2018年1月、CES開催に際して発表したレポートより抜粋。アメリカでのスマートスピーカー市場は2018年には約4360万台に成長、2019年にピークを迎えるという。

 日本においては、富士経済が2017年11月に、スマートスピーカー市場の予測レポートを公表している。それによれば、2017年度の市場規模予測は20万台・18億円と、立ち上げの時期だけに小さなものだが、2025年には165億円の規模になる、と予測されている。アメリカのものよりはかなり控えめな予測である。

Fuji Keizai Report 富士経済が2017年11月に発表した国内スマートスピーカー市場のレポートより抜粋。2025年には165億円の規模になると予測している

 筆者は今後、「音声アシスタントを組み込んだ家電は普及し、スマートスピーカーはその一部になる」と予想している。そのため、スマートスピーカーそのものの市場は大きくならなくても、関連市場を含めると今後成長する可能性が高い、と考える。

AmazonとGoogleが市場をリード

 スマートスピーカーの主要プレイヤーは、AmazonとGoogleである。この点は、日本でも変わらない。スマートスピーカーの種類は、製品を構成するために必要な「音声アシスタント」技術で決まり、それを提供するのが大手IT企業、という構図である。Amazonが「Alexa(アレクサ)」で立ち上げた市場にGoogleの「Googleアシスタント」が食らいつき、それ以外の企業が追いかける構造になっている。それらの企業がビジネスを展開しづらい中国市場を除けば、産業構造に大きな違いはない。

 アメリカの調査会社Strategy Analyticsの調査によれば、スマートスピーカーの世界シェアは、2016年第4四半期にはAmazonが88%ものシェアを握っていた。それが1年後、2017年第4四半期には51.8%になっている。急落といっていいが、それでもシェアの半数はAmazon、という状況だ。

 急追しているのはGoogleだ。2016年は8.7%であったシェアが、2017年第4四半期には35.7%まで伸びている。Googleは現在、Googleアシスタントのマーケティングを積極的に展開している。1月にラスベガスで開催されたテクノロジーイベントのCESでも、ラスベガスの街を占拠するかの勢いで広告展開を行い、強い印象を残した。今もアメリカ・日本を含む世界中で、Amazonを追いかけて積極的な広告展開を続けている。

 日本の場合、シェア争いにはLINEの「Clova(クローバ)」が加わる。信頼できるような、販売シェアの正確な数字は、今のところ出ていない。AmazonのEchoシリーズの一般販売は2018年3月30日に開始されたところであり、長く限定販売状態が続いていた。そのため、販売された端末のほとんどはGoogle Homeシリーズと思われる。LINEは、Googleなどに対して、出だしでは苦しい状況にある。

Clova Friends LINEのスマートスピーカー「Clova Friends」。自社の音声アシスタント「Clova」に対応し、LINEのアプリと連携するのが特徴である

 とはいえ、全体の台数はまだ20万台程度で、市場は立ち上がったばかり。この段階で市場の勝敗を決めるのは時期尚早である。

 なお、2018年はAppleの「Siri」を使った「HomePod」が付け加わる。現在はアメリカ、イギリス、オーストラリアで販売されている段階だが、日本語への対応も予定されており、2018年中には日本国内でも販売されるものと思われる。だが、既に販売済みの国でも、販売数量は少なく、シェアに大きな影響を与えている状況にはない。

HomePod Appleのスマートスピーカー「HomePod」。iPhoneでおなじみの音声アシスタント「Siri」を利用する。日本での発売は未定
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