今や業務に欠かせないツールになりつつあるスマートデバイス。通信キャリア各社がラインアップする端末も、既に主軸はスマートフォンやタブレットに切り替わっており、企業への導入も加速している。
5月10日に行われた「第2回 スマートフォン&モバイルEXPO 春」の基調講演にKDDI執行役員の東海林崇氏が登壇。「業務効率化を実現するモバイルワークスタイルとは?」と題した講演を行い、同社の法人向けスマートデバイス戦略を披露した。
東海林氏は、社会環境と市場動向の変化がモバイルワークスタイルの普及を加速させていると話す。
社会環境の変化としては、労働力の高齢化や女性の社会進出率の向上などによる雇用形態の多様化、個々の従業員の抱えた事情に対応可能な労働形式の採用といった流れが、モバイルでの業務やテレワークの活用を後押ししていると説明した。
この流れは、2011年3月11日の東日本大震災の発生を契機とした、事業継続計画(BCP)への対応意識の高まりによって本格化しつつあるという。ある調査によれば、震災以前に13.8%だったテレワークの導入率が、震災発生の1カ月後において20.1%と急進したといい、こうしたデータからも、モバイルワーク、テレワークが本格導入期に入ったことが見てとれるという。
こうした社会環境の変化に合わせて、近年のICTの進歩もワークスタイルの変革を後押ししているという。スマートデバイスは、それまで企業で使われていたフィーチャーフォンやPCの代替として検討されるに十分な新たな機能性を備えており、3Gに加えてWi-Fiが標準的に利用できる通信機能、画面のサイズや表現力、モビリティの高さ、起動のスピーディーさといったメリットが、従来のデバイスからのリプレースを促した。
さらに東海林氏が「より重要であり、今後モバイルワークスタイルの推進力となる」と強調したポイントは「さらなる通信の高速化」だ。KDDIが採用している移動体通信方式「CDMA2000」においては、通信速度の高速化やQoSの実装にあたってEV-DOと呼ばれる技術仕様を採用。現在も続く3G通信の時代において、この仕様の上で理論上9.2Mbpsまでの通信を可能にしてきた。また、WiMAXにおいても理論上40Mbpsの通信速度を実現している。
これが次世代通信の実用化によって、LTEで75Mbps、WiMAX 2では165Mbpsへと理論値が大きく上昇する。東海林氏は「こうした新技術の登場は、無線ネットワークでも、ADSLやFTTHといった固定ブロードバンドと同等の利用環境が実現することを意味する」と話す。
こうした社会環境の変化、ICTの進化に加えて、システムが「クラウド」化されることによって、作業場所や端末を選ばず、必要な場所で必要な時に業務を実施できるモバイルワークスタイルの構成要素が出そろうという。
こうした状況の中、KDDIでは、どのようにモバイルワークを実現するためのサービスを提供するのか。東海林氏はまず、フィーチャーフォン時代から多くの実績がある同社のビジネスソリューションで培われた技術とノウハウを挙げた。さらに同社の場合、iPhoneやAndroidフォン、Windows Phone、Androidタブレットと幅広くそろえた端末ラインアップが大きな強みになる。「OSや画面サイズなど、ユーザーのニーズに応えるデバイスを提供できる」(東海林氏)。
東海林氏は、ここでスマートデバイスのビジネス活用において特に重要な要素として「基幹システムとの接続」を挙げた。「インターネットサービスのみの利用ではなく、社内データにアクセスできるようになることで、モバイルワークにおける業務の幅が大きく広がる」(同)。
スマートデバイスと基幹システムとを接続して業務に活用する場合には、サーバと端末のデータの同期処理や、端末ごとの微妙な差分(OSや画面サイズなど)の吸収などが重要なほか、セキュリティに関しても十分な検討が必要になる。「KDDIでは、モバイルと固定ネットワークの双方を扱っており、連携のノウハウ、セキュリティ上のノウハウを多く持ち合わせている点が強みとなる」(東海林氏)
特にセキュリティについては、ネットワークとデバイスのそれぞれのレイヤーでサービスを提供できる点がポイントだと話す。
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