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» 2012年05月23日 16時24分 UPDATE

連載/電力を安く使うための基礎知識(5):昼間の電力ピークカットには太陽光発電、価格低下で普及が加速

国内で太陽光発電システムを導入する動きが加速している。市場拡大に伴って価格が下がり、2011年度には出荷量が前年比で3割以上も増えた。昼間に使う電力を太陽光発電でカバーすれば、ピークカットとコスト削減を両立させることができる。

[石田雅也,スマートジャパン]

 夏に向けて電力会社の料金値上げが相次いでいる。電気料金を抑えるうえで、昼間の電力使用量を大幅に減らすことが重要になってきた。その最善策として太陽光発電システムを導入する企業や家庭が増えている(図1)。

 最近の3年ほどで太陽光発電システムの価格は2割くらい下がった。さらに補助金制度が国だけではなく全国の地方自治体でも始まり、導入費用を回収しやすくなったことが追い風になっている。太陽光発電による余剰電力の買取価格も高めに設定されており、将来に向けて導入メリットがますます大きくなってきた。

ALT 図1 太陽電池の国内出荷量(2011年度から用途の区分を変更)。出典:太陽光発電協会

価格は1kWhあたり50万円前後まで低下

 太陽光発電システムは蓄電システムと同じように、企業向けと家庭向けで製品が分かれている。家庭向けは発電能力(最大出力)が10kW未満、企業向けは10kW以上が一般的である。価格は3年前の2009年に1kWあたり70万円程度だったものが、現在は50万円前後まで下がっている。

 蓄電システムで課題になっている製品の寿命に関しても、現状では10年〜20年と相対的に長い。太陽光発電システムの主な構成要素は、太陽光を電気に変換する「太陽電池」のほかに、太陽電池が作り出す直流の電気をさまざまな機器で使えるように交流に変換する「パワーコンディショナ」の2つである(図2)。

 このうち太陽電池の寿命は20年〜30年と長く、一方のパワーコンディショナは半分の10年〜15年程度と想定されている。平均すると太陽光発電システムの寿命は15年と考えるのが妥当だろう。

ALT 図2 太陽光発電システムの標準的な構成要素。出典:太陽光発電協会

 以上のような価格と寿命をもとに、太陽光発電システムの年間コストを大まかに計算することができる。10kWの発電能力があるシステムの価格は約500万円で、工事費を1割プラスして、寿命を15年とすると、年間で約37万円のコスト負担になる。

 一般の家庭の場合には現在のところ4kWタイプが標準的で、1年あたり15万円程度で費用を見込んでおく必要がある。ただし補助金を使えば、もう少し安くなる。国が運営する制度では、1kWあたり3万〜3万5000円の補助金が支給される。

「固定価格買取制度」で費用対効果が改善

 では太陽光発電システムが作り出す電力の量はどのくらいになるのか。当然ながら気象条件や地域によって変わってくるが、参考値としてパナソニックが試算したデータを使うことにする(図3)。これを見ると、10kWの発電能力があるシステムの場合で、およそ1万2000〜1万4000kWhの電力を1年間に作り出すことができる。

ALT 図3 日本の主要都市において太陽光発電システム(最大出力10kW)が年間に作り出す電力量の予測値。出典:パナソニック

 この電力量をもとに、年間の電気料金を計算すれば、費用対効果が分かる。企業向けの電気料金の単価は、1kWhあたり15円程度である。年間で1万3000kWhの電力を太陽光発電システムでカバーできると、約20万円分の電力に相当する。これだと先ほど計算した年間のコスト負担額(約37万円)の半分程度にとどまる。

 ただし太陽光発電システムによる電力の全量を自社で使わなければ、余った分を電力会社に売ることによって、ある程度のコストを回収することができる。太陽光発電で作り出された電力は、2009年11月から始まった「太陽光発電の余剰電力買取制度」により、経済産業省が決めた価格で電力会社が買い取ることになっている。直近の2012年4月〜6月の価格は1kWhあたり40円か42円で、通常の企業向け電気料金の2倍以上に設定されている(図4)。

ALT 図4 太陽光発電の買取価格(2012年4月〜6月)。太陽光以外の自家発電設備を併用した場合には「ダブル発電」の価格を適用。出典:経済産業省

電気料金が高い家庭では大きなメリット

 さらに2012年7月からは「再生可能エネルギー固定価格買取制度」が始まることになっており、太陽光発電の電力は1kWhにつき42円で買取価格が固定される。かりに10kWの発電能力がある太陽光発電システムからの電力をすべて売った場合には、年間で約55万円の収入になり、コスト負担額の37万円を大きく上回る。およそ半分の電力を自社で使用して、残った半分を電力会社に売ると、ほぼトントンの状態になる。42円という固定価格は、絶妙な設定と言える。

 一方、家庭の場合は電気料金の単価が1kWhあたり25円程度で、企業向けよりも高い。太陽光発電による電力をすべて使い切っても、ちょうど年間のコスト負担額(約15万円)と見合う。さらに東京電力や関西電力が時間帯別の料金プランを家庭向けにも開始する。

 そうなると蓄電システムを導入して、昼間の太陽光発電による電力を長時間にわたって家庭内で利用できれば、単価の安い夜間だけ電力会社から購入することで、電気料金を大幅に引き下げることが可能になる。現状では企業よりも家庭のほうが、太陽光発電の費用対効果の点で有利だ。

 最近は太陽光発電のほかにも、電気と熱の両方を効率よく作り出せる「ガスコージェネレーションシステム」が家庭や店舗を中心に広がってきた。本連載の次回で解説する。

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