バイオマスは電力源の宝庫、木材からゴミまで多種多様解説/再生可能エネルギーの固定価格買取制度(8)

再生可能エネルギーの中で燃料を使うのはバイオマス発電だけだ。発電の際にCO2を発生するが、樹木などCO2を吸収する生物資源を原材料として使うためにクリーンエネルギーに位置付けられている。ゴミなどの廃棄物も対象になり、原材料のコストによって買取価格が大きく違う。

» 2012年09月26日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 日本最大の「川崎バイオマス発電所」(神奈川県川崎市)

 バイオマスは目新しい電力源のように思われがちだが、実際には全国各地に発電所が数多く存在する。規模はさまざまで、数十kW程度の小規模からMWクラスの大規模な発電所まである。現時点で最も規模が大きいのは「川崎バイオマス発電所」で、発電能力は33MWと太陽光などと比べてもひけをとらない(図1)。

 これまで電力会社が買い取ってきた再生可能エネルギーの電力量を見ても、風力に次いでバイオマスが2番目に多く、2010年度で太陽光の2倍以上ある(図2)。ただし拡大のペースは風力や太陽光よりも穏やかだ。

図2 電力会社による再生可能エネルギーの買取量(単位:億kWh)。出典:資源エネルギー庁

 バイオマス発電は通常の火力発電と同様に、燃料やガスを燃やして発電する。ただし大きな違いは燃料やガスの原材料が再生可能な点にある。最も多く使われるのは木材で、元の樹木が光合成によってCO2を吸収するために、発電の際に生じるCO2を相殺するものとみなされる。再生可能エネルギーの中でも異色の存在と言える。

買取価格が最も安いリサイクル木材

 バイオマス発電の原材料になるのは木材のほかに、ゴミなどの廃棄物や、生物資源が発酵することによって生じるメタンガスがある。それぞれの原材料は調達コストが大きく違うため、発電コストにも大きな差が出る(図3)。同じ木材でも利用済みのリサイクル木材はコストが安く、未利用の木材は高くなる。

図3 バイオマス発電のコストと規模。出典:資源エネルギー庁

 このため電力の買取価格も原材料によって細かく設定されている。最も高いのはメタンガスを使う場合で、太陽光並みの39円/kWh(税抜き)で電力を売ることができる。発酵プロセスの部分にコストがかかるためで、建設費や運転維持費は太陽光などと比べて圧倒的に高い。

 このほかのバイオマス発電は建設費や運転維持費が太陽光発電と同程度だが、原材料のコストによって13円〜32円/kWhまで2倍以上の開きがある(図4)。バイオマスの場合は発電効率(設備利用率)が70〜80%と太陽光の5倍くらい高いために、買取価格の単価は全体的に安めに設定されている。

図4 発電方法別に定められた固定買取価格。出典:資源エネルギー庁

 しかしバイオマス発電の場合には面倒な点がある。同じ木材でも未利用かリサイクルかによって買取価格が2倍以上も違うため、原材料の種類を特定しなくてはならない。買取にあたっては原材料の証明書を提出することが義務付けられている(図5)。

図5 バイオマス発電に利用する木材の出所証明。出典:資源エネルギー庁

 いずれの原材料の場合でも、いかに安く調達できるかで収益性が決まる。既存の事業との関連などで原材料を安く入手できるような企業や自治体にとっては、買取制度を活用したバイオマス発電事業のチャンスは大きい。

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連載(1):「日本のエネルギー市場を変革する、新制度がスタート」

連載(2):「電力を高く売るための条件、少しでも安く使う方法」

連載(3):「買取拒否と接続拒否ができる、新制度に残る運用上の問題」

連載(4):「太陽光発電の事業化が加速、10年で採算がとれる」

連載(5):「風力発電が太陽光に続く、小型システムは企業や家庭にも」

連載(6):「水力発電に再び脚光、工場や農地で「小水力発電」」

連載(7):「地熱発電の巨大な潜在力、新たに「温泉発電」も広がる」

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