電力市場を開放へ、新電力による「部分供給」を導入法制度・規制

10社の電力会社による寡占状態が続く日本の電力市場だが、現在の閉鎖的な体制を抜本的に改革するための具体策が徐々に明確になってきた。2013年から「部分供給」と呼ぶ新しい仕組みが導入される見通しで、新電力の供給量が不足する場合に電力会社などが補完する制度を設ける。

» 2012年11月09日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 政府が検討を進めている「電力システム改革」の新たな具体案が11月7日に公表された。最大の課題になっている電力会社の送配電ネットワークを開放する方法などを検討中だが、それに先行して実施する2つの重要な施策が明らかになった。

図1 新電力による「部分供給」の想定パターン。出典:電力システム改革委員会

 1つ目の施策は新電力(特定規模電気事業者)が幅広い顧客に電力を販売できるように支援するものである。今年に入ってから地方自治体を中心に、電力会社から新電力に契約を切り替えて電気料金を削減する動きが広がっている。しかし新電力の大半は発電設備が少ないことから供給力に限界があり、契約する顧客を拡大できない問題を抱えている。

 そこで新電力の供給量が足りない場合に電力会社など他社が補完する「部分供給」の仕組みを導入する。政府が示した案は時間帯によって不足する部分を電力会社などが補給する形で、代表的な3つのパターンを想定している(図1)。新電力は顧客側の需要の変動に応じた電力供給が難しいため、需要に対応した「負荷追随供給」を電力会社から受けられると契約顧客を増やしやすくなる。

 もう1つの施策は発電事業者を支援する目的で、電力会社の送配電ネットワークに関する情報開示を促進する。7月から始まった再生可能エネルギーの固定価格買取制度によって、多数の企業が発電事業を手掛けるようになり、今後さらに参入する事業者が拡大する見込みだ。

 ただし発電事業を開始するにあたっては、電力会社の送配電ネットワークで受け入れ可能なことが条件になっている。発電設備を電力会社の送配電ネットワークにつなぐことを「連系」と呼ぶが(図2)、この連係が可能な電力量の情報などは電力会社が保有している。こうした連系に必要な情報の公表範囲と提供スピードを改善するためのルールを設ける。

図2 発電設備(事業者)と需要設備(利用者)を結ぶ送配電ネットワーク。出典:資源エネルギー庁

 特に太陽光発電や風力発電のように気象条件によって出力が変動する設備では、連系可能性の検討が重要になる。そのために電力会社に問い合わせる必要があり、現在は回答を得るまでに長い時間がかかっている。今回の案では出力が50kW未満の小規模な発電設備に対しては1か月以内、50kW以上500kW未満の中規模な発電設備に対しては2か月以内を標準回答期間にすることを明示した。

 以上の2つの施策を含む改革案は、2013年に予定されている電気事業法の改正時に盛り込まれる見通しだ。この改正電気事業法の施行によって、電力市場の開放が一段と進み、健全な競争状態が広がっていくと予想される。

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