富士山のもとで再生可能エネルギー倍増へ、有望な太陽光と風力を推進日本列島エネルギー改造計画(22)静岡

静岡県の名物と言えば、お茶と海産物、そして富士山。県内全域で日照時間が長く、海岸線には強い風が吹き、温泉も豊富に湧き上がる。まさに再生可能エネルギーの宝庫である。太陽光と風力を中心に、2020年に向けて再生可能エネルギーの導入量を倍増する計画が進行中だ。

» 2012年12月13日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 国が運営する住宅用太陽光発電システムの補助金申請件数。出典:太陽光発電普及拡大センター

 ここ数年で太陽光発電システムの導入に最も積極的に取り組んできた県はどこか。家庭を対象に考えれば、静岡県がナンバーワンと言える。その状況は国が住宅用の太陽光発電システムを対象に実施している補助金の申請件数に表れている。

 直近4年弱の累計データが発表されているが、静岡県は全国で6番目に補助金の申請件数が多い。さらに県内の全住宅数に対する比率を見ると2.2%で全国1位になる(図1)。50軒の住宅に対して1軒以上の割合で太陽光発電システムが導入されているわけだ。全国平均が1.4%であることから、静岡県の導入率は1.5倍以上も上回る。

 太陽光発電によるエネルギー供給量は全国で3番目に多く、ほかにも小水力、地熱、太陽熱でトップ10に入る(図2)。県の全域で日照時間が長いことに加えて、富士山を中心に河川や温泉が広がり、さらには太平洋岸の地域で強い風が吹く。

図2 静岡県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 この恵まれた自然環境を生かして、再生可能エネルギーの導入量を2倍に増やす計画が進んでいる。県が掲げる「ふじのくに新エネルギー等導入倍増プラン」に沿って、2020年度の導入量を2009年度の実績から倍増させる。

 特に重点を置くのは太陽光発電と風力発電の2つである。いずれも2020年度までに導入量を3倍に拡大する目標を立てている(図3)。同時にガスコージェネレーションの導入量も倍増して、県全体のエネルギー消費量の10%を再生可能エネルギーとガスコージェネでカバーできるようにする。これによって電力会社への依存率を引き下げて、分散型のエネルギー供給体制を強化する考えだ。

図3 静岡県の再生可能エネルギー導入目標。出典:静岡県企画広報部

 太陽光発電では家庭の導入拡大に続き、大規模なメガソーラーの建設プロジェクトが相次いで始まっている。そのひとつが富士山を望む景勝地の「三保の松原」で進んでいて、中部電力が8MW(メガワット)のメガソーラーを建設する予定だ(図4)。

図4 メガソーラーしみず完成予想図。出典:中部電力

 この近隣の場所にはJFEエンジニアリングも10MWのメガソーラーを建設することを先ごろ発表した。2つのメガソーラーともに2015年から運転を開始する計画だが、臨海地区にあって十分な日射量を見込むことができる。両者の発電量を合わせると年間で1740万kWhになり、約6000世帯の家庭が消費する電力量に相当する規模になる。

 静岡県は現在もメガソーラーの候補地として9か所をリストアップして発電事業者を募集中だ。そのうちの半数以上は県東部の伊豆半島にある。太平洋に大きく突き出た形の伊豆半島は、当然ながら風力発電にも向いている。

 最南端の南伊豆町には、国内でも有数の規模を誇る「石廊崎風力発電所」が2010年から運転を開始している(図5)。海に近い丘陵に建てられた17基の大型風車を使って、最大で34MWの電力を作り出すことができる。年間の発電量は8200万kWhにのぼり、約2万3000世帯分の電力を供給可能だ。このほかにも伊豆半島では15MWの風力発電所が稼働している。

図5 石廊崎(いろうざき)風力発電所。出典:J-POWER

 静岡県の大半の地域は中部電力の管内に入るが、伊豆半島を含む県東部は東京電力のサービスエリアに含まれる。東京電力グループも伊豆半島に大規模な風力発電所を建設する計画を進めており、合計35MWの発電設備を2014年から運転開始する予定だ。

 伊豆半島だけで100MW近い規模の風力発電が可能になる日も遠くない。全国では青森県の下北半島、石川県の能登半島、鹿児島県の薩摩半島と並んで、大規模な風力発電所が集まる半島としても注目を集めることになるだろう。

2014年版(22)静岡:「ふじのくにを潤す農業用水、米と野菜と電力も作る」

2013年版(22)静岡:「太平洋沿岸で風力発電を一気に加速、2020年の再エネ率を12%以上に」

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