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» 2013年03月25日 11時00分 UPDATE

スマートシティ:中学校の予定地にメガソーラーの建設計画、住民の反対運動が起こる

兵庫県の自然豊かな郊外の町で、メガソーラーの建設をめぐって住民の反対運動が起こっている。もともと中学校を建設する予定だった住宅地域にある土地を、町がメガソーラーの用地として事業者に貸し付けることを決めたからだ。再生可能エネルギーに取り組む自治体の課題が見える。

[石田雅也,スマートジャパン]

 兵庫県の猪名川町(いながわちょう)は大阪の中心部から25キロメートルほどの場所にあって、郊外型のニュータウンがいくつか開発されてきた。そのうちのひとつ「つつじが丘」の住宅地に建設予定のメガソーラーが地元で問題になっている。

 猪名川町のまちづくり部が2012年8月に、つつじが丘に保有する約1万平方メートルの土地をメガソーラー用に貸し付けることを目的に、事業者の募集を開始した。その概要は町内に配布した「広報いながわ」にも掲載されている(図1)。

inagawa2.jpg 図1 「広報いながわ」(2012年10月15日発行)に掲載された建設予定の告知。出典:猪名川町秘書広報室

 募集要項によると、1MW(メガワット)の発電規模を想定して、年間120万円で20年間にわたって貸し付けるという内容だ。2か月後の10月には、副町長を委員長とする選定委員会によって、地元の建設会社「三栄建設工業」とシャープグループで太陽光発電システムを担当する「シャープアメニティシステム」の共同事業体が選ばれた。

 両社の計画では発電規模は756kWで、2013年6月に発電を開始する予定になっている。提案の中には、小中学校などに対する太陽光発電講座を年に1回実施するなどの地域貢献策も含まれている。

inagawa3.jpg 図2 メガソーラーの建設予定地(「広報いながわ」に掲載)。出典:猪名川町秘書広報室

 こうして見るとプロセスに問題はなさそうだが、住民から反対運動が起きてしまった。実はメガソーラーの建設予定地は、もともと中学校を建設するための場所だったが、社会情勢によって計画を取りやめた経緯がある。隣接して公園があり、さらに道路をはさんで小学校がある(図2)。

 特に住民が問題にしているのは、子供たちが遊ぶ場所の近くにメガソーラーがふさわしいのか、という点だ。ほかに適した用途がないかを住民と話し合って決めるべきだと主張している。

 住み慣れた家のすぐそばに、いきなり大量の太陽光パネルが設置されることは受け入れがたいのだろう。建設予定地を上空から撮影した写真を見ると、周囲に数多くの住宅が整然と並んでいる様子がわかる(図3)。住民の心情は想像にかたくない。町役場はメガソーラーの誘致を開始する前に、住民の意向を確認するのが望ましかったと言える。

inagawa1.jpg 図3 上空から見たメガソーラーの建設予定地。出典:猪名川町まちづくり部

 当初の計画では2012年度内、つまり3月中に工事を開始することになっているが、住民の反対を押し切ってまで急いでメガソーラーを建設する必要性があるのか。猪名川町のウェブサイトを見ると、「いつまでも住み続けたいまち」がキャッチフレーズになっている。いったん計画を白紙に戻してから、改めて土地の利用計画案を検討すべきではないだろうか。

 再生可能エネルギーの中で太陽光発電と小水力発電に対しては、環境影響評価などを通じて地元の意見を確認するプロセスがない。それだけ環境への負荷が小さいからだが、とはいえ景観を含めて自然環境にまったく影響を及ぼさないわけではない。

 日本では再生可能エネルギーの普及は急がれるものの、拙速は避けなくてはならない。そのことを全国の自治体の関係者は猪名川町の事例で考えてみる必要がありそうだ。

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