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» 2013年04月05日 15時00分 UPDATE

キーワード解説:電力会社と競争する「新電力」

電気料金の値上げが相次ぐなか、自治体を中心に「新電力」へ契約を切り替える動きが活発になってきた。現在のところ自治体や企業を対象に自由に電力を販売できるのは、電力会社と新電力だけである。新電力の正式名称は「特定規模電気事業者」で、現在79社が登録されている。

[石田雅也,スマートジャパン]

 今から13年前の2000年3月、電力の小売自由化が始まった時に「新電力」が登場した。第1号は三菱商事グループの「ダイヤモンドパワー」である。新電力の数が急速に増え始めたのは2010年からで、最新の2013年3月15日の時点で事業者数は79社にのぼっている。

 小売の全面自由化や発送電分離の実施スケジュールが具体的に決まり、電力市場の開放が目前に迫ってきた。その中で重要な役割を期待されるのが新電力である。すでに企業向けでは電力会社のほかに新電力が独自に料金を設定して電力を販売できるようになっている。

 ただし巨大な電力会社に対抗して、新電力が競争力を十分に発揮できる状態にはなっていない。自由化されている「特別高圧」と「高圧」の販売電力量のシェアを見ると、2010年度の時点で3.47%にとどまっている(図1)。

shindenryoku_share.jpg 図1 新電力の販売電力量シェア。出典:資源エネルギー庁

 新電力の正式な名称は「特定規模電気事業者」で、以前は「PPS(Power Producer and Supplier)」と呼ばれることが多かった。資源エネルギー庁が2012年4月から「新電力」という呼び名を使い始めたことで定着してきた。国内で電力を供給できる事業者の形態はほかにもあって、現在は全部で6種類の区分が存在する(図2)。10社ある電力会社は「一般電気事業者」に分類される。

shindenryoku.jpg 図2 電気事業者の区分

 さまざまな形態の事業者が存在する電力市場の中で、新電力は販売する電力を3通りの方法で調達する。1つ目の方法は自社で発電設備を保有して電力を作り出す。2つ目は企業や自治体などの自家発電による余剰電力を買い取る。その中には固定価格買取制度による再生可能エネルギーも含まれる。3つ目に卸電力市場を通じて購入する方法がある。

 こうした方法で調達した電力は、電力会社の送配電ネットワークを借りて利用者に供給する。「託送」と呼ばれる制度で、新電力は電力会社に対して利用料を支払う。競争相手であるべき電力会社に依存する構造になっているわけで、発送電分離が求められる大きな理由である。

 早ければ2018年度にも実施される発送電分離では、電力会社の発電・送配電・小売の各事業部門が別会社になる。ほかの発電事業者や小売事業者と対等な条件で送配電ネットワークを利用する形になり、ようやく本来の競争状態が生まれる。

 この時点で電気事業者の区分が抜本的に変わって、発電事業者、送配電事業者、小売事業者の3つに再編される予定だ。それ以降も新電力という呼び名が使われ続けるようだと、従来の電力会社が市場を支配する構造は変わっていないことを意味する。いずれ新電力という言葉は消滅することが望ましい。

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