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» 2013年07月09日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2013年版(15)山梨:富士山のふもとで太陽光を26倍に、2050年にエネルギー自給率100%へ

日射量が豊富な山梨県は2050年にエネルギー自給率を100%に引き上げるため、太陽光発電を26倍の規模に拡大する長期構想に着手した。すでに稼働中のメガソーラーは全国平均を3割も上回る発電量を記録した。2020年度までにメガソーラーを30カ所に増やす計画が着々と進んでいる。

[石田雅也,スマートジャパン]

 富士山が世界文化遺産に登録されたことで、地元の静岡県と山梨県が大いに沸き立っている。両県ともに日照時間が長く、太陽光発電に向いた地域でもある。ただし静岡県が太陽光発電の導入量で全国3位に対して、山梨県は今のところ31位にとどまっている。今後この差が徐々に縮まっていく可能性がある。

 山梨県は2013年4月に「やまなしエネルギー地産地消推進戦略」を発表して、2050年にエネルギー自給率を100%にすることを最終目標に掲げた(図1)。太陽光を中心に再生可能エネルギーだけで電力を供給できるようにする意欲的な構想だ。太陽光発電は2011年度と比べて26倍の規模に拡大させる。

yamanashi2.jpg 図1 エネルギー自給率100%に向けたロードマップ(画像をクリックすると拡大)。出典:山梨県エネルギー局

 そのためのロードマップとして2015年度と2020年度の短期・中期目標を具体的に決めた。最も重要な太陽光発電は住宅用と事業用の両方を大きく伸ばしていく(図2)。住宅用は2020年度までに4万5000戸に導入して200MW(メガワット)へ、事業用もメガソーラーを含めて100MWまで拡大させる計画である。

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yamanashi4.jpg 図2 太陽光発電の導入目標。出典:山梨県エネルギー局

 メガソーラーは2011年に3カ所しかなかったが、2020年までに30カ所に増やすことが目標だ。山梨県で最も新しく稼働したメガソーラーは、東京電力の「米倉山(こめくらやま)太陽光発電所」である(図3)。2012年4月に発電能力10MWで運転を開始した。

 注目すべきは初年度の発電量で、当初の想定を大きく上回って1440万kWhを記録した。発電設備の効率を示す設備利用率を計算すると、実に16.4%に達する。通常の太陽光発電では12%程度が標準である。それを3割以上も超えて、山梨県の日射量の多さを実証して見せた。

komekurayama1.jpg 図3 「米倉山太陽光発電所」の全景。出典:東京電力

 この米倉山と同規模の「やまなしメガソーラー(仮称)」の建設プロジェクトが県内の2カ所に分散して始まっている。三井物産が山梨県から土地を借りて、県の北西部にある甲斐市と韮崎市にそれぞれ5MWのメガソーラーを建設する計画だ(図4)。運転開始は甲斐市で2013年8月から、韮崎市では2014年1月を予定している。

 メガソーラーを通じて県や市が得る収入は巨額だ。20年間の事業期間に事業者が支払う税金などで総額10億円を見込む。1年あたり平均5000万円になる。エネルギーの自給率向上に加えて、収入面でも大きな効果を期待できるわけだ。

yamanashi_megasolar.jpg 図4 「やまなしメガソーラー」の完成イメージ。甲斐市(左)と韮崎市(右)の建設予定地。出典:山梨県エネルギー局

 ほかにもメガソーラーの建設計画が続々と始まっている。県が掲げる2015年までに22カ所、2020年度までに30カ所のメガソーラーを建設する目標は十分に達成可能な状況にある。

 これまで山梨県では小水力発電の導入量が圧倒的に多くて、太陽光発電の約6倍の規模がある(図5)。今後は太陽光発電ほど急速に増えることは期待できないものの、小水力発電も着実に拡大していく見込みだ。県の目標では2050年までに3倍以上に増やす計画になっている。

ranking2013_yamanashi.jpg 図5 山梨県の再生可能エネルギー供給量。出典:千葉大学倉阪研究室、環境エネルギー政策研究所

 最近の3年間だけでも、県内の3カ所で小水力発電が始まっている。いずれも山梨県の企業局が建設したもので、最も新しい設備は2012年4月に稼働した「深城(ふかしろ)発電所」である(図6)。

 洪水対策のために造ったダムから川の下流に向けて、常に一定量を放水している。この水流を生かして発電する仕組みだ。毎秒1立方メートルの水量で340kWの電力を作ることができる。年間の発電量は182万kWhになり、一般家庭で500世帯分の電力に相当する。

fukashiro.jpg 図6 「深城発電所」の全景と発電設備。出典:山梨県企業局

 山梨県には山と川が多く、小水力発電の対象になる施設は数多くある。深城発電所と同様にダムからの放流地点が数カ所にあるほか、かんがい用水路や浄水場などにも小水力発電に活用できる水流がある。企業局が対象地点の情報を広く提供するとともに、みずからの建設・運営の経験をもとに事業者を支援するプログラムを実施中だ。

*電子ブックレット「エネルギー列島2013年版 −関東・甲信越編 Part2−」をダウンロード

2015年版(15)山梨:「電力は水素と超電導の蓄電池に貯蔵、技術で走るクリーンエネルギー先進県」

2014年版(15)山梨:「南アルプスからの清流で小水力発電、エネルギー地産地消の先進モデル」

2012年版(15)山梨:「日本有数の山に囲まれて、小水力発電から太陽光発電へ」

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