何が何でも屋根に太陽電池を「10kW」載せたい、この1点に集中したミサワホームスマートホーム

延床面積が30坪台の家でも、太陽光発電システムの出力を10kW以上に高められる戸建住宅をミサワホームが発売した。目的は固定価格買取制度(FIT)による20年間の買い取りだ。20年を目指すには出力を10kW以上に高めるしかない。太陽電池モジュールや屋根の設計を工夫することで実現した。

» 2013年08月26日 09時00分 公開
[畑陽一郎,スマートジャパン]

 戸建住宅で太陽光発電システムを導入する際、さまざまな目的があるだろう。初期投資をはずむことで、長期間にわたって電気料金を引き下げることを狙う方が多いのではないだろうか。

 この考え方を突き詰めると、10年という固定価格買取制度(FIT)の買取期間が短く思えてくる。しかし、10年を超えようとすると「壁」がある。20年の買取期間を利用する場合、10kW以上の出力が必要だからだ(図1)。

 屋根に設置する太陽電池モジュールの量は太陽光発電普及拡大センター(J-PEC)の調査によれば、全国新築住宅の平均値で4.21kW(関連記事*1)。10kWを設置しようとすると、初期投資額がかさむことはもちろんだが、そもそも設置に適した屋根の面積を用意できない。

*1) 2013年4月1日から同6月30日までに経済産業省の住宅用太陽光発電補助金の交付申請を終えた件数から。

図1 太陽光の買取期間(調達期間)は2種類ある。出典:資源エネルギー庁

太陽電池モジュールと屋根形状を工夫

 ミサワホームはこのようなニーズに応えた戸建住宅を発売した。太陽電池モジュールを10kW以上設置し、買取期間20年を狙うという1点に集中した戸建住宅「Solar Max」シリーズである。太陽電池モジュール自体と屋根形状を工夫することで実現したのだという。「Solar Maxは延床面積30坪台の2階建て住宅で、10kW以上の出力を狙った商品だ。もちろん、施主の要望を入れて蓄電池や燃料電池(エネファーム)を取り付けることも可能である」(ミサワホーム)。

 「Solar Maxシリーズは自由設計住宅だ。ほぼ同じ設計の戸建住宅と比べると、設計プランにもよるが、300万円台の追加出費で建築できる」(同社)。同社は10kWであれば、全量買取で月平均約3万円の売電収入(名古屋市の場合)が得られ、20年間では約750万円と試算している。

 太陽光発電システムの出力を10kW以上まで高める工夫は3つある。太陽電池モジュールの変換効率を高めることと、すき間なく太陽電池モジュールを敷き詰めること、屋根面積を大きく取ることだ。

 太陽電池モジュールとして東芝が商品化した初の屋根建材型の「Fシリーズ(FAM-125A)」を利用する(図2)。単結晶Si(シリコン)太陽電池モジュールであり、910×1009mmという寸法で125Wを出力する。建築設計では基準となる基本寸法をモジュールと呼び、日本の住宅建築では尺モジュールが最も多い。この尺モジュールの寸法が910mmだ。ミサワホームの基本寸法も尺モジュールである。

 Fシリーズは、東芝の長期保証サービスにも対応している。太陽電池モジュールの出力を最長20年、構成機器を15年保証する「パワフル保証」である。

図2 屋根建材一体型の太陽電池モジュール「Fシリーズ」。変換効率は13.6%。出典:東芝

 ミサワホームによれば、太陽電池モジュールの変換効率が向上したことで、10kWの出力に必要な屋根面積を約2割削減できたという。さらに屋根設置に必要な機材を減らすことができるため、屋根にかかる負担が減り、住宅全体の建築コストを低減できるという。外観の美しさを保つこともできる。

 屋根面積を広くとる工夫は南を向いた屋根面を広くする片流れ屋根の採用だ。「単純な片流れだと、北側に隣接する敷地の日照や通風を遮らない目的で設けられた隣地斜線制限にかかる可能性がある。そこで、一部を片流れではない設計も用意した」(ミサワホーム)。

 同社が示すSolar Maxのイメージは図3の通りだ。図3の左側に示した設計では図の奥に向かって屋根がせり上がっているものの、一部が北に向かって下がっている。これが斜線制限に対応した設計の一例だ。

図3 Solar Maxシリーズの建築イメージ図。出典:ミサワホーム

 Solar Maxシリーズは構造・工法や用途に応じて3種類ある。木質パネル接着工法を採った製品は、木質系戸建住宅「GENIUS Solar Max」(図3左)と木質系賃貸住宅「Belle Lead Solar Max」。鉄骨ラーメン構造のユニット工法を採った製品は、鉄骨系戸建住宅の「HYBRID Solar Max」(図3右)だ。

 GENEUS Solar Maxの参考プランを図4に示す。図4では1階の床面積が62.93m2、2階が66.24m2(延床面積129.17m2、39.07坪)であり、建築面積は70.80m2となっている。

図3 10kW出力を可能にした設計例。出典:ミサワホーム

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