電力会社の地域独占を崩す、「広域機関」の準備が48社で始動電力自由化の3つのステップ(1)

これから電力市場を改革するためのプロセスが3段階で進んでいく。第1段階では地域を越えて電力の需給バランスを調整する機関を創設して、全国8000万の需要家の情報を一元的に管理できるようにする。2015年4月の業務開始に向けて、48社が準備組合を設立して実施案の策定を急ぐ。

» 2014年04月30日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 2014年1月30日に、電気事業者35社と発電事業者13社が「広域的運営推進機関設立準備組合」の設立総会を東京都内で開催した。電力会社10社のほか、発電・小売事業の大手各社、さらには東京ガスと大阪ガスもメンバーに加わった(図1)。日本のエネルギー産業を支える主要な会社が勢ぞろいした格好だ。

図1 「広域的運営推進機関設立準備組合」の加入事業者48社(2014年1月30日の発足時)。出典:広域的運営推進機関設立準備組合

 この準備組合は電力システム改革の第1段階を担う「広域的運営推進機関」の組織体制や業務内容を決めるために設立された。まさに今後の日本の電力市場の骨格を決定する重要な役割を担っている。発足直後から毎週1回のペースで総会や検討会を開いて、全国レベルで需要と供給を調整するためのルールづくりや、需給調整に必要なシステムの開発にも着手した。

 資源エネルギー庁が中心になって策定した実行計画によると、2015年4月には準備組合を解散して、広域的運営推進機関として正式に業務を開始する(図2)。並行してシステムの開発を進めていき、2015年度中に新システムの運用を開始する予定だ。すでに2014年4月1日にはシステム開発会社の公募を開始した。

図2 「広域的運営推進機関」の設立・業務開始スケジュール。出典:資源エネルギー庁

 新システムでは全国の需要と供給の状況を監視しながら、地域間で電力を融通するための運用計画を管理できるようにする。これまで電力会社に依存していた地域間の需給調整を全国レベルで一元的に実施できるようになるわけだ。

 加えて、もう1つの重要な役割がある。電力を利用する需要家の情報をシステムに集約して、許可を受けた小売事業者であれば閲覧できるようにする方針だ。小売事業者の営業活動を支援して、2016年に始まる改革の第2段階「小売全面自由化」を促進していく(図3)。さらには電力会社の送配電部門を分離する第3段階の「発送電分離」を実施しやすくする狙いもある。

図3 電力システム改革を実現する3段階の法改正(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 こうして見ると、早くも活動を始めた「広域的運営推進機関設立準備組合」の重要性が改めて浮き彫りになる。最大の課題は電力会社からの中立性を維持しながら、実用的な運営体制とシステム基盤を構築することにある。

 すでに準備組合では広域的運営推進機関の正式名称を「電力広域的運営推進機関」(略称:広域機関)に決めたほか、同年11月には広域機関のオフィスを東京都内にある東京電力の建物内に構えることも決定した。当初から100人を超える規模で業務にあたる予定だ(図4)。

図4 「広域的運営推進機関」の組織体制案。出典:資源エネルギー庁

 広域機関は2014年8月に創立総会の開催を予定している。その時点で確定する役員の陣容を含めて、資源エネルギー庁や電力会社の勢力が大きくならないように注視する必要がある。

第2回:「電気料金の価格競争を全国に、小売全面自由化で事業者が急増」

第3回:「電力会社を解体、発送電分離なしに改革は終わらず 」

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