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» 2014年07月15日 09時00分 UPDATE

エネルギー列島2014年版(14)神奈川:水素とバイオマスで一歩先へ、化石燃料を使わない電力源を地域に広げる

火力発電所が林立する神奈川県の臨海地域で新しいエネルギー供給体制を構築する動きが活発になってきた。中でも注目を集めるのは水素を燃料にする川崎市の発電プロジェクトで、2015年の商用化を目指して計画中だ。同じ地域内では日本最大の木質バイオマス発電所の建設も始まった。

[石田雅也,スマートジャパン]

 東京湾に面して広がる京浜工業地帯の中心部は神奈川県の川崎市にある。東京電力で最新鋭のガス火力発電所も川崎市の臨海地域で規模を拡大中だ(図1)。この地域の中で、いま日本のエネルギーの未来をリードする2つのプロジェクトが進んでいる。

toden_kawasaki2_sj.jpg 図1 「川崎火力発電所」の所在地と全景。出典:東京電力

 1つは化石燃料に代わって水素を地域のエネルギー源として利用する世界でも類のないプロジェクトである。川崎市と千代田化工建設が共同で「水素供給グリッド」と「水素発電所」を展開する計画だ。海外から輸入した大量の水素を地域内に供給して、CO2を排出しないクリーンなエネルギーを広げていく(図2)。

suiso5_sj.jpg 図2 川崎市の臨海部における水素ネットワークの展開イメージ(画像をクリックすると拡大)。出典:川崎市総合企画局、千代田化工建設

 建設予定の水素発電所は90MW(メガワット)の発電能力で、運転開始は2015年内を目標にしている。商用レベルの水素発電設備として世界初の試みである。年間に6億立方メートルを超える大量の水素を使って、電力と同時に熱も供給できるようにする。

 川崎市の臨海地域には大型のタンカーを接岸できる埠頭の周辺に、大規模な化学コンビナートが形成されている。海外のガス田などで発生する水素をタンカーで運んで受け入れる場所として必要な条件がそろう。この立地を生かして、石油やガスの代わりに水素を輸入するシステムが現実のものになりつつある。

 すでに千代田化工建設は大量の水素を貯蔵・輸送する技術を開発済みだ。隣接する横浜市内の事業所にデモプラントを建設して、2013年4月から実用化に向けた実証実験を続けている(図3)。

chiyoda_suiso2_sj.jpg 図3 「脱水素化・水素化デモプラント」の構成。出典:川崎市総合企画局、千代田化工建設

 デモプラントでは輸送のために水素を液化する「水素化」と、燃料として使うために気体に戻す「脱水素化」の両方を実施することができる。ここで実証した輸送・貯蔵システムを拡大して、水素発電所と合わせて2015年をめどに水素供給グリッドを整備していく。

 川崎市の臨海地域には、さまざまなタイプの発電所が集まっている(図4)。火力発電所のほかにも、東京電力が運営する2つのメガソーラーが2011年から運転を開始した。さらにバイオマス発電では国内最大級の「川崎バイオマス発電所」が同じ時期に稼働している。

kawasaki_map201302_sj.jpg 図4 川崎市の臨海地域で稼働する主な発電所(画像をクリックすると拡大。2013年2月時点)。出典:川崎市総合企画局、千代田化工建設

 川崎バイオマス発電所の発電能力は33MWあるが、これを大幅に上回る49MWの木質バイオマス発電所を建設する計画が始まっている。神奈川県で注目すべき2つ目のプロジェクトだ。年間の発電量は3億kWhに達して、一般家庭で8万3000世帯分の電力を供給することができる。昭和シェル石油が川崎港に面した製油所の跡地を利用して、2015年12月に運転を開始する予定である(図5)。

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biomas2_sj.jpg 図5 バイオマス発電所の設備イメージ(上)、建設予定地(下)。出典:昭和シェル石油

 木質バイオマスは主に海外から調達する方針で、東南アジアを中心にパームオイルを製造する工程で発生するヤシ殻を利用する。ヤシ殻も水素と同様に、日本がアジア諸国から輸入する新たな燃料になる。生物由来のバイオマス燃料であるため、実質的にCO2を排出しないクリーンエネルギーとみなされる。アジアの産業振興に加えて、地球温暖化対策の面でも重要な取り組みになる。

 この発電所が2013年度に固定価格買取制度の認定を受けたことで、神奈川県のバイオマス発電の導入規模は全国で4位に上昇した(図6)。県全体の発電能力では太陽光のほうが大きいが、設備利用率(発電能力に対する実際の発電量)はバイオマス発電が太陽光発電の5倍以上になり、電力の供給源としては太陽光を上回る能力を発揮する。今後も海外からの資源を利用したバイオマス発電の拡大余地は大きい。

ranking2014_kanagawa.jpg 図6 固定価格買取制度の認定設備(2013年12月末時点)

*電子ブックレット「エネルギー列島2014年版 −関東・甲信越編 Part2−」をダウンロード

2015年版(14)神奈川:「CO2フリーの水素を製造、太陽光とバイオマスで電力供給」

2013年版(14)神奈川:「太陽光発電が毎年2倍に増える、再エネ率20%へ小水力にも挑む」

2012年版(14)神奈川:「太陽光発電を全方位に、メガソーラーの誘致から屋根貸しまで」

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