自然に恵まれた長野県の高原都市に、発電設備のガイドライン法制度・規制

高原の観光地として知られる長野県の茅野市が、再生可能エネルギーによる発電設備のガイドラインを制定した。市を挙げて再生可能エネルギーの導入を推進する中で、自然環境に影響を与えかねない発電事業が増えてきたためだ。ガイドラインでは事業者に設置計画の届け出などを求める。

» 2014年09月11日 15時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]
図1 茅野市の高原風景。出典:茅野市産業経済部

 長野県の中央に位置する茅野市(ちのし)は霧ヶ峰をはじめとする高原の観光地で知られる(図1)。日射量が多い長野県内でも雨が少ないことから、空き地などを利用した太陽光発電の導入が活発に進み、さらに川や用水路を利用した小水力発電の取り組みも広がってきた。

 その一方で大規模な森林の伐採や土地の形状変更を伴う発電事業が増加する懸念も高まっている。恵まれた自然環境を保護しながら再生可能エネルギーを拡大するために、茅野市は2014年9月5日付で「茅野市再生可能エネルギー発電設備の設置等に係るガイドライン」を制定して、市民や事業者に理解と協力を求め始めた。

 対象になるのは10kW以上の太陽光発電設備のほか、小水力や風力などの再生可能エネルギーを利用した発電設備である。ただし家庭を含めて自家消費を主な目的にする発電設備は対象から除外する。

 ガイドラインでは発電設備を設置する際に配慮すべき事項を5項目にわたって明記した。土砂流出などの災害を防止する対策を講じることや、急傾斜地への設置を避けることなどを盛り込んだ。発電設備の設置計画書(図2)を市に届け出たうえで、住民説明会の議事録の提出も求める。このほかに設置の完了・中止・変更・廃止の際にも届け出を必要とする。

図2 「再生可能エネルギー発電設備の設置等に係る計画書」の記載項目。出典:茅野市産業経済部

 国や自治体のガイドラインには法的な強制力はない。とはいえ大規模な土地開発には自治体との事前協議が必要になるほか、農地の転用や河川・用水路の利用にも自治体の許可が法律で義務づけられている。このためガイドラインに反するような発電設備を設置することは現実的に難しくなる。

 再生可能エネルギーの拡大と自然環境の保全を両立させることは、自治体にとって重要な責務である。茅野市と同様のガイドラインを制定する自治体が全国各地で増えていくことは確実な情勢だ。

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