県営の水力発電所11カ所の電力、競争入札で売電収入を増やす電力供給サービス

新潟県の企業局は水力発電所の電力の売却先を2015年度分から一般競争入札で決定する。対象になる県営の水力発電所は11カ所で、従来は電力会社に供給してきた。年間の供給量は5億4000万kWhを予定していて、一般家庭で15万世帯分に相当する。

» 2014年09月22日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 越後山脈から日本海へ多くの川が流れる新潟県では、県の企業局が長年にわたって水力発電の拡大に取り組んできた。最も古い「三面(みおもて)発電所」は1952年(昭和27年)から稼働を続けている(図1)。現在は県内各地に12カ所の水力発電所を運転中で、三面発電所を含む11カ所の電力の売却先を新たに一般競争入札で決定する。

図1 「三面発電所」とダムの放流(右下の建屋が発電所)。出典:新潟県企業局

 11カ所の水力発電所の最大出力を合計すると13万2300kWになり、年間に5億4000万kWhの電力を供給できる予定だ。一般家庭の電力使用量に換算すると15万世帯分に相当する。大規模な水力発電のコストは1kWhあたり12円程度が標準的で、売電価格はこれを上回る見込みである。

 新潟県の企業局は10月中旬に入札公告を出した後、12月中旬に入札を実施して売電先を決定する。これまで電力の供給を受けてきた東北電力のほか、新電力の大手数社が応札するものとみられる。競争入札で売却する電力は2015年4月1日から2年間にわたる。新潟県は現在の売電価格を上回ることを想定していて、収入の増加を福祉事業の拡充などにあてる方針だ。

 自治体が運営する発電所の電力は、電力会社と受給契約を結んで売却するのが通例だった。売電価格は発電コストを基準に決める「総括原価方式」を採用する。新潟県でも2011年に運転を開始した「広神(ひろかみ)発電所」(最大出力1600kW)を除く11カ所の水力発電所の電力を、電力会社と受給契約を締結して供給してきた。

 新潟県が運営する水力発電所の供給電力量は2013年度の実績で6億2300万kWhに達した(図2)。電力会社と契約した供給量に対して112%の達成率だった。2015年度から供給する予定の5億4000万kWhも十分に上回ることができる見通しだ。

図2 新潟県企業局が運営する水力発電所の供給電力量と達成率。出典:新潟県企業局

 政府は電力会社を中心とする現在の市場構造を改革する施策の一環で、全国の自治体に対して電力会社に供給してきた電力を一般競争入札で決めるように推奨している。新潟県の取り組みも政府の方針に沿ったもので、電力市場の自由化促進と県の収入増加を図ることにつながる。同様の動きが他の自治体にも広がっていくことは確実である。

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