店舗や工場が利用する「低圧電力」、自由化を前に東京の単価は北陸の1.5倍2014年度の電気料金NEW(2)

2016年4月に自由化される電力には、小規模な店舗や工場が利用する「低圧電力」と呼ぶ契約メニューがある。料金体系は家庭向けと違い、基本料金・電力量料金ともに固定の単価で計算する。基本料金の単価は地域によって1.3倍の差、電力量料金の単価は1.5倍の開きがある。

» 2014年11月10日 13時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

第1回:「家庭の電気料金は地域で3割以上の差に、北海道が最高、北陸が最安」

 新たに小売の自由化の対象に加わるのは、契約電力が50kW未満の利用者である。全国で8000万件を超える契約数にのぼり、そのうちの1割弱が商店や工場などの事業者だ(図1)。家庭よりも多くの電力を必要とする店舗や工場では、契約メニューとして「低圧電力」を選択するのが標準的である。

図1 小売全面自由化の対象になる電力市場(画像をクリックすると拡大)。出典:資源エネルギー庁

 低圧電力の料金体系は自由化が済んでいる「高圧電力」の場合と変わらない。基本料金は契約電力1kWあたりの単価で決まり、電力量料金は月間使用量1kWhあたりの単価で決まる。電力量料金の単価は北海道を除いて「夏季」(7月〜9月)と「その他季」(10月〜6月)の2本立てになっている。

 2014年11月現在の地域別の料金を比較してみると、家庭向けと同様に地域間で大きな格差になっていることがわかる(図2)。基本料金の単価が最も高いのは沖縄で、最も安い九州の1.3倍になっている。ただし電力量料金の単価は沖縄のほうが1円ほど安く、こまめな節電で電気料金を抑えることは可能だ。

図2 地域別の「低圧電力」の料金(2014年11月時点)

 基本料金と電力量料金の両方とも高いのは北海道である。基本料金は沖縄に次いで2番目に高く、電力量料金は燃料費調整単価を加えた年間の平均で比較すると東京の次に高い。夏季の単価で比較しても、北海道より高いのは東京・九州・関西の3地域に限られる。北海道の事業者は年間を通じた節電対策が必要になる。

 電力量料金の単価が全国で最も安いのは、家庭向けと同様に北陸だ。単価が最高の東京では北陸の1.5倍にもなる。基本料金の単価はわずかに北陸のほうが高い程度で、電力量料金と合わせた月間の電気料金は1.5倍近い差が生じる。東京・北陸・北海道を除くと、そのほかの地域の電力量料金は最大でも1kWhあたり2円以内に収まっている。

 店舗や工場が利用する低圧電力では、基本料金のベースになる契約電力を決定する方法が2通りある。家庭と同様にブレーカの容量で決める「主開閉器契約」のほかに、使用する電気機器の容量で決める「負荷設備契約」がある(図3)。ブレーカを使う契約では電力の使用量が容量をオーバーした場合に電力の供給がストップしてしまうため、そうした状況になっても大きな影響が出ない利用環境に向いている。

図3 低圧電力の契約電力を算定する2つの方法。「主開閉器契約」(上)と「負荷設備契約」(下)。出典:東北電力

 もう一方の負荷設備契約では、個々の電気機器の容量をもとに契約電力を算定する。機器の台数が多くなるほど同時に電力を使う確率が小さくなるため、3台目と4台目は容量の95%、5台目からは容量の90%で電力を見積もって合計する方法だ。

 いずれの契約方法でも実際に利用する電力は契約値と異なることから、政府は新たに「実量契約」の導入を検討している(図4)。すでに高圧電力では実量契約があるが、月間ではなくて年間の最大電力で契約電力を決める方式になっていて、季節による需要の変動が大きい利用者には不利な契約になってしまう。

図4 契約電力の決定方法(SB:サービスブレーカ)。出典:資源エネルギー庁

 今後は家庭を含めて、30分単位の電力使用量を計測できるスマートメーターに切り替わっていく。これから始まる小売の全面自由化に合わせて、スマートメーターの計測値に基づく実量契約を適用できるようになる見通しだ。実量契約を結ぶことで電気料金は従来よりも下がる可能性が大きい。

第3回:「オフィスで使う業務用電力、東日本が高く、西日本は安い」

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